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インドネシア社会のタブーに鋭く切り込む テディ・スリアアトマジャ監督の「今」

Interview / 第29回東京国際映画祭

映画づくりの先生は、世界の名だたる巨匠

油井: 『アバウト・ア・ウーマン』はイングマール・ベルイマンへのトリビュートだと聞きました。

テディ: ベルイマン監督の大ファンなんです。彼が送り出した傑作には到底及びませんが、彼はあらゆるドラマの巨匠ですから。本作では、私にとってのベルイマン作品のように、ただ女性を描きたいと思いました。

映画のスチル画像

『アバウト・ア・ウーマン』(c)Karuna Pictures

油井: 黒澤明トリビュートは作らないのでしょうか?

テディ: 私は、黒澤作品を熱心に勉強しました。映画の学校に通ったことがないので、彼の映画を観てフレーミングや演出を勉強しました。彼は舞台演出の巨匠なので、私にとって黒澤映画が映画の学校でした。構成の巨匠ですね。彼の作品から本当に多くのことを学びましたが、だからと言って私にはとても同じことはできません。

油井: 小津安二郎はどうでしょう?あなたの作品はどこか小津に共通する部分があるように思います。

テディ: 私の映画を観た人からも、私が熱狂的な小津ファンなのではないかとよく言われます。でも、それは私が映画制作を勉強する代わりに多くの映画を観てきたからだと思います。小津、ベルイマン、ウディ・アレン、黒澤。最高の映画監督たちからいいところを盗んで、自分の作品に取り入れるんです。だから私の作品は小津の影響もあれば、ベルイマンの影響も見られることがあるんです。

海外での映画制作への思い

油井: いままでインドネシア国外で映画制作をしたことはありますか?

テディ: 国外ではないですね。CMの撮影ではありますが、映画はまだありません。いま多くのプロデューサーや監督がプラハやロサンゼルス、ロンドンなど海外で撮る傾向にあります。海外で撮られた作品のほとんどは、その国がただの舞台背景としてしか扱われていないように感じます。ロケーションが単なる背景になっているので、全てがとても表面的で、物語の核心とは結びつかない。もし自分がインドネシア国外で撮るとしたら、ポストカード用の綺麗な風景を撮るのではなく、撮影する国や場所も作品のキャラクターの一部として撮りたいのです。

写真

(左から)ライハアヌン・スリアアトマジャ(女優)、テディ・スリアアトマジャ監督

油井: 日本で映画を撮ることに興味はありますか?

テディ: はい、とてもあります。以前にあるプロデューサーから日本での映画撮影の話を受けたことはあるんです。日本では本当に撮りたいので、実現することを願っています。

油井: 今回、東京国際映画祭に招へいされた感想はいかがですか?  「CROSSCUT ASIA」の作品選定は、石坂健治プログラミング・ディレクターと共に、国際交流基金アジアセンターが行っています。私もあなたの三部作を推薦したんですよ!

テディ: おそらく三部作として上映されるのはこれが初めてなので、とても嬉しいです。ほかの映画祭でも三作が一緒に上映されたことはないので、とても特別な機会になりました。ありがとうございます。

2016年10月28日
六本木アカデミーヒルズにて

編集・写真(インタビュー):掛谷泉(国際交流基金アジアセンター)