国際交流基金アジアセンターは、日本と東南アジアの芸術文化の担い手によるオンライン対談番組「アジアセンター クロストーク ~ポスト・コロナに向けて旅する文化~」をYouTubeで無料配信します。
新型コロナウイルス感染症の影響で国境を越えた交流が制限される中、伝統芸能から現代アートまでさまざまな分野で活躍する人々がオンライン対談で交流します。
コロナが芸術文化に与えた影響は、各国一様ではありません。その状況下における取り組みにも、作り手それぞれの創意工夫が見られます。全10回の対談はいずれの回も、今後の世界に目を向け、そこから浮かび上がる未来の創作を巡る興味深いものです。芸術文化の継承や運営に関する厳しい課題から、自身の活動や社会を見つめ直すきっかけや新たに得た示唆や転機の話まで、多岐にわたります。各回の登壇者の作品や現地取材映像を交えた構成で、登壇者を初めて知る方も親しみやすく理解を深めることができます。
事業概要
主催:国際交流基金アジアセンター
配信:The Japan Foundation YouTubeチャンネル
番組本数:10本(各回約30分)
対談分野:パフォーマンス、コンテンポラリーダンス、サステナブルデザイン、工芸、現代アート、伝統芸能、祭りとコミュニティ、オーケストラ、建築
字幕:日本語、英語(一部の回では該当する東南アジア諸国の言語)
映像製作:株式会社エネット
対談内容・登壇者
パフォーマンス編 〈ラオス×日本〉
ラタナコーン・インシシェンマイ(演出家/俳優)
白神 ももこ(振付家/演出家/ダンサー)
モデレーター:千徳 美穂(文化事業コーディネーター)
日本はダンスを、ラオスはオブジェクトシアターを扱う表現者を招き、「オブジェクト(モノ)×身体」という共通点を持つなかでの、自身の立ち位置や、創作の意味について考えます。
コンテンポラリーダンス編 〈マレーシア×日本〉
マリオン・ドゥ・クルーズ(ダンサー/振付家/プロデューサー/教育家)
森山 開次(舞踊家/振付家/演出家)
モデレーター:乗越 たかお(小説家/舞踊評論家)
マレーシアと日本のコンテンポラリーダンサーが登壇し、双方が感じている国内外のダンスをとりまく事情やその違い、そしてダンスの未来について、話し合います。
サステナブルデザイン編 〈インドネシア×日本〉
アンニサ・ウィビ(MYCL 共同創業者兼最高執行責任者)
水野 大二郎(デザイン研究者)
モデレーター:山崎 亮(コミュニティデザイナー)
大量生産・大量消費が問題となっている今日、ファッションをとりまく再利用可能な繊維素材の開発や研究に取り組んでいる専門家を招き、サステナブル(持続可能)なデザインの新しい在り方とはなにかを探ります。
工芸編〈タイ×日本〉
チュッタヤーウェート・シントゥパン(クリエイティブ・エコノミー・エージェンシー コンケン ディレクター)
古屋 真弓(日本民藝館 学芸員)
モデレーター:後小路 雅弘(美術史家/北九州市立美術館 館長)
日本は日本民藝館、タイはデザイン工芸を扱うTCDC(タイランド・クリエイティブ・アンド・デザイン・センター)から、組織のなかで各国の工芸・民藝を普及し研究する立場の専門家を招き、工芸をとりまくその国の歴史と、現代の課題、工芸の在り方を探っていきます。
現代アート編〈シンガポール×フィリピン×日本〉
ホー・ルイアン(アーティスト/ライター)
アイサ・ホクソン(アーティスト/振付家/ダンサー)
加藤 翼(アーティスト)
モデレーター:橋本 梓(国立国際美術館 主任研究員)
レクチャーやダンスなど自らの身体や、コミュニティという共同体を表現として扱うアーティストを招き、それぞれの表現を通して考えられる身体性の特徴や映像表現の違い、また国・地域を意識した創作について語り合います。
伝統芸能編1〈ベトナム×マレーシア×日本〉
チャン・クイ・クオック(タンロン水上人形劇場人形遣い)
カムルル・フシン (ワヤン・クリ人形遣い/音楽家)
吉田 簑紫郎(文楽人形遣い)
モデレーター:田畑 則子(株式会社Adventure Japan代表取締役)
ベトナムの水上人形劇、マレーシアのワヤン・クリ、日本の文楽の三国三者による鼎談。伝統芸能を生業に選び、歴史ある文化を次代に受け継いでいくことの意味について、各自の芸能を紹介しながら語り合います。
伝統芸能編2〈カンボジア×日本〉
チアン・ソパーン(スバエク・トム ティー・チアン一座 座長)
東二口文弥人形浄瑠璃保存会 土井下 悟史(人形遣い/東二口文弥人形浄瑠璃保存会 事務局長)、山口 久仁(若手人形遣い)
モデレーター:塚田 千恵美(公益財団法人現代人形劇センター理事長/人形劇プロデューサー)
カンボジアはアンコール文明の地で、日本は霊峰白山を頂く山間の集落で、それぞれ個性豊かな芸能を継承する担い手による対談。足のさばきに見られる意外な共通点から伝統継承の難しさまで、率直に語り合います。
祭りとコミュニティ編〈カンボジア×日本〉
リッティー・ロムオーピッチ(映画監督/フェスティバル・プロデューサー)
根木 龍一(microAction代表/橋の下世界音楽祭 主宰/有限会社ストーンズ取締役)
モデレーター:大石 始(ライター/選曲家)
コロナ禍で苦境に立たされている祭りやフェスティバル。人が集まることによって成り立つ「祭り」の本質を、コミュニティやカルチュラルアイデンティティにも触れながら考えていきます。
オーケストラ編〈タイ×ベトナム×日本〉
ワンチャイ・ヤンウボン(王立バンコク交響楽団ゼネラル・マネージャー)
グエン・マイン・ズイ・リン(作曲家/ホーチミン市バレエ交響楽団&オペラ舞台芸術部長)
磯部 周平(クラリネット奏者/東邦音楽大学特任教授)
モデレーター:柿塚 拓真(公益財団法人神戸市民文化振興財団 事業部演奏課 演奏担当課長)
西洋から輸入したオーケストラ文化は、アジアにどのように根付き、発展していくのか。アジアならではの新たな文化創造の可能性を含め、タイ、ベトナム、日本それぞれの在り方と未来を語り合います。
建築編〈インドネシア×ベトナム/日本〉
アンドラ・マティン(建築家)
西澤 俊理(建築家)
モデレーター:五十嵐 太郎(建築史家/建築批評家)
インドネシアで活躍する建築家とベトナムで活動する日本人建築家。アジア各地の風土や文化を活かした現代建築のあり方をどのように思考し、デザインしていくのか、建築の未来を見据えながら意見を交わしていきます。
登壇者プロフィール(順不同)
パフォーマンス編
ラタナコーン・インシシェンマイ(演出家/俳優)
1981年ラオス生まれ。高校卒業後、ラオス国立サーカス団で道化師の訓練を受ける。2001年に渡仏してオブジェクトシアターを学び、ラオスに新しく誕生したオブジェクトシアター劇団カボーン・ラオに加わる。カボーン・ラオのメンバーとしてフランス、ポルトガル、スウェーデン、タイ、カンボジア、ミャンマー、日本などで公演。フランスや日本のアーティストとコラボレーションを行うほか、舞台芸術分野のワークショップやトレーニングに参加。これらの経験をもとに2008年に初の民間劇団カオニャオを立ち上げ、オブジェクトシアター、影絵人形劇及び舞台劇の作品を国内外で制作し上演している。
白神 ももこ(振付家/演出家/ダンサー)
ダンス・パフォーマンス的グループ「モモンガ・コンプレックス」主宰、全作品の構成・振付・演出を担当。2017~2018年度セゾン文化財団ジュニア・フェロー。2018年富士見市民文化会館キラリふじみにて行われた日本・タイ共同制作 『หลังเขา ランカオ-私たちの森 』では構成・演出・出演を担当した。2019年より同館キラリふじみの芸術監督を務める。2020年フェスティバル/トーキョー20にてコロナ禍での作品としてミュージカル的ダンス・パフォーマンス『わたしたちは、そろっている。』を上演。四国学院大学、桜美林大学非常勤講師。
千徳 美穂(文化事業コーディネーター)
早稲田大学第一文学部演劇専修在学中、南タイの舞踊ノーラーチャートリーの調査目的で10か月間、タマサート大学教養学部に留学。2000~2001年、国際交流基金次世代リーダーフェローシップ・プログラム・フェローとしてタイ文化センターに在籍しタイ現代演劇の現状を調査。『赤鬼』タイバージョン(作・演出/野田秀樹)をはじめ日タイの文化交流事業にコーディネーターとして携わる。プラディット・プラサートーン作『Destination』、ニコン・セタン作『神の絶望』『Placeless』などタイ語戯曲を翻訳。
コンテンポラリーダンス編
マリオン・ドゥ・クルーズ(ダンサー/振付家/プロデューサー/教育家)
ファイヴ・アーツ・センターの創設メンバー。1979年、マレーシア科学大学ダンス専攻科修士課程修了。伝統舞踏、モダンダンス、現代舞踊をマレーシア、シンガポール、インドネシア、ロンドン、ニューヨークで学ぶ。1983年にマリオン・ドゥ・クルーズ・アンド・ダンサーズを立ち上げ国内外で公演。マレーシアの現代舞踊の開拓者の一人として、現代舞踊におけるマレーシア人アイデンティティの模索、社会政治批評、パフォーマーでない人々とのコラボレーション、芸術空間の民主化など、様々なフェーズを経て創作活動を展開。海欧(Hai-O)文化芸術奨励金「特別功労賞」2019など受賞歴多数。
森山 開次(舞踊家/振付家/演出家)
21歳よりダンスを始める。2005年ソロダンス『KATANA』でニューヨークタイムズ紙に「驚異のダンサー」と評される。2007年ヴェネチア・ビエンナーレ招へい。2013年『曼荼羅の宇宙』にて芸術選奨新人賞ほか三賞受賞。同年文化庁文化交流使。2019年『ドン・ジョヴァンニ』でオペラ初演出、2020年新国立劇場バレエ団『竜宮』演出・振付・美術・衣裳を担当。2021年TOKYO2020パラリンピック開会式演出・チーフ振付、同年カイヤ・サーリアホ作曲の国際共同制作オペラ『Only the Sound Remains-余韻-』にソロダンサーとして参加など、ダンサー、演出家の両面での今後の活動が注目される。
乗越 たかお(小説家/舞踊評論家)
1963年東京都生まれ。作家・ヤサぐれ舞踊評論家。株式会社ジャパン・ダンス・プラグ代表。2006年にNYジャパン・ソサエティの招へいで滞米研究。2007年イタリア『ジャポネ・ダンツァ』の日本側ディレクター。国内外の財団やダンスフェスで審査員やアドバイザーを務める。エルスール財団新人賞選考委員。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』(作品社)、『どうせダンスなんか観ないんだろ!? 激録コンテンポラリー・ダンス』(NTT出版)、『ダンス・バイブル』(河出書房新社)、『アリス 川畑文子物語』(講談社)ほか著書多数。『ぶらあぼ』『アクトガイド』『バレエ・チャンネル』などで連載。
サステナブルデザイン編
アンニサ・ウィビ(MYCL 共同創業者兼最高執行責任者)
革新的な素材開発を行うスタートアップ企業MYCLにて事業運営を指揮する。MYCLは菌糸体(キノコ類)を使ったサステナブルな素材を提供するバイオ・テクノロジーの新興企業。アンニサとMYCLチームは、さまざまな用途のため、動物の皮革や合成皮革の代替となる環境に優しい皮素材Myleaを開発。さらにMylea製造過程の廃棄物を使い、建物の構造体や内装用の、モダンな外観と機能性を備えた圧縮強度のあるバイオな建築材料Bioboも開発している。アンニサは最高執行責任者として、事業のビジネス価値とコミュニティや環境に与える影響のバランス調整を行う。Mycotech以前は、キノコ農家として食用キノコの栽培キットGrowboxを共同開発した経歴を持つ。
水野 大二郎(デザイン研究者)
1979年東京都生まれ。京都工芸繊維大学特任教授、慶應義塾大学大学院特別招へい教授。高校卒業後渡英、2003年ロイヤルカレッジオブアート修士課程、2008年博士課程後期を修了。ファッションデザイン博士。帰国後は日本にてファッションデザインを中心に多岐にわたるデザインプロジェクトや教育・研究に従事、著書多数。京都大学デザインスクール特任講師、慶應義塾大学環境情報学部准教授を経て現職。近年ではIASDR2021(国際デザイン学会連合大会)などの学術論文も発表する傍ら、『サーキュラーデザイン』(共著・津田和俊、学芸出版社)出版や経済産業省「これからのファッションを考える研究会~ファッション未来研究会~」座長も務めた。
山崎 亮(コミュニティデザイナー)
1973年愛知県生まれ。studio-L代表。関西学院大学建築学部教授。社会福祉士。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトが多い。著書に『コミュニティデザインの源流』(太田出版)、『縮充する日本』(PHP新書)、『地域ごはん日記』(パイインターナショナル)、『ケアするまちのデザイン』(医学書院)などがある。
工芸編
チュッタヤーウェート・シントゥパン(クリエイティブ・エコノミー・エージェンシー コンケン ディレクター)
建築家・教育者。建築家として、サイト・スペシフィック:建築&研究、災害のためのデザイン、ファブカフェ バンコク、N.A.T.U.R.E.などの社会活動団体を設立。イエール大学、コロンビア大学を初め多くの大学で講義を行う。近年クリエイティブ・エコノミー・エージェンシーのタイ東北部を担当するディレクターに就任。デザイン的な思考を応用してイサーン・クリエイティブ・フェスティバル、マットミー・シルク・ハック、Lunch & Learnなど、数々のプロジェクトを展開。デザインと想像力で公立学校の給食を改善させるLunch & Learnは、国内に広がり、何百万人もの子供達の暮らしを向上させている。
古屋 真弓(日本民藝館 学芸員)
1974年生まれ。国際基督教大学卒業。2015年より日本民藝館の学芸員として、主に広報・教育普及・国際関係業務を担っている。担当した展覧会に「藍染の絞り 片野元彦の仕事」(2019年4月~6月)、「アイヌの美しき手仕事」(2020年9月~11月)、毎年開催される公募展「日本民藝館展」、「Silent Beauty」(フィンランド国立アテネウム美術館、2019年6月~10月)など。民藝を軸として、ものが生まれる土台となる社会や人の暮らしのあり方、異文化の受容に関心を持つ。
後小路 雅弘(美術史家/北九州市立美術館 館長)
1954年北九州市生まれ。福岡市美術館学芸員として、「アジア美術展」を始め、「東南アジア─近代美術の誕生」展(1997年)など、アジアの近現代美術の紹介に取り組んだ。学芸課長として福岡アジア美術館の設立に尽力し「第1回福岡アジア美術トリエンナーレ」を手掛けた。2002年より九州大学に移り、アジア近現代美術史の教育研究に注力、「ベトナム近代絵画」展(2005年)などの企画に関わった。2021年より北九州市立美術館館長を務めるかたわら、私設のアジア美術研究所「とかげ文庫」を営む。
現代アート編
ホー・ルイアン(アーティスト/ライター)
美術、映画、パフォーマンス、文化理論の交差点で作品制作を行うアーティスト。グローバリゼーションや国家等による統治の文脈において視覚的な象徴[イメージ]の出現、伝播、消滅を調査し、それらを思考・構成し、レクチャー・パフォーマンスやインスタレーションとして表現。バンコク・アート・ビエンナーレ、アジア・アート・ビエンナーレ、光州ビエンナーレ、ジャカルタ・ビエンナーレ、シャルジャ・ビエンナーレ、コチムジリス・ビエンナーレなど数多くの国際展に招へいされる。2019年、ドイツのオーバーハウゼン国際短編映画祭で国際映画評論家賞(FIPRESCI)を受賞。
アイサ・ホクソン(アーティスト/振付家/ダンサー)
フィリピン出身、ビジュアルアートとバレエの経歴を持つ振付家・ダンサー。サービス業とエンターテイメント界における身体のポリティクスをフィリピン独自の社会的・経済的視点から描く。世界の主要フェスティバルから委託され、ツアーを行う。ハッピーランド(2017-)シリーズでは、パート1『Princess』でフィリピンのパフォーマンス・アーティスト、ラス・リグタスとデュエットを組み、パート2『Your Highness』でフィリピンのバレエダンサー5人とコラボレーションした。パンデミック禍で制作され2021年初公開されたパート3『Manila Zoo』は、5人のパフォーマーがオンラインで出演した。ヒューゴ・ボス・アジア・アート賞2019受賞、ソウル・メディアシティ・ビエンナーレにて作品『TFSB2020』がSeMA-HANAメディアアートアワード受賞。
加藤 翼(アーティスト)
1984年埼玉県生まれ、東京都を拠点に活動。パフォーマンス、構造体、ビデオを駆使するマルチメディア・プロジェクトは共同実践をその特徴の1つとし、代表的な作品シリーズ『Pull and Raise(公共空間で大きな構造体をロープを使って動かす)』は参加者の自発性を受け入れることで実践される。2011年に福島で実践した『11.3 PROJECT』以降の作品は社会の分断線に触れることでより風刺性を増し、私たちが直面する距離について見る者に再考させる。近年の展覧会に「縄張りと島」(東京オペラシティアートギャラリー、2021年)、「They Do Not Understand Each Other」(大館當代美術館、香港、2020年)など。
橋本 梓(国立国際美術館 主任研究員)
1978年滋賀県生まれ。2008年より同館に勤務。グローバルな美術史とローカルなアートの摩擦がもたらす創造性に関心を持ち、さまざまなキュレーションの実践を行う。主な展覧会に「風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから」(2011年)、「他人の時間」(2015年)、「THE PLAY since 1967」(2016年)、「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」(2018年)。「Viva Video! 久保田成子展」(2021年)で倫雅美術奨励賞を受賞。
伝統芸能編1
チャン・クイ・クオック(タンロン水上人形劇場人形遣い)
1978年、ベトナムのフンイエン省ミーハオ生まれ。ハノイ映画演劇大学でベトナムの伝統的な人形芝居を学び、1999年に卒業。ベトナム国立人形劇場で人形遣いとしてキャリアを開始し、1999年から2021年まで勤務。現在はハノイのタンロン水上人形劇場に所属。2003年にベトナム・プロ人形劇フェスティバルにて金メダルを受賞したほか、国際人形劇フェスティバルにて1位、3位、4位入賞歴あり。2015年、ベトナム文化スポーツ観光省より「優秀な芸術家」の称号を授与される。
カムルル・フシン(ワヤン・クリ人形遣い/音楽家)
1978年マレーシア北東部クランタン州パシル・マスに生まれる。伝統音楽、現代音楽、演劇、舞踊等、様々な芸能をアディグルと呼ばれる師匠の元で学ぶ。セランゴール州シャー・アラムのマラ工科大学より特別創造的研究員と認定され、音楽学部講師及びマレー伝統文化研究のディレクターを務める。カンポン・バンゴル・ゲラン・マスやクランタン、スランゴール、クアラルンプールを拠点に活動する伝統芸能グループ「ゲン・ワッロン」の創設者兼芸術監督。また、演奏家、即興音楽家、作曲家、編曲家、協力者、研究者、トク・ダラン・ムダ(語り部)、クランタン・マレー太鼓の第一人者として活動は多岐にわたる。
吉田 簑紫郎(文楽人形遣い)
1975年京都府生まれ。1988年三代吉田簑助に入門し、1991年吉田簑紫郎と名のり、国立文楽劇場で初舞台。国立文楽劇場や国立劇場での定期公演のほか、海外公演などにも積極的に参加。2009年第37回(平成20年度)文楽協会賞、2010年第38回(平成21年度)文楽協会賞、2012年第31回(平成23年)国立劇場文楽賞奨励賞、2017年(平成28年度)咲くやこの花賞、同年第36回(平成28年度)国立劇場文楽賞文楽奨励賞、2020年令和元年度大阪文化祭賞<第一部門>受賞。
田畑 則子(株式会社Adventure JAPAN代表取締役)
1971年埼玉県生まれ。多言語で日本の文化や地域を紹介するフリーペーパー『AJ〜Adventure JAPAN〜』(2008.12月創刊)編集長、発行人。創刊4号で文楽特集をしたことがきっかけで、2013年文楽マレーシア公演をコーディネートする。2014年より吉田簑紫郎氏とともに通称「バックパッカー文楽」、アジアワークショプ公演を企画。タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピン、インド、ミャンマー、シンガポール、台湾など14都市を巡回する。2020年コロナ禍で渡航ができなくなるまで、毎年「アジアバックパッカー文楽」を企画・同行。
伝統芸能編2
チアン・ソパーン(スバエク・トム ティー・チアン一座 座長)
1978年、カンボジアのシェムリアップ州シェムリアップ市スヴァイ・ドンクム町サラ・コンサエン村生まれ。祖父のティー・チアン師匠から一座を引き継ぎ、ティー・チアン一座を率いて農村、寺院、学校、祭りなどでスバエク・トムを上演し、特に若い世代に向けてクメール伝統芸能の影絵芝居に触れる機会を提供している。2011年にユネスコ世界遺産および無形文化遺産の周年記念事業に参加し、カンボジア文化芸術大臣より賞状を授与。2019年には国家芸術祭のコンペティションへの参加に対し感謝状を授与された。2007、2009、2010、2012、2013、2015および2017年に日本に招へいされ公演やワークショップを行っている。
※スバエク・トム:ユネスコ無形文化遺産
東二口文弥(ひがしふたくちぶんや)人形浄瑠璃保存会
土井下 悟史(人形遣い/東二口文弥人形浄瑠璃保存会 事務局長)
山口 久仁(若手人形遣い)
東二口文弥人形浄瑠璃は、白山市の東二口地区に伝わる人形浄瑠璃。今から350年ほど前、集落の若者が京都や大阪に出向き、当時流行していた人形浄瑠璃を習い覚えて村に持ち帰ったのが起源と伝わっている。以来、農閑期の娯楽として、また旧正月を祝う催し物として、村人に深く愛され今日まで伝わってきた。東二口に伝わる「文弥節」は17世紀後半に大阪の浄瑠璃太夫「岡本文弥」が始め一時期流行した浄瑠璃である。現在、文弥節による古風な人形浄瑠璃は白山市のほかは新潟県の佐渡、宮崎県、鹿児島県の4か所のみ。東二口文弥人形浄瑠璃は戸数僅か8戸・人口12名足らずの東二口集落を拠点とし、毎年2月に4日間上演されている。東二口文弥人形浄瑠璃保存会会長は道下甚一氏、会員数は12名あまり。
※東二口文弥人形浄瑠璃:国指定重要無形民俗文化財
塚田 千恵美(公益財団法人現代人形劇センター理事長/人形劇プロデューサー)
1988年現代人形劇センターに入所。入所後早くからアジアに関連する事業に携わる。同時に日本各地の伝統人形芝居の継承支援、公演制作などを行う。1993年から招へい公演「シリーズアジアの人形芝居」を開催。2007年から断続的に複数国の劇団間の「アジアの人形劇交流ワークショップ」を実施。現代人形劇では2019年からろう者と協同するラオスと日本の人形劇団の共同ワークショップを積み重ねる。こだわりはアジアと日本、伝統と現代を繋ぎつつ、その地下水脈を探ること。東二口文弥人形浄瑠璃も2012年「シリーズアジアの人形芝居」に参画し東京で公演を行った。
祭りとコミュニティ編
リッティー・ロムオーピッチ(映画監督/フェスティバル・プロデューサー)
リッティー・ロムオーピッチ(通称ユキ)は、映画監督、フェスティバル・プロデューサー、元BBCメディア・アクションのプロデューサー兼ディレクター。アート、音楽、映画を通して物語を伝えることに情熱を注ぐ若いクリエイティヴ集団「プレンコブ(聖なる火)」の共同創設者兼CEO。現代のカンボジア文化を時代やジャンルを超えて発信するフェスティバル「ボンプン(村祭り)」の共同創設者兼プロデューサーも務め、フェスティバル/トーキョー18で『ボンプン・イン・トーキョー』を企画。2019年に映画監督デビュー作『Young Love』が公開され、第74回ロカルノ国際映画祭に招待されたほか、カンボジア映画祭にて脚本賞と審査員特別賞を受賞。人が集い語り合うことで生まれるパワーを信じて活動を展開している。
根木 龍一(microAction代表/橋の下世界音楽祭 主宰/有限会社ストーンズ取締役)
愛知県豊田市を拠点に活動するバンドTURTLE ISLANDのマネージメントとして、海外公演も実現。音楽レーベルの運営を担い、影絵師・音楽家の川村亘平斎によるユニット「滞空時間」などのCDリリースも行う。近年はTINARIWEN / TAMIKREST / Konono No.1などアフリカのアーティストや、HANGGAI / MARJINALをはじめアジアのアーティストらの来日公演のプロモートを手掛ける。そのほか、Amamiaynu『奄美とアイヌの歌合戦』の公演を制作、大城美佐子の映像作品をディレクション、折坂悠太・台湾公演をブッキングするなど、国内外で活動。
大石 始(ライター/選曲家)
旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」主宰。約1年間の長期世界旅行を経て、2008年からフリーのライターとして活動。地域と風土をテーマに日本やアジア各地で取材を続けているほか、音楽関係の執筆も多数。これまでの主な著書・編著書に『盆踊りの戦後史』(筑摩書房)、『奥東京人に会いに行く』(晶文社)、『ニッポンのマツリズム』(アルテスパプリッシング)、『ニッポン大音頭時代』(河出書房新社)、『大韓ロック探訪記』(DU BOOKS)、『GLOCAL BEATS』(音楽出版社)など。現在の連載は月刊「東京人」(都市出版株式会社)の「まちの記憶、音の風景」。
オーケストラ編
ワンチャイ・ヤンウボン(王立バンコク交響楽団 ゼネラル・マネージャー)
1961年タイのアユタヤ州生まれ。フアチアオ・チャルームプラキアット大学よりMBA取得。1989年よりバンコク交響楽団のマネージャーとして団員給与、アーティスト謝金、アーティスト宿舎、会計及び財務関係を取り仕切る。2004年にゼネラル・マネージャー就任。2015年より理事会メンバーとしてオーケストラの財政管理、スポンサー向け営業渉外、公演スケジュール管理、演奏家・指揮者・ソリスト・教育係・会場・業者などとの契約、メディア対応、アウトリーチ活動、他団体との連携事業などを監督。2014年に国際交流基金ASEANオーケストラ支援事業の招へいプログラムに参加。
グエン・マイン・ズイ・リン(作曲家/ホーチミン市バレエ交響楽団&オペラ舞台芸術部長)
1980年ホーチミン市生まれ。1988年よりホーチミン音楽院でピアノを学び、ロシアのマグニトゴルスク国立音楽院にて博士号取得。代表作は、ヴァイオリン・ピアノ・打楽器・弦楽オーケストラのための合奏協奏曲第1番、ヴァイオリンとオーケストラのための協奏曲交響組曲『追憶』、交響曲第1番『春の伝説』など。現在は作曲家・編曲家としての活動のほか、ホーチミン市バレエ交響楽団&オペラの舞台芸術部長を務め、また、クラシック音楽、伝統と現代舞踊、及びオペラを上演する国際芸術祭オータム・メロディーズのメンバーでもある。アジア オーケストラ ウィーク2021にて『穏やかな風』が秋山和慶氏の指揮と大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏により東京オペラシティで上演された。ベトナムの映画賞ゴールデン・カイト2013にて、映画『ザ・レース』の評価とともに最優秀作曲家賞を受賞。
磯部 周平(クラリネット奏者/東邦音楽大学特任教授)
東京藝術大学大学院修了。東京交響楽団首席奏者を経て1983年NHK交響楽団入団。1988年~89年ベルリン留学し、ベルリンフィル首席奏者アロイス・ブランドフォーファー氏の元で研鑽を積む。首席奏者としてのオーケストラ活動に加えソリストとしても、2003年N響定期公演でのニールセンの協奏曲(指揮H.ブロムシュテット)をはじめ、東京交響楽団、東京フィルハーモニー管弦楽団、ポーランド・ポモルスカ交響楽団ほか多くのオーケストラと共演。2008年有馬賞受賞。2018年〜19年国際交流基金及び日本オーケストラ連盟からベトナム、ホーチミン市交響楽団に派遣される。現在は国内各オーケストラで客演首席奏者を務める。日本クラリネット協会理事。
柿塚 拓真(公益財団法人神戸市民文化振興財団 事業部演奏課 演奏担当課長)
福岡第一高等学校音楽科、相愛大学音楽学部卒業。社会保険庁福岡社会保険事務局を経て2008年に大阪センチュリー交響楽団事務局に入局。2021年4月より現職。2013年1月にブリティッシュ・カウンシルが主催するオーケストラ・ホール関係者向け英国派遣プログラムに参加。2019年7月~9月には国際交流基金アジア・フェローとして国立ミャンマー交響楽団、王立バンコク交響楽団に滞在。
建築編
アンドラ・マティン(建築家)
インドネシアにおける建築の発展に大きく寄与してきた「Arsitek Muda Indonesia」(インドネシア青年建築家/AMI)の創設者の一人。代表を務めるスタジオandramatinは、ジャカルタを拠点に1989年に設立され、クリーンで現代的なデザインや環境と共鳴する空間設計で知られる。著書に『Hey!』(2008)、ギャラリー・ナショナル・インドネシアでの個展に合わせてスタジオが手がけた公共建築を紹介する『Re: Architecture andramatin』(2020)など。1999、2002、2006、2011年度インドネシア建築家協会(IAI)賞を始め受賞歴多数。2018年に第16回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展の特別賞受賞、2019アガ・カーン賞にノミネートされた。
西澤 俊理(建築家)
1980年東京生まれ。2005年東京大学大学院修了、2005年から2009年まで安藤忠雄建築研究所(大阪)勤務。Vo Trong Nghia architects パートナー(ホーチミン、2009-2011年)、Sanuki+Nishizawa architects パートナー(ホーチミン、2011-2015年)を経て、2015年にNishizawa Architectsを設立。主な作品に、ビンタン・ハウス(ヴォ・チョン・ギア・アーキテクツと共同、ホーチミン、2013)、トン邸(ホーチミン、2014)、カツデン・ファクトリー(ビンズオン、2016)、チャウドックの家(チャウドック、2017)、日陰のためのレストラン(ホーチミン、2018)、胡椒畑の農作業小屋(ロンカイン、2021)などがある。また、2017年にシンガポール国立大学、2018年にアアルト大学、フィンランド建築博物館で講演するなど、活動は多岐にわたる。2021年~22年名古屋造形大学非常勤講師。
五十嵐 太郎(建築史家/建築批評家)
1967年生まれ。1992年東京大学大学院修士課程修了。博士(工学)。あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。「インポッシブル・アーキテクチャー」「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」「装飾をひもとく〜日本橋の建築・再発見〜」などの展覧会を監修。2013年第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞、2018年日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞。『世界の名建築歴史図鑑』(エクスナレッジ)、『建築の東京』(みすず書房)ほか著書多数。東北大学大学院教授。