本セミナーは、60年代から80年代にかけてアジア各地で展開された実験的な芸術動向を、領域横断的かつトランス・ナショナルな観点から時代背景と共に考察する試みです。各国の美術史研究者との間で議論のための共通の土俵を作り出すことを目的に、研究者にのみ開かれたセミ・クローズドのセミナーの形式で開催します。東南アジアをはじめアジア各国からお招きする研究者が、それぞれの国の事例を具体的に報告するところから第一歩を踏み出したいと考えています。
60年代から80年代のアジア各地で生まれた先鋭的な文化実践には、たとえ直接の影響関係がなくとも類似した現象が見られることが興味深い点であり、こうした並行現象を生みだした社会的、政治的、文化的背景を丹念に掘り起こすことから、一国史では掬いあげられないトランス・ナショナルな歴史の可能性が開かれてくるものと確信しています。ただし、還元主義の陥穽に陥ることなく、複雑な歴史が織り込まれた展望を提示するためには、展覧会の方法論や歴史叙述の方法論における様々な工夫が必要になってくるでしょう。
本セミナーが、現在世界的な関心を集めているアジアの戦後美術、とりわけ実験的な芸術に対して、アジアの美術館と研究者が協働して新たな歴史を紡ぎ出し、世界に向けて発信していくための契機になることを期待しています。
主要テーマ
1)冷戦期の文化交渉(東西両陣営の美学的対立、中国の文化大革命のインパクトなど)
2)ポストコロニアル状況下の文化政治(「ナショナル・アイデンティティ」、「アジア」という地域概念をめぐる思惑など)
3)暴力の表象(ヴェトナム戦争へのリアクション、反日・反米の表現など)
4)方法としてのコンセプチュアリズム(モダニズム批判、制度批判、ハプニングの戦術など)
5)アクティヴィズムの射程(民主化運動との連携、集団主義など)
6)トランスナショナルな回路(「第三世界論」、ビエンナーレ等の国際展など)
プログラム詳細
日時・会場 | 2014年9月30日(火曜日)18時から19時 国際交流基金9階 第1セミナー室 2014年10月1日(水曜日)10時から18時30分 国際交流基金2階 JFICホールさくら 2014年10月2日(木曜日)10時から13時 国際交流基金2階 JFICホールさくら |
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主催 | 国際交流基金アジアセンター |
言語 | 日英同時通訳 |
※このセミナーは招待制です。
パネリスト
Korea/韓国
Park Hyesung (Curator, National Museum of Modern and Contemporary Art, Korea)
パク・へソン(韓国国立近現代美術館、キュレーター)
Singapore/シンガポール
Seng Yu Jin (Senior Curator, The National Art Gallery, Singapore)
セン・ユージン(シンガポール国立美術館、シニア・キュレーター)
Adele Tan (Curator, The National Art Gallery, Singapore)
アデル・タン(シンガポール国立美術館、キュレーター)
Malaysia/マレーシア
Simon Soon (Sydney University, Ph.D. candidate)
サイモン・スーン(シドニー大学博士課程)
Japan/日本
Suzuki Katsuo ( Curator, The National Museum of Modern Art, Tokyo)
鈴木勝雄(東京都国立近代美術館主任研究員)
Hayashi Michio (Professor of Art History/Visual Culture, Sophia University)
林道郎(上智大学国際教養学部教授、美術史)
The Philippines/フィリピン
Patrick D. Flores (Professor, Art Studies Department, University of the Philippines)
パトリック・D・フローレス(フィリピン大学ディリマン校美術学部教授)
Taiwan/台湾
Lai Ying-Ying (Director, Graduate School of Arts Management and Cultural policy; Professor, Graduate School of Arts Management and Cultural Policy, National Taiwan University of Arts)
賴瑛瑛(台湾芸術大学教授)
China/中国
Pi Li (Senior Curator, M+, Museum for Visual Culture)
皮力(ピー・リー)(香港M+、シグ・コレクション・シニア・キュレーター)
Vietnam/ベトナム
Nguyen Trinh Thi(Video Artist, Director, Hanoir DocLab)
グエン・チン・ティ(ビデオアーティスト、ハノイDocLab所長)
Thailand/タイ
Prapon Kumjim (Head of The Art Center at Center of Academic Resources, Chulalongkorn University, Bangkok, Thailand)
プラポン・カムジン(チュラーロンコーン大学アートセンター長、バンコク)
Indonesia/インドネシア
Andreas Sudjud Dartanto (Lecturer, Indonesia Institute of the Arts [ISI])
アンドレアス・スジュド・ダルタント(インドネシア芸術大学講師)
報告書
『国際セミナー2014「Cultural Rebellion in Asia 1960-1989」報告書』
国際交流基金アジアセンターでは、アジアの美術に関するセミナーやシンポジウムの内容を広く発信していく試みの一環として、「The Japan Foundation Asia Center: Art Studies」を継続して発行していきます。第1号である本誌は、2014年9月30日から10月2日に実施した国際セミナー2014「Cultural Rebellion in Asia 1960-1989」の発表論文と議論の記録をまとめました。このセミナーは、国際交流基金アジアセンターが韓国国立現代美術館、シンガポール国立美術館 と東京国立近代美術館と共にアジアの60年代から80年代の芸術動向をテーマに、数年後に開催予定の展覧会の準備の第一歩として実施したものです。
お問い合わせ:
担当:古市、佐野
TEL:03-5369-6025 FAX:03-5369-6036