映画で読み解くサンシャワー展
国際交流基金アジアセンターが今年から開始した「ワーキングタイトル」は、日本と東南アジアの若手実力派映画プログラマーがスキル向上とともにネットワーク拡大を目指すワークショップで、彼らが共同でセレクションしたプログラムを2日間にわたり上映します。「サンシャワー展」を一味違う視点から読み解く作品群をお楽しみください。フィリピンのジョン・ラザム監督(9月3日)、相澤虎之助監督(9月10日)も登壇予定!
※「サンシャワー 東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」関連プログラム
イベント詳細
タイトル | ワーキングタイトル―日本と東南アジアの実力派映画プログラマーによるセレクション― /サンシャワー:東南アジアの現代美術展 関連プログラム |
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開催日 | 2017年 9月3日(日曜日)10時45分~17時40分終了予定 9月10日(日曜日)11時~17時40分終了予定 注:全2日 |
会場 |
東京都港区六本木7-2-2 google map |
定員 | 各回260名(予約不要・先着順) |
入場料 | 無料 注1:ただし入場には「サンシャワー展」観覧券(国立新美術館単館券、または国立新美術館・森美術館の2館共通券/半券可)のご提示が必要です。 注2:高校生以下の方は学生証あるいは年齢のわかるものをお持ちください。 |
主催 | 国際交流基金アジアセンター、国立新美術館 |
お問合わせ先 | 03-5777-8600(ハローダイヤル) |
ウェブサイト | http://sunshower2017.jp/programs.html |
上映スケジュール
2017年9月3日(日曜日) アンダー・コンストラクション
グローバリゼーションの高まりの中、東南アジアでは地域的なアイデンティティを構築する試みが続いています。しかし、進歩に向けて前進を続ける「構築(コンストラクション)」のプロジェクトの中では、周辺に追いやられた人々のためのスペースはほとんど残されていません。このプログラムでは、さまざまな手法で彼らの声をひろいあげる作品を上映します。
- 10:45~(開場10:30)
映画プログラマーによるイントロダクション - 11:00~
『サンペン ある中華街のモンタージュ(Sampeng: The Chinatown Montage)』日本初上映
監督: スーラポン・ピニカ - 13:00~(開場12:45)
『紙は余燼を包めない(Paper Cannot Wrap Up Embers)』
監督:リティ・パン - 14:50~(開場14:35)
『蛇の皮(Snakeskin)』
監督:ダニエル・フイ
『3つの呪文(Three Enchantments)』日本初上映
監督: ジョン・ラザム
Q&Aセッション
登壇ゲスト:ジョン・ラザム監督
2017年9月10日(日曜日) In The Eye of (Each) Other
自己を対象とした映像表現や、日記のように映像を紡いでいくという手法は、細分化し粉々になってしまったアイデンティティを検証し、とらえなおす手段となってきました。このプログラムでは、そのような実験映画とドキュメンタリーの上映を通じて、東南アジアにおける自己と他者の問題を見つめます。
※各作品の上映前に映画プログラマーによる10分程度の解説がつきます。
- 11:00~(開場10:45)
『姓はヴェト、名はナム(Surname Viet Given Name Nam)』
監督: トリン・T・ミンハ - 14:00~(開場13:45)
『エンドレス, ネームレス(Endless, Nameless)』
監督:パットンポン・モン・テスラティープ
『オン・ブロードウェイ(On Broadway)』日本初上映
監督: アリョ・ダヌシリ - 16:00~(開場15:45)
『花物語バビロン』
監督:相澤虎之助
Q&Aセッション
登壇ゲスト:相澤虎之助監督
作品詳細
9月3日(日曜日) アンダーコンストラクション
『サンペン ある中華街のモンタージュ(Sampeng: The Chinatown Montage)』日本初上映
監督: スーラポン・ピニカ
1982/タイ/60分/ブルーレイ/字幕(ダイアローグ)なし
実験的なドキュメンタリーで、タイのバンコクで最も活気あるエリアに暮らす華人を親密に描いたポートレイト。バンコクが首都となって200年を記念し制作された。16mmフィルムを用い、朝から晩までバンコクのチャイナタウンを隅々まで記録している。ナレーションを省き、歴史あるコミュニティを生き生きと捉えた作品。
『紙は余燼を包めない(Paper Cannot Wrap Up Embers)』
監督:リティ・パン
2006/フランス/86分/DVCAM/日本語・英語字幕
カンボジア・プノンペン。娼婦になった女性たち。彼女たちは家族や金のために身を売り、客や雇い主から暴力を受け、エイズ感染など悪夢の日々を過ごしている。内戦の傷深く、腐敗した社会の底辺に暮らす瀕死の魂への鎮魂詩が哀しく、時に美しく奏でられる。祖国カンボジアと向き合い続ける監督によるドキュメンタリー。
『蛇の皮(Snakeskin)』
監督:ダニエル・フイ
2014/シンガポール、ポルトガル/105分/ブルーレイ/日本語字幕
2066年、あるカルト教団の生き残りの男に手渡された「悪」が映っているという2014年のシンガポールのフィルム。架空のカルト教団の盛衰が、シンガポールの建国/ルーツにまつわる神話や幻想と重ね合わせられ、人々の私的な物語が交錯しながら、この地における抑圧と抵抗の歴史の残像が時空を超えてあぶり出される。
『3つの呪文(Three Enchantments)』日本初上映
監督:ジョン・ラザム
2016/フィリピン/13分/DVD/日本語・英語字幕
有名な民間伝承と1900年代初めからフィリピンに暮らす外国人の旅行記を描くことにより、「退屈な日常の中で成長し死んでいく」人々と、そういった人々が魅了される呪文を思い起こさせる映像作品。
※監督の意向により、一部ナレーションには字幕が付されていません。
登壇ゲスト:ジョン・ラザム監督
実験映像作家。マニラの大学でも教鞭をとる。2011年、サイレント作品『The Moon Is Not Ours』がフィリピンのMOV国際映画・音楽・文学フェスティバルにおいてシルバーショーツ賞を受賞。監督作品はエディンバラ国際映画祭、パリ実験映画祭、ソウル実験映画祭などで上映されている。
9月10日(日) In The Eye of (Each) Other
『姓はヴェト、名はナム(Surname Viet Given Name Nam)』
監督:トリン・T・ミンハ
1989/ベトナム、アメリカ/108分/DVD/日本語字幕
「娘は父に、妻は夫に、未亡人は息子に服従する。」 昔から繰り返されてきた伝統的な隷属の物語を英語で語るベトナムの女たち。ベトナム戦争の悲惨な記憶、解放後もつづく支配される性としての女の過酷な状況。外国語で再現することによってリアリティとは何か、ドキュメンタリーとは何かを観る者に強く問いかける。
『エンドレス, ネームレス(Endless, Nameless)』
監督:パットンポン・モン・テスラティープ
2014/タイ/22分/ブルーレイ/字幕(ダイアローグ)なし
タイのある軍人のプライベートガーデンをスーパー8(8mmフィルム)で撮影し、自家現像した作品。モン監督は父親の庭で働いていた徴集兵たちを20年以上にわたって見つめ、その記憶をこの作品に構成した。自分の存在を再探究するために作られた、自己暗示のような映画である。
『オン・ブロードウェイ(On Broadway)』日本初上映
監督: アリョ・ダヌシリ
2011/インドネシア/62分/ブルーレイ/日本語・英語字幕
ニューヨーク・マンハッタンの「モスク」。人々がそこに集まり、信仰や余暇の日常的な行為を行うことにより、ごく普通の空間が遊戯と神聖の間を行き来する。その空間をさりげなく観察し、マンハッタンでムスリムとして生きることの意味を問う。意外なラストは宗教と日常、集団と個、日常と政治の境界に疑問を投げかけている。
『花物語バビロン』
監督:相澤虎之助
1997/日本/46分/DVD/日本語字幕
1990年代、軽い気持ちでアジアを旅した日本の若者が見たのはインドシナ半島の歴史、ケシの産地である黄金の三角地帯と山岳地帯に住むモン族の歴史だった。過剰なナレーションと字幕でアジアの甚大さが表現される。『バンコクナイツ』(2016/富田克也)共同脚本の相澤が8mmフィルムで撮影した実験的ドキュメンタリー。
登壇ゲスト:相澤虎之助監督
1974年埼玉県生まれ。早稲田大学シネマ研究会を経て映像制作集団 空族に参加。監督作『花物語バビロン』(1997)が山形国際ドキュメンタリー映画祭にて上映。タイ、ベトナム、カンボジアで取材した『バビロン2 THE OZAWA』(2012)は爆音映画祭でプレミア上映された。空族結成以来、富田克也監督の数作品で共同脚本を務めている。
本企画は以下の6名の映画プログラマーによって制作されました。
- 9月3日
- 高崎郁子
- ジェイ・ロサス(フィリピン)
- プッタポン・ジアムラッタンユー(タイ)
- 9月10日
- 杉原永純
- スガール・ナディア・アジール(インドネシア)
- パトムポン・マーナキットソンブーン(タイ)
- 全体アドバイザー
- 藤岡朝子(山形国際ドキュメンタリー映画祭理事)
- チャリダー・ウアバムルンジット(タイ・フィルムアーカイブ副代表)
「ワーキングタイトル」とは?
「ワーキングタイトル 国際交流基金アジアセンター上映企画・実践ワークショップ」は、3つのフェーズで構成され、参加者は協力して2つの上映プログラムを作成し、実際に上映をおこないます。第1フェーズは今年7月に実施され、日本と東南アジアを代表する映画専門家によるレクチャーや関連機関の訪問をおこなうとともに、上映プログラム作成にむけた準備作業を実施しました。今回の上映は第2フェーズにあたります。第3フェーズは2018年1月に予定されており、バンコク(タイ)で新しいプログラムによる上映をおこないます。