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進化し続けるストリートカルチャーのいま AFRA×CHITO対談

Interview / DANCE DANCE ASIA

これだけ個性を打ち出したダンサーが多いと、その中でさらに一歩抜きん出るのも大変ですよね(笑)。(AFRA)

―ストリートダンスシーンの話をすると、いまアジアで活躍するダンサーたちがオムニバスで出演する「DANCE DANCE ASIA―Crossing the Movements」の東京公演が、10月28日より世田谷パブリックシアターで行なわれます。日本だけでなくアジア各国からもさまざまなダンサーが参加しますが、出演するダンサーで知っているのは?

CHITO:おそらく全員知っています。この世界にもう20年くらいいるので(笑)。

メインビジュアルの画像

「DANCE DANCE ASIA―Crossing the Movements」東京公演 メインビジュアル

AFRA:それはすごい(笑)。タイムマシーンは同じ事務所なのでもちろん知っていますよ。有名なダンサー、黄帝心仙人が結成したチームですよね。

―コマ送りのようなロボットダンスを振り付けたユニクロのCMで、カンヌ国際広告大賞グランプリ受賞など、世界中のクリエイターから注目され続けているダンサーです。ストリートダンスもかなり多様化していると思うのですが、特に個性的なグループを挙げるとすれば?

CHITO:それは皆を知っているだけに、すごく難しい質問なんですが……(笑)、最近気になっているのはSNAZZY DOGS。三味線と鼓、和太鼓をパーカッシブに演奏しながら踊るのですが、「和モノ」を押し出すとしたら、いま一番世界に通用しそうなグループですね。あと東京ゲゲゲイは奇抜な衣装やキテレツな世界観が人気です。曲も自分たちで作っているので、音楽好きの人はその辺りも楽しめるかなと。

 

AFRA:これだけ個性を打ち出したダンサーが多いと、その中でさらに一歩抜きん出るのも大変ですよね(笑)。

―逆に「これぞストリートダンス」を楽しめるグループというと?

CHITO:凄腕のダンサーばかりが集まったユニット、Moreno Funk Sixersでしょうね。メンバーのGUCCHONさんはこの間もオランダで行なわれた、「SUMMER DANCE FOREVER」で優勝していましたし、素人が観ても「あ、これは違う」ってすぐにわかると思います。あと梅棒はもともと劇団で、「笑って泣ける」ストーリーが得意なので、熱い心根を持つAFRAくんとも話が合いそう(笑)。いま、全国の高校生たちが梅棒のダンスを一生懸命コピーしているくらいですから。

―海外勢に目を向けると、ベトナムから出演するS.I.N.Eは、ブレイクダンスと伝統芸能を融合したパフォーマンスが特徴で、お面を被ったトラディショナルな踊りから始まり、エレクトロなトラックへと雪崩れ込んでいくところが見どころだそうです。

AFRA:海外のダンサーのパフォーマンスは気になりますね。どんなふうに日本と違って、どんな共通点があるのか? 遠いようで近く、近いようで遠い国々もたくさんありますし、実際に観てみないと本当にわからない。

―11月23日にも「Shibuya StreetDance Week 2015」の中で、日本、東南アジアの1990年代生まれの次世代ダンサーによるコラボレーション作品『A Frame』が上演されます。こういった若手の活躍は、もっと期待できそうですね。

AFRA:いま、ダンスは公立小中学校の体育で必修なんですよね。実際どのくらい一般的には浸透しているんでしょう? 高校生とかは普通に踊れちゃうんですかね。

CHITO:『A Frame』に出演する日本のダンサーたちも、ほとんどみんな子どもの頃から知っています。キッズダンサーの第1世代。僕らは数少ない情報を必死で集めながら、独学で学んできた世代でしたが、いまの子たちは情報や環境が当たり前にある状態からのスタートなんですね。あっちの山や、こっちの谷、前の世代がいろんなところで摘んできた実や葉っぱで作ったジュースを、子どものときから毎日ゴクゴクと飲んで育った世代なので、正直うらやましい気持ちもあります(笑)。

AFRA:あははは。すごくわかりやすい喩え(笑)。

メインビジュアルの画像

「Shibuya StreetDance Week 2015」 『A Frame』公演 メインビジュアル

CHITO:でも、新しい世代が今後のシーンを担っていくわけですからね。ストリートダンスは、日本がいまもっとも先進国だと思います。子どもたちがとにかく上手い。治安がいいから、子どもが郊外から1人で電車に乗って、ダンススクールまで学びに来られるんですよ。他の国じゃそんなこと絶対にできないですからね。

―環境が自分で選べるということですよね。

CHITO:安全であることがどれだけありがたいかを感じます。日本人は細かいことが得意で反復練習も黙々とできる。その代わり表現力に乏しいと言われてきましたが、もう関係なくなった気がします。本当に個性が重視される世界。身体に不自由がある方も結構いらっしゃいますが、みなさんすごいですからね。グルングルン回っている。どのくらいのめり込めるか? 本人の熱意次第なんじゃないかと。

AFRA:そこがストリートダンスやヒップホップのいいところなんですよね。出自やバックグラウンドなんて関係なく、やりたい人を受け入れてくれる懐の深さがある。僕も10代の頃、本場ニューヨークに憧れて行ってみて、当然「アジア人が何やってんだ?」と言われると思ったけど、ビートボックスをやってみせたら一発で受け入れてくれた。

インタビュー中のAFRAさん、CHITOさんの写真

 

CHITO:もう見た目は関係ないですよ。昔だったら、ドレッドでルーズな服装ならダンサーだと一目でわかったんですけど(笑)。電車で隣に座った、どうみてもヒップホップなんて聴いてなさそうなOLさんが、ガンガン踊れたりするなんてこともありますから。ストリートダンスも普通に踊られて、観られる時代になりましたよね。

AFRA:義務教育化されて裾野が広がったことで、自分でも気づかなかったダンスの才能に目覚める人もきっと増えてくるでしょうね。今後ダンスのレベルは底上げされていく一方でしょうから、ますます油断できませんね(笑)。