国際交流基金アジアセンターでは、対日理解や日本での関係者間ネットワーキングおよび日本における異文化理解促進のために、ASEAN10か国から様々な分野の文化人を招へいする「アジア・文化人招へいプログラム」を実施しています。
今回は2017年2月、シンガポールのナンヤン工科大学から政治/歴史学者のファリッシュ・ヌール氏を招へいしました。滞在期間中、ファリッシュ氏は東南アジアと日本における地域研究の専門家間ネットワークを構築するため、日本の東南アジア研究機関を訪問し、積極的に関係者と地域研究分野の課題を共有されました。大阪大学、東京外国語大学、東洋大学ではレクチャーも行い、学生からの新鮮な意見にも真剣に耳を傾けていました。
現在、シンガポール、マレーシア、インドネシアの歴史教科書の比較研究を手がけているファリッシュ氏は、近代化のモデルとなった日本の明治期の遺産にも大変興味をお持ちでした。博物館明治村(愛知県)の視察では、郵便局が近代化のシンボルであったエピソードを披露され、学芸員さんに当時のことについて熱心に質問されていました。
招へいプログラムの一環として、2月28日(火曜日)には国際交流基金本部にて講演会を催し、大勢の方にご来場いただきました。講演会では、国民国家の単位でそれぞれの国を見るだけでなく、「東南アジア人」として、境界の人々の国の垣根を越えた多様な生活にも目を向けることが大切ではないかと私たちに問いかけました。
講演会の抄録はこちらでお読みいただけます。 ファリッシュ・ヌール――境界から見える今日の東南アジア:人々の暮らしから将来のASEAN統合を考える
同じくプログラムの一環として、盆栽作りや鎌倉彫、歌舞伎鑑賞などの日本文化を体験されました。姫路城を訪れた際には、ダンボール紙で作る甲冑キットを購入し、帰国後、立派な鎧を完成させました。
今回の訪日で築いたネットワークをもとに、今後はぜひシンガポールと日本の研究組織で共同プロジェクトを実施したいと抱負を語ってくれました。