より深く東南アジアを紹介する、混成アジア映画研究会×国際交流基金Presents シンポジウム・参考上映会。
東南アジア文化や事象をテーマとした映画を紹介し、地域研究の観点から解説を行っています。 昨年に続き第2回目となる今回は、5月18日(金曜日)に開催。
地域研究者の解説に加え、特別ゲストにディーン・フジオカ主演の新作『海を駆ける』でインドネシアロケを行った、深田晃司監督をお迎えして制作秘話をお話いただくなど、盛りだくさんのイベントとなり、のべ150名近くにご来場いただきました。
映画をとおして東南アジア文化・社会をみる
今回は、「喪失の中の祈りと覚悟 ~映画が映す東南アジアの内戦・テロと震災・津波」と題し、東南アジアにおいて、突然の災難によって大切なものや人を失ってしまう経験をした人々や社会が、どのようにそれらを受け止め、再び立ち上がっていこうとしているのかを探っていきました。
参考上映作品として紹介したのは、インドネシア、東ティモールをそれぞれ主な舞台とした映画『天国への長い道』、『ベアトリスの戦争』。
今回の上映にあたり、地域研究者が各言語から新たな日本語字幕を制作しました。これまで日本での上映機会が限られていた作品でしたが、より現地事情に即した日本語訳でご覧いただける貴重な機会となったのは地域研究者による企画だからと言えるでしょう。
シンポジウムではインドネシア・東ティモールを対象とした地域研究者からそれぞれの歴史的・文化的背景や映画の見どころなどの解説と、パネルディスカッション、Q&Aセッションを行いました。
インドネシア、東ティモールの人々が経験した「喪失」と、今について考える
プログラムは、インドネシア制作の映画『天国への長い道』の上映からスタート。
9.11以降、テロと戦争が世界化する中、インドネシア・バリ島で起きた爆弾テロ事件を、テロの企画者、実行犯、地元の人々、報道、の4つの視点から描いた作品です。
『天国への長い道』
インドネシア、2006年、115分、インドネシア語・英語(日本語・英語字幕)
監督:エニソン・シナロ (c)Kalyana Shira Films
続いてのシンポジウムでは参考上映作品の理解を深める解説・ディスカッションが行われました。
西芳実京都大学東南アジア地域研究研究所准教授は、映画『天国への長い道』を、地域研究の観点から解説。同作のテーマとなっているインドネシア社会、バリ島テロ事件についての説明と、それらを踏まえた映画の見方と併せて、後に起こったインドネシア スマトラ沖地震による、アチェの津波被災と復興の在り方についても、紹介されました。
亀山恵理子奈良県立大学地域創造学部准教授は、映画『ベアトリスの戦争』について解説。 東ティモールの歴史や文化と、映画で描かれている女性たちの振る舞いについての説明のほか、国際開発支援の観点から、紛争後・災害後の現在の東ティモール、インドネシア アチェにおける復興への取り組み、現在の様子などが紹介されました。
特別ゲストとして登壇いただいた深田晃司監督は、ディーン・フジオカ主演の新作『海を駆ける』をインドネシアロケにて制作することとなったきっかけとして、東日本大震災から間もない2011年12月に京都大学主催の国際ワークショップの記録撮影のためアチェを訪問したことを挙げられ、その経験を紹介されました。
監督の視点から見たインドネシア社会、舞台となったアチェとそこに暮らす人々について語っていただいたほか、『海を駆ける』制作秘話についてもお話いただきました。
パネルディスカッション、Q&Aセッションでは、山本博之京都大学東南アジア地域研究研究所准教授をモデレーターに、今回のイベントのテーマについて掘り下げた議論が繰り広げられました。
プログラムの最後には、シンポジウムで語られた内容を踏まえ、東ティモールでの戦争が女性たちにどのような影響をもたらしたのかが描かれた作品、『ベアトリスの戦争』を上映しました。
長時間のイベントとなりましたが、ご来場の方からは、「今観るべき映画だった」「映画や多様な東南アジア文化への理解が進んだ」との感想をいただきました。引き続き、多様な東南アジアにご注目ください!
シンポジウムの具体的な内容は、混成アジア映画研究会の開催レポートページでご覧いただけます。
また、国際交流基金アジアセンターでは、2015年に「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア」と共に東南アジアからの最新ショートフィルム事情映画を紹介するプロジェクトを実施し、『ベアトリスの戦争』を制作されたベティ・レイス監督を日本にお招きして、お話をお伺いしています。http://www.shortshorts.org/southeast_asia2015/column-timor-leste/
ぜひ併せてご覧ください。