ASIA center | JAPAN FOUNDATION

国際交流基金アジアセンターは国の枠を超えて、
心と心がふれあう文化交流事業を行い、アジアの豊かな未来を創造します。

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三陸国際芸術祭2019連携企画「三陸×アジア」つながるプロジェクト 「DOOR to ASIA」を開催しました

国際交流基金アジアセンターは、三陸国際芸術祭における連携企画として5つの「三陸×アジア」つながるプロジェクトを企画・実施しました。連携プロジェクトの1つ、「DOOR to ASIA」の中心となるイベント「箱根山フェスティバル」の様子をご紹介します。

DOOR to ASIAとは、アジア各国のデザイナーたちが地域に一定期間滞在し、地元事業者と自国をつなぐための“コミュニケーション・デザイン”を制作するデザイナーズ・イン・レジデンス形式プログラムです。国際交流基金は、一般社団法人つむぎやとの共催で2015年から4年間にわたって三陸地域を舞台に当プログラムを実施し、延べ30名以上のアジアのデザイナーと地元事業者との交流を支援してきました。

4年間の交流で生まれたネットワークをさらに地元に広げていく機会として、アバッセたかた(陸前高田)とアンカーコーヒー(気仙沼市)で展示やトークセッションを開催。それらの締めくくりとして、2019年3月23日(土曜日)、陸前高田市の箱根山にある箱根山テラスをメイン会場に、三陸とアジアの食、アート、デザイン、映画など様々なイベントを楽しめる「箱根山フェスティバル」を開催しました。

「トークセッション ほんまるの家」の写真
「杉の家はこね 展示会」の写真

イベントはインドから来日したデザイナーでヨギーニのSamiaによる「朝ヨガ」からスタート! 10時には、隣接する杉の家はこねで「箱根山デザインスクール」が始まりました。気仙沼を拠点に活動するpensea Next Swichさん、アジアのデザイナー、子どもたちがチームを組んで将来の街を創造しました。

箱根山デザインスクールの様子
箱根山デザインスクールの作品「未来のまち」の写真

12時からオープニングセレモニーとして、このために再来日したデザイナーと彼らが推薦したシェフが、酔仙酒造さん提供の新酒で鏡開きを行いました。4カ国のシェフが、それぞれ三陸地域の食文化をリサーチして創作したカレーをふるまいました。メニューは「ココナッツ風味のカキ・ホタテ・あさりカレー(インド)」「炒り米とピーナッツペーストのビーフ煮込みカレー(フィリピン)」「メカジキとほうれん草のカレー ココナッツ風味(インドネシア)」「ゆず風味のフィッシュカレー(タイ)」。シェフが料理に込めた思いを話すと、カレーを求めて長蛇の列ができました。

鏡開きの写真
三陸地域の食文化をリサーチして創作したカレーの写真

過去4年間行ってきたアジア各国のデザイナーと地元事業者との協働から生まれたコミュニケーション・デザインの展示も行いました。また、八木澤商店さんによる「醤油の学校」、横田屋本店さんによる「おいしい海苔の食べ比べ」、フィリピンのデザイナーDangによる「スタンプワークショップ」など、書ききれないほどの楽しいワークショップが盛りだくさん。箱根山テラスの外では、移動式サウナカーが出動し、気仙大工左官伝承館の立派な蔵がこの日は映画館に変わり、カレーや日本酒をテーマにした映画を上映しました。交流は夜まで続き、「箱根山晩餐会」には地元の方だけでなく、日本各地から様々な国籍の人たちが集まってお酒を酌み交わし、三陸とアジアの融合を楽しみました。

「醤油の学校」集合写真
フィンランド式サウナの写真
箱根山映画祭の写真
箱根山晩餐会の写真

帰国後、招へいしたシェフやデザイナーからは以下の声が寄せられました。

  • 「自分たちのコミュニティをより良くしようと努力する人たちに出会えた。長期的に三陸と関わりたい」
  • 「いま東北で行われているプロジェクトはもっと世界に知られるべきだ。英語で情報発信されたら、もっと国際的に関心を持たれると思うし、自分も広報に協力したい」
  • 「異なるスキルや視点を持つ人々がチームとなって働くことで、新しい仕事の仕方や解決法が見つかる。今後、自分も異なる文化をつないで、コミュニティをデザインする仕事をしていきたい」
  • 「日本について話は聞いていたが、なにもかもが初めての体験だった。日本料理のリサーチは、私の料理の技術面、精神面に大きな影響を与えたと思う」

DOOR to ASIAでは、関わる人々が、よりよいあり方を求めてお互いを理解しようとし、違いがあるからこそ新たな視点を提示する、国や言葉を超えた関係性を育んできました。来日したデザイナーやシェフだけでなく、地元の事業者さんにも三陸地域にとっても、少しずつ新たな可能性の扉を開いています。三陸地域でのDOOR to ASIAプログラムはここで一区切りとなりますが、これで終わらない物語が始まっていることを感じさせる1日となりました。

Photo: DOOR to ASIA / Kazuhiko Monden