第5回「三陸国際芸術祭」を宮古市、八戸市、大船渡市にて開催しました

国際交流基金アジアセンターは、三陸国際芸術推進委員会、NPO法人ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク(JCDN)と共に5回目となる「三陸国際芸術祭」を宮古市、八戸市、大船渡市をメイン会場に開催いたしました。八戸プログラムの一部をご紹介します。

2月23日(土曜日)、青森県八戸市「八戸まちなか広場マチニワ」では、八戸市民のほか観光客など約400人が集まり、会場となった八戸の鮫神楽、市川神楽、弘前市の松森町津軽獅子舞、今回インドネシアのジョグジャカルタから招いた「New Zuguz Gedroex(ニューズグズ・グデュッルッ)」(以下、ニューズグズ)が迫力ある舞を披露し、観客を魅了しました。ニューズグズはインドネシア舞踏ジャティラン* の演目の一つである「ランッパク・ブト」を踊ったのですが、足に巻いた「クリンチン(鈴)」を豪快に鳴らし、目が血走る鬼の面をつけた激しい動きに会場は大いに沸きました。演舞の後のインタビューでは会場から装束について質問があり、「クリンチンは片足4~5キロ、マスクも入れると装束全体で15キロ」との説明があると驚きの声が上がりました。

* 竹でできた馬を使う踊りで、村の祭事や結婚式などで踊られる郷土芸能。

「鮫神楽」を踊る演者たちの写真
「津軽獅子舞」を踊る演者たちの写真
「ランッパク・ブト」を踊る演者たちの写真
挨拶をするニューズグズのメンバーの写真

三陸国際芸術祭での公演が終わると、ニューズグズのメンバーは、階上町立赤保内小学校や赤保内青年駒踊会などを訪問し、郷土芸能を通した交流事業に参加しました。
階上町立赤保内小学校では、この地域に伝わる荒馬の踊り「駒踊り」に全校児童で取り組んでいます。この取組みは、人口減少と少子高齢化により後継者不足が深刻となった30年ほど前に、赤保内青年駒踊会のメンバーが中心となって始まったものです。ニューズグズが訪問した2018年2月25日(月曜日)は、階上町長をはじめ教育委員会、保護者、赤保内青年駒踊保存会のメンバーも小学校に駆けつけ、子どもたちとの交流を後押しし、ニューズグズを歓迎してくれました。お互いの芸能を披露した後には習い合うワークショップもあり、身振り手振りを交えた芸能交流が行われました。

赤保内小学校にて「ジャティラン」を舞う演者たちの写真
「ニューズグズのメンバーたちと赤保内小学校の皆さんの写真
「駒踊り」を披露する演者のみなさんの写真
ガムランを触ってみる児童の写真
ニューズグズと赤穂内小学校の児童のみんなの集合写真

小学校を後にしたニューズグズが次に向かったのは、小学生たちに駒踊りを教えている赤保内青年駒踊会の稽古場です。数十年前までは10代~30代の舞い手が中心だった青年駒踊り会の現在の平均年齢は59歳。荒馬を模した踊りは飛び跳ねる動きが多く、体力に加え持久力を必要とする舞で、年を重ねると体力的にかなりきついそうです。それでも、お祭りなどの行事のほか、小学校での出張稽古、夏には地域の新盆などに呼ばれて一年中忙しく活動されています。ここでは、装束や道具に触れ、道具が壊れた場合の修理について、また、芸能を継承する者として後継者の育成についてなどの意見交換が行われました。ニューズグズからは、「インドネシアでは、まだ人口減少や少子高齢化といった社会状況には直面していていませんが、スマートフォンが常に身近にある子どもたちに「伝統」の良さを伝える難しさは既に感じているので、日本の例を参考に「芸能の継承」についても今後真剣に考えていく必要があると感じました。」とコメントがありました。

「赤穂内青年駒踊会」稽古場で車座になって話をする様子
踊りに使う「ウマ」に一礼する一堂の写真
赤保内青年駒踊会の皆さんとニューズグズのメンバーの集合写真

短い滞在時間ではありましたが、郷土芸能を通した交流は芸能を志す者同士、多くの刺激を受け、学び合い、大変有意義な交流を行うことができました。文化も気候も全く異なるインドネシアと三陸地域ですが、自分たちの芸能に誇りを持ち、情熱を持って取り組む姿は万国共通です。今回の招へい事業をきっかけに東南アジアと三陸地域の芸能交流がますます活発となり、両地域の絆が深まることを期待します。

最後に、今回、来日したニューズグズのメンバーはジョグジャカルタ特別州スレマン県プンデュマン村の出身ですが、彼らにとって、海外はもちろん村以外で芸能を披露することが初めてでした。今般の来日では、ジョグジャカルタ特別州文化省をはじめ多くの方々にサポートいただきました。お力を貸してくださった皆様に心より感謝申し上げます。