国際交流基金アジアセンターは、10月28日(月曜日)から11月5日(火曜日)にかけて開催される第32回東京国際映画祭(以下、TIFF)にて、アジア映画特集シリーズ「国際交流基金アジアセンターpresents CROSSCUT ASIA」を実施します。第6弾となる本年度は、「CROSSCUT ASIA #06 ファンタスティック!東南アジア」と題して、国際的に活躍する監督や人気俳優が監督したホラーやスリラー、SF、ファンタジー等、東南アジアの摩訶不思議な世界を多様な視点でとらえた作品を通じて紹介します。
2014年にTIFFの一部門として設立された「CROSSCUT ASIA」は、アジアの国、監督、テーマなど、様々な切り口でアジアの現在(いま)を鋭く切り取った特集上映を行っています。これまで、タイ、フィリピン、インドネシアと各国の特集、巨匠監督推薦の若手監督映画、音で旅する東南アジア映画を特集しました。今年も世界で活躍するベテラン勢から新進気鋭の若手監督まで、バラエティ豊かな9プログラム10作品が揃いました。監督や俳優ら来日ゲストによるQ&Aセッションなど、交流の機会もありますので、ぜひご期待ください。
また、10月29日(金曜日)には女性監督3名を迎えてシンポジウムを行います。ぜひご参加ください。
CROSSCUT ASIA#06シンポジウム「ホラー女子会の秘かな愉しみ」
※イベントは終了いたしました。
CROSSCUT ASIA #06「ファンタスティック!東南アジア」Special Trailer 特別予告編
上映ラインナップ
『存在するもの』(The Entity)
2019年/フィリピン/114分
監督:エリック・マッティ
出演:シャロン・クネタ、ジョン・アルシラ、ケント・ゴンザレス
『牢獄処刑人』のエリック・マッティが放つ本格ホラー。双子の妹マヌエラが急死したとの報せが届いて帰郷したルイスを待っていたのは、悪霊たちの度重なる跳梁跋扈だった。果たして妹の死の真相は?
『フォックストロット・シックス』(Foxtrot Six)
2018年/インドネシア/114分
監督:ランディ・コロンピス
出演:オカ・アンタラ、マイク・ルイス
新人監督ランディ・コロンピスが描く近未来ディストピア大作。食糧不足で人類の危機が迫るなか、元海兵隊員で国会議員に転身したアンガは仲間とともに敵に挑む。オカ・アンタラ(『ザ・レイド GOKUDO』『アジア三面鏡2018:Journey』)ほか人気スター勢揃い!
『停止』(The Halt)
2019年/フィリピン/283分
監督:ラヴ・ディアス
出演:ピオロ・パスカル、ジョエル・ラマンガン、シャイーナ・マグダヤオ
『立ち去った女』のラヴ・ディアス初の近未来SF。2034年、火山の噴火で太陽が隠された東南アジア一帯は闇のなかに沈む。独裁者が専制政治を行い、多くの民衆の血が流れる…。カンヌ2019監督週間出品作。
『死を忘れた男』(The Immortal)
2018年/ベトナム/130分
監督:ヴィクター・ヴー
出演:クァック・ゴック・グアン、ティン・ゴック・ジェップ、ジュン・ヴー
ベトナム期待の星ヴィクター・ヴーが、ハートフルな『草原に黄色い花を見つける』に続いて手がけた対照的な本格ホラー。謎の洞窟に迷い込んだアンは、不老不死の力を身につけた300歳の男・フンと出会うが…。
『永遠の散歩』(The Long Walk)
2019年/ラオス、スペイン、シンガポール/116分
監督:マティー・ドー
出演:ヤナヴッティ・チャンタルンシー、ポー・シラッサ、ヌーナファ・ソイダラ
ラオス初の女性監督マティー・ドーによるホラー風味のSF。50年前に母を死なせたことを後悔して生きてきた老人が霊力を授かって過去に戻る。果たして母の命をつなぎとめることはできるのか? ヴェネチア2019出品作。
『Sisters』(Sisters)※インターナショナル・プレミア
2019年/タイ/106分
監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ
出演:プロイユコン・ロージャナカタンユー、ナンナパット・ルートナームチューサクン、ラッター・ボーガーム
『マッハ!!!!!!!!』『チョコレート・ファイター』のプラッチャヤー・ピンゲーオ監督、会心のホラー・アクション。悪魔ハンターとしての能力を身につけた姉と、病弱で陰のある妹。運命に翻弄される姉妹を待ち受けるのは…。
『リリア・カンタペイ、神出鬼没』(Six Degrees of Seperation from Lilia Cuntapay)
2011年/フィリピン/93分
監督:アントワネット・ハダオネ
出演:リリア・カンタペイ、ジョエル・サラチョ、ジェラルディン・ヴィラミル
30年間の端役人生の果てに初めて映画賞にノミネートされた老ホラー女優リリア・カンタペイは受賞スピーチを考えていて落ち着かない。ホラー映画業界の内幕を暴く、笑いと涙のモキュメンタリー? ドキュメンタリー?
『それぞれの記憶』(Untrue)※インターナショナル・プレミア
2019年/フィリピン/105分
監督:シーグリッド・アーンドレア P・ベルナード
出演:クリスティーン・レイエス、シアン・リム
北海道が舞台の大ヒット作『キタキタ』のベルナード監督の新作は恐怖のサイコ・スリラー。ジョージア(グルジア)で出会ったフィリピン人移民のマーラとホアキム。その生活に不気味な影が忍び寄る。
<フォークロア・シリーズ>
ケーブル放送局HBOアジアが製作し、エリック・クー監督が製作総指揮を務めた、民間伝承を題材にした6話のTVオムニバス・ホラー。うち2作を紹介。
『フォークロア:母の愛』(Folklore - A Mother's Love)
2018年/シンガポール、インドネシア/49分
監督:ジョコ・アンワル
出演:マリッサ・アニタ、テウク・ムザク・ラムダン
インドネシア篇は『悪魔の奴隷』などの若きホラー王、ジョコ・アンワルが監督。住処を追い出された母と息子に怪奇現象が降りかかる。
『フォークロア:TATAMI』(Folklore - TATAMI)
2018年/シンガポール、日本/52分
監督:齊藤工
出演:北村一輝、神野三鈴、黒田大輔
日本篇は俳優・齊藤工が監督として初のホラーに挑戦! 父の葬儀のために帰郷した男が、家族の秘められた過去を知るが…。北村一輝主演。
【ラヴ・ディアス監督メッセージ】
昨年訪れた街(ハリウッドを忌み嫌う映画祭に出席)の水辺をあてどなくブラブラしていたら、老「ソクラテス」の話を熱心にいとおしそうに聞く地元の一団とすれ違った。私はカメラを取り出し、老人の独り言の一部を記録した。大波、大風、さらにカモメの啼き声にかき消されながら、辛辣さと切迫感が混ざったその言葉は、哀歌のごとく…。
独裁者… ファシスト… 暴君… 連中は、世間に向かってこんなことをぶちまける生来的な傾向がある。俺の陰茎は世界一デカいとか、女へのセクハラやレイプの自慢話は山ほどあるとか、スイスやシンガポールやバハマの秘密の銀行口座に横領した何百万、何十億の金がある最低野郎ナンバー1だとか、かぐわしい色恋事の妄想と幻想を四六時中抱きつづけているとか、神や他の神秘的存在の啓示を雷雨の中で、あるいは耳の後ろで聞いたとか、そういう俺は選ばれし存在なのだ、とか。こういう誇大妄想者には宇宙は小さすぎて、その途切れることのない大言壮語はブラックホールの向こう側にまで広がる。無知と神話創造という人間の悪癖は、残念ながら、こういう連中、こういう常軌を逸した奴らに行き着くものだ。共謀と無関心の罪も深いが、往々にして大衆はそうせざるを得ないという言い訳を無数にもっている。精神科医と心理学者たちは、関心対象によって程度の差こそあれ、われわれ全員に罪があるのだと推論したがる。宮殿や大邸宅や夏の別荘や隠れ家の壁の内部にいる連中は何なのか? それらを真の意味で破壊できるのが大衆運動だけなのはなぜなのか?
一団が去ったあと、彼は落ち着いた様子で、大きな石に腰掛け、洋々たる大海をただ見つめていた。私は彼に挨拶した。
彼は「誰」とは言わず「お前は何だ?」と言った。
「私は映画監督です」と私。
次の質問は早かった。「映画に何ができる?」
私は茫然自失してしまった。
2人で幾杯かビールを飲み、世を嘆いた。しかし、彼は楽天的だった。
私はもうすぐ新作を撮ること、それはSFとホラーが融合した、独裁者の死とモラルの死と真実の死についての作品だと話した。
彼が夜の闇に消える前に放った最後の言葉。「お前の知っていることを信じるな」
(翻訳 川喜多綾子+ティム・オリーヴ)
関連講演
マティー・ドー監督(早稲田大学基幹理工学部表現工学科 是枝・土田研究室)
開催日 | 2019年10月29日(火曜日) |
---|---|
会場 | 早稲田大学(西早稲田キャンパス) |
ゲスト | マティー・ドー(『永遠の散歩』監督) |
モデレーター | 土田 環(早稲田大学基幹理工学部表現工学科講師) |
「第32回東京国際映画祭」開催概要
日程 | 2019年10月28日(月曜日)から11月5日(火曜日)まで |
---|---|
会場 | 六本木ヒルズ、EXシアター六本木(港区)ほか |
チケット | 第32回東京国際映画祭のページでご確認ください |
主催 | ユニジャパン |
公式サイト | 第32回東京国際映画祭 |
関連情報
本事業はbeyond2020の認証事業です。