コーヒーを題材にしたきっかけ
国際交流基金アジアセンター(以下、AC):インドネシアでコーヒーがテーマの映画はそう多くないと思いますが、今回なぜカフェやコーヒーを題材にした映画を作られたのでしょうか。
アンガ・ドゥイマス・サソンコ(以下、アンガ):『珈琲哲學』は、デウィ・レスタリという作家の短篇小説で、私と妻(本作のプロデューサーのアンギア・カリスマ)がレスタリのファンだったんです。この短篇を元に、映画化しました。インドネシアでは現在、急速にコーヒー文化が盛んになっていて、プロデューサーとして映画作りやマーケティングを考える上で、これはとてもいいテーマだと思ったんです。 脚本執筆のため、いろいろリサーチした結果、映画を作る人とコーヒーを作る人の間に共通点がたくさんあることに気づきました。それは自分がしていることへの深い愛情や情熱といったものです。そういうわけで、私たちがレスタリのファンだからというだけでなく、この物語には映画人である私たちに語りかけてくるものがあったんです。
映画のセットがそのままカフェに
AC:『珈琲哲學』の撮影セットを、主演のリオさんとチコさんがオーナーとなり、カフェとして経営していると聞きました。そのように至ったのは、特別な思い入れが本作にあったからでしょうか。
アンガ:脚本を書いている段階で、どこか実在のカフェを借りてこの映画を撮影するのは無理だと分かっていました。というのも、コーヒーのスタンドはここに置く、ジョディが使うオフィスはこういうところに置くという細かい指示を私が考えていたからです。ですから、どこかスペースを借りて、一から作るしかないと思っていました。
制作を進めるうち、実際に私たち3人でカフェを開いてはどうだろうと考え始めました。契約上、スペースを2年借りなければならず、既にその借料を払っていたからです。3ヶ月とか半年だけ借りられるスペースなんて、なかったんですね。加えて、コーヒーを淹れるための設備や機材もレンタルができず、全て購入しなければなりませんでした。それで、実際にカフェを経営しようということになったんです。
「Filisofi Kopi」というブランドとメディアミックス
リオ・デワント(以下、リオ):私たちは、このビジネスはかなり可能性を秘めたものだと確信していました。インドネシアは世界で有数のコーヒー生産国です。その一方で、インドネシアの映画界でずっと成功を収めることは、なかなか難しい……。なので、せっかく映画と実際のビジネスとをつなげられる可能性、つまり映画をそういう意味で商業化できるこのチャンスを逃してはならないと思ったんです。
アンガ:『珈琲哲學』を映画だけではなく、ブランド「Filosofi Kopi」として確立させようと思いました。ネット通販 ※英語・インドネシア語サイトでは、関連商品の販売も手掛けています。カフェは現在2店舗あり、3店舗目をオープンします。2017年の終わりまでには、ジャカルタだけでなく、インドネシア国内に10店舗増やしたいと思っています。
リオ:日本でも店舗を持つチャンスがあればいいんですが(笑)。
アンガ:実は来月(※インタビューは2016年11月収録)、『珈琲哲學』の続編『Filosofi Kopi 2: Ben & Jody』の撮影に入ります。また、ラジオドラマやコミックス、ウェブシリーズ『THE SERIES: Ben & Jody』※インドネシア語サイトとしても展開させ、Filosofi Kopiをいろいろな形で発展させたいと思っています。
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