三陸国際芸術祭2019連携企画「三陸×アジア」つながるプロジェクト 「気仙:アートとライフをここに持ち寄る」を開催しました

国際交流基金アジアセンターは、三陸国際芸術祭における連携企画として5つの「三陸×アジア」つながるプロジェクトを企画・実施しました。連携プロジェクトの1つ、「気仙:アートとライフをここに持ち寄る」についてご紹介します。

2019年3月、陸前高田市内の公園や集会所、旧校舎を舞台に、二人のキュレーター、豊嶋秀樹氏(gm project)とコン・カブレラ氏(フィリピン)を中心に、地域の人々とアーティストたちがともにつくるアートイベントを繰り広げました。

旧横田小学校の写真
ライフスタジオ

陸前高田市立横田小学校の旧校舎では、「アート&ライフスタジオ」と題した展覧会を開催しました。ここは、2018年2月に閉校となった小学校であり、2019年2月からアーティストが一人一教室を使用し、作品を制作してきた場所です。アーティストは、なつかしい未来創造社が展開する陸前高田アーティスト・イン・レジデンス(AIR)で招かれました。その一人、アーチャ・チョリッグー氏(タイ)は、陸前高田の佐藤たね屋さんの津波に関する個人的ストーリーや、たね屋さんの描いた絵に影響を受けて作品を制作しました。展覧会では、かれらの作品に加え、陸前高田市横田町在住の画家・田崎飛鳥氏の絵画、また陸前高田AIRとフィリピンのアーティストコレクティブBliss Market Laboratoryとの共同企画の凱旋展示が行われ、3月21日から24日の4日間で延べ150名が来場しました。

ミーティングの様子
ミーティングの様子

21日には「陸前高田ミーティング[横田編]」として、陸前高田出身の写真家の畠山直哉氏をゲストスピーカーに迎え、陸前高田AIR滞在アーティストら30名ほどが集まって、アートプロジェクトについて議論を繰り広げました。

蓮沼氏の写真
味噌フランク

24日は栃ヶ沢公園でマルシェを開催。雪が降ったかと思えば晴れたり、強風にあおられたりときまぐれな天気の中で、陸前高田に関わる様々な人が出店しました。海産物が並ぶ200年の伝統のある朝市を再現した「けせん朝市」があれば、画家の蓮沼昌宏氏がその場で似顔絵を描いてくれたり、畠山直哉氏が、撮影した来場者のポートレートをかつての陸前高田の風景と合成し、新しい風景をみせてくれたり。それぞれが自分の「アート」と「ライフ」を持ち寄って、いつもの場所をちょっと違う空間に変えてみせました。

また公園に隣接する陸前高田市コミュニティホール前の広場には、陸前高田AIRに参加したアイガルス・ビクシェ氏(ラトビア)による過去の巨大な作品「さいたまのビジネスマン」が登場。訪れた子どもたちはビジネスマンによじのぼり、アート作品を体感で楽しみました。

栃ヶ沢集会所の様子の写真
折り紙やねんどを使ったアジアごはんの写真
栃ヶ沢アパート手芸サークル作成の「ミニゾウさん」の写真
こどもワークショップの写真

隣接する栃ヶ沢集会所では、子どもからお年寄りまで幅広い年代が同じ空間に集まりました。栃ヶ沢アパートの手芸サークルが「ミニゾウさん」を作り、その隣では子ども達が、こどもアート企画mottoさんと一緒に折り紙やねんどを使ったお弁当づくりをしていました。実はこの子どもワークショップは1月から計3回、陸前高田市内の学童や大船渡市の教会で開催されており、その過程で子ども達はフィリピンやベトナムの人たちと、アジアの食文化について楽しみながら交流を重ねていました。

色々な背景をもった人たちが、それぞれが自分の持っている技術や感性、経験を持ち寄ることで自然と交流が生まれ、誰もが生活の中にあるアートを楽しみ、笑顔あふれる空間となりました。陸前高田で生まれるアートが、これからも国内外の人々に愛され地域がより活性化していく、そんな未来が見えるイベントとなりました。