国際交流基金アジアセンターでは、メディア文化をめぐる同時代の創造性を、アート、対話、教育、協働などの様々な取り組みから体系的に捉えるプロジェクト「ref:now—toward a new media culture in asia」を実施しています。本事業の一環として、2018年2月に、国際交流基金アジアセンターと一般社団法人TodaysArt JAPAN/AACTOKYOは、“バイオテクノロジーとアート”をテーマに、国内外から広く参加者を集う公募型ワークショップ「BioCamp: Gardens as 'Biotechnik'」を開催します。
現在バイオテクノロジーは、社会に大きなインパクトを与える領域として注目され、その技術開発、応用技術の研究が急速に進められています。同時に、同分野を市民社会と生活のなかで思考・実践するDIYバイオの動向の広がりや、アートやデザインなどのクリエイティブ分野におけるバイオテクノロジーへ再解釈や批評が様々な形で試みられています。
本企画では、東京を拠点にバイオテクノロジーの可能性について実践・議論するプラットフォームとして活動するBioClubをプログラムディレクターに迎えた特別プログラムを編成します。バイオテクノロジーを人間が生命を理解していくために必要な技術を「Biotechnik(ビオテヒニク、生技術)」と捉え、第一線で活躍するバイオアーティストや研究者等の多彩なゲストと、アジアをはじめ世界各地から集う参加者とともに、幅広い交流・対話・出会いを促し、相互理解や問題意識を共有しながら、新しい生きるための技法としてバイオテクノロジーを有機的にデザインする方法を探求します。
プログラム概要
テーマ:「庭」
日本における「庭」が日本の自然と風土、美意識を内包するように、同様の意味を有する英語圏のgarden、またインドネシアのhalamanは、それぞれの社会・文化的背景のもとで異なる特性や機能をもつと考えられます。本ワークショップでは、様々な地域における「庭」を、社会や文化の相互理解を促すプラットフォームと捉えるとともに、「庭」を、人間が他の生命と出会い関係していくためのインタラクティブな環境として捉えていきます。空間、風景、環境、そしてそこに配置される生命体との有機的な関係性をデザインするフォームとして「庭」を捉えるとき、バイオテクノロジーによってどのような「庭」が可能となるのでしょうか―。参加者は、芸術学やバイオアートに関するレクチャーと、DIYラボの機器やバイオインキ、CRISPRキット、植物組織培養等の基本的なウェット作業の技術を習得し、有機的な機能を踏まえた「庭」のデザインを試みます。
期間中の活動例
- ゲスト講師によるレクチャーおよびワークショップ
- 専門機関や施設の見学(エクスカーション)
- 課題「庭」を構想・制作するグループワーク(テキスト、プログラム、生データ、DIYハードウェアを用いたプロトタイプ制作)
- 発表と講評
応募
注:応募は締め切りました。
申請書に記入のうえ、活動経歴書(CV)、ポートフォリオとともにBioCamp事務局(camp@meca.tokyo)までE-mailにて送付ください。
応募要領(PDF 527kb) 注:応募要領を11月2日に改訂しました。
申請書(Word 69kb)
- 応募期間: 2017年10月20日(金曜日)~11月10日(金曜日)厳守
- 応募要件:
- 会期中のすべてのカリキュラムに参加可能であること。
- 研究や創作活動等の実績を有すること。
- 協働制作を行うための日常会話程度の英語力を有していること。
- 今後の活動目標や活動計画を有すること。
- 提出書類:
- 申請書(所定の様式あり)
- 活動経歴書(CV・様式自由)
- ポートフォリオ(様式自由、映像資料の場合はアップロードの上リンク先を明記)
- 対象者例:
- アーティスト、デザイナー、建築家、パフォーマー、プログラマーなどサイエンス分野の研究者
- エンジニア、倫理学を専門とする研究者
- 農業、林業、バイオマス、都市緑化、医療などの産業分野従事者
プログラムディレクター
BioClub [日本]
アートユニットBCLとして活動するゲオアグ・トレメル(Georg Tremmel)と福原志保、ロフトワークが発起人となり創設されたバイオテクノロジーの可能性について実践・議論するプラットフォーム。デジタルファブリケーションと文化の融合に取り組んできたFabCafeTokyoを拠点に2016年3月より始動。トークやワークショップなどのイベントを継続的に開催し、研究者やクリエイター、企業、さらにはバイオテクノロジーに課題意識をもつ人々など、組織/個人を超えて生物学やバイオテクノロジーに触れる機会を提供している。さらに、遺伝子組換え体を扱う際の安全基準・バイオセーフティレベルP1を満たす本格的な実験・研究が可能なバイオラボを併設。難病の研究を行うバイオベンチャーの入居やアーティストによる遺伝子組み換えバイオアート作品の展示など、社会にインパクトのある活動の拠点としても機能している。様々な領域の専門家やリーダーが一体となり、今後、急拡大が予想されるバイオ領域において領域を横断したイノベーションの重要性、倫理やバイオセーフティの対策について議論を深める場となっている。
バイオクラブ公式webサイト http://www.bioclub.org/
ゲオアグ・トレメル Georg Tremmel(アーティスト/BioClub/BCL)
生物学、情報学、メディアアートを修了後、2001年以降はアートと生物学が交差する場で活動。生物学的、文化的、倫理的、社会的コードを撚り合わせ、論争を呼ぶようなオブジェ、インスタレーション、状況をつくりだしてきた。福原志保とともにアートとバイオテクノロジーを批判的に探求するアーティスティック・リサーチ・フレームワークBCLを設立。アートによる介入、ソーシャル・ハッキング、基礎研究を通じて、生物学的コード生成と社会的コード生成の関係性、合同、差異を探ろうとしている。 オーストリア生まれ、東京在住。
石塚 千晃(アーティスト/BioClub/Loftwork)
国際情報科学芸術大学院大学[IAMAS]卒業後、産学連携のプロジェクトマネジメントを経て2016年12月よりロフトワークに参加。BioClubのディレクターとしてバイオ分野の可能性におけるオープンな議論と実験の場を運営している。アーティストとして、生命と人間とのインタラクションやボーダーに着目した作品を制作・発表を続けている。東京在住。
石塚千晃 Tumblr http://chiakiishizuka.tumblr.com/
アンドレアス・シアギャン Andreas Siagian(アーティスト/エンジニア/Lifepatch)
インドネシアのジョグジャカルタを拠点に活動するアーティスト兼エンジニア。ジョグジャカルタのアトマ・ジャヤ大学で土木工学を専攻。在学中にプログラミング言語を独学で習得し、分野横断的な活動に強い関心をもつ。様々な技術を独自に探求し続け、音響・映像制作のためのプログラミングや、DIYによる電子機器の開発、さらには音響彫刻、インスタレーションや楽器の制作までを手がける。また、地元のクリエイティブ・コミュニティとコラボレーションし、実験的オーディオビジュアルパフォーマンスのプラットフォームbreakcore_LABSMや、インドネシアのストリートアートを視覚的に記録し、マッピングするサイトurbancult.netを立ち上げる。
ゲスト講師
ジョー・デイヴィス Joe Davis(アーティスト、哲学者/ハーバード大学医学大学院ジョージ・チャーチ)[アメリカ]
1980年代より分子生物学、生物情報学、宇宙芸術、彫刻などの領域で活動し、バイオテクノロジーを探求。88年に遺伝子組み換えによる世界初の芸術作品《Microvenus》を制作。《Bacterial Radio Project》がアルスエレクトロニカ2012でゴールデン・ニカ賞受賞。その他の代表作に《Mouse Ear》、《RuBisCo Stars》がある。マサチューセッツ工科大学(MIT)高等視覚研究所、同MIT生物学者アレクサンダー・リッチのラボを経て、現在はハーバード大学医学大学院ジョージ・チャーチのラボの特別職「アーティスト・サイエンティスト」に就く。
イオナ・ズール Ionat Zurr(アーティスト、研究者/SymbioticA/西オーストラリア大学)
イオナ・ズールは、1996年よりバイオロジカル・アートのイニシアチブである「Tissue Culture and Art Project(組織培養&アートプロジェクト)」をオロン・カッツ(Oron Catts)とともに結成・活動。急速に成長するバイオロジカル・アートの分野における第一人者であるとともに、実践者、理論家でもある。彼女の研究は、2000年に設置された西オーストラリア大学人間科学部内に設置されたアートリサーチセンター、SymbioticAの発展に貢献。彼女の主な関心事は、変化する生命の知覚と、バイオテクノロジーを用いた生命の異なる勾配との進化関係にある。SymbioticAでアカデミック・プログラムを運営し、同大学のデザイン学部にて教鞭を執る。また、2015年から2020年まで、フィンランドのアールト大学美術・デザイン・建築学部にて客員教授を務める。イギリス・ロンドン生まれ、オーストラリア・パース在住。
SymbioticA公式ウェブサイト http://www.symbiotica.uwa.edu.au/
グンタ・サイフリートゥ Günter Seyfried(アーティスト/pavillon_35/ニューデザイン大学(ザンクト・ペルテン、ウィーン)/ウィーン応用美術大学)
グンタ・サイフリートゥは、ウィーン大学で医学と心理学を修了。ウィーン応用美術大学(デジタルアート学科)を卒業し、ファインアートやデジタルアート、メディアアートと強いつながりを持つ。現在、ザンクト・ペルテンにあるニューデザイン大学 のManual & Material Culture学科およびウィーン応用美術大学のメディア理論学科にて教鞭を執る。 科学と芸術教育を組み合わせ、インディペンデント・アーティストとしてプロジェクトを開発し、国内外の展覧会や出版に参加している。Pavillon_35の創設者のひとり。ウィーン在住。
Polycinease公式ウェブサイト http://polycinease.com/
Pavillion_35公式ウェブサイト http://pavillon35.polycinease.com/
トーマ・ランドラン(バイオハッカー、実業家/Just One Giant Lab/PILI/ラ・パイヤス)
フランス・パリ在住。Just One Giant Lab (JOGL)の共同設立者のひとり。JOGLにて、オープン・サイエンスやレスポンシブル・イノベーション、継続的な学習を通じて、人間(性)の「同期」または重なりを促し、私たちに差し迫る重要な課題を解決しようとしている。また、世界最大のオープンコミュニティ・ラボのひとつである、パリのラ・パイヤスを立ち上げ、6年間にわたり活動。何百人ものチェンジメーカーやインディペンデントの科学者らに無料でリソースとチャンスを提供。さらには、バイオテクノロジーのスタートアップであるPILIの共同設立者のひとりとしても活躍。石油化学染料にかわり、持続可能・再生可能・拡張性の高い代替物をつくりだすため、発酵を利用した天然染料の製造をおこなっている。 近年では、iGEM財団に参加して、どのようにコミュニティが世界にいたして合成生物学を利用してより高い価値や影響を与えられるのかを探求し、新しいプログラムの設計や展開を行っている。
PILI 公式ウェブサイト http://www.pili.bio/
山内 朋樹(庭師/京都教育大学)
専門は美学、庭園論。フランスの庭師、ジル・クレマンを軸に現代ヨーロッパの庭や修景をかたちづくる思想を研究する一方で、広く庭や公園や風景をとりまく実践に関心をもっている。在学中に庭師のアルバイトをはじめ、研究の傍ら独立。京都を中心に関西圏で庭をつくるほか、庭に焦点をあてたインスタレーションやフィールドワークなどをおこなっている。芸術活動に《地衣類の庭》(第8回恵比寿映像祭、2016年)、訳書にジル・クレマン『動いている庭』(みすず書房、2015年)など。京都在住。
山内朋樹 研究実績ウェブサイト http://researchmap.jp/yamauchitomoki/?lang=japanese
イベント詳細
日時 | 2018年2月10日(土曜日)~2月17日(土曜日)[8日間] |
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会場 |
1)Red Bull Studios TOKYO アクセス 2)BioLab Tokyo/FabCafe MTRL アクセス |
参加費 | 無料 |
主催 | 国際交流基金アジアセンター 一般社団法人TodaysArt JAPAN/AACTOKYO |
企画・制作 | BioClub、国際交流基金アジアセンター 一般社団法人TodaysArt JAPAN/AACTOKYO |
特別協力 | デジタル・ショック/アンスティチュ・フランセ東京 |
協力 | オーストリア文化フォーラム・東京 環境省自然環境局 新宿御苑管理事務所 生命美学プラットフォームmetaPhorest(早稲田大学岩崎秀雄研究室) |
助成 | アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団) アメリカ合衆国大使館 |
問合わせ先 | BioCamp Office Eメール: camp@meca.tokyo |