※2021年12月27日追記:アーカイブ映像の公開は終了しました。
多文化共生をテーマに、日本の放送局と東南アジアの制作者が協働してドキュメンタリー作品を制作するプロジェクト、DocCross Asia。このたび、関連のオンラインイベント(ウェビナー)を開催します。
フィリピンのドキュメンタリー映画『Sunday Beauty Queen』。アジアの一ドキュメンタリーがNetflixで配信されるまで成長を遂げた背景には、社会的インパクトと興行的成功の両立を目指し、幅広い層の人々からの理解と支持を獲得しようとする手法とプロセスがありました。またこの作品は、香港で働くフィリピン人家事労働者を取り上げた日本との国際共同制作作品『Sunday Cinderella』が原型となっています。
本ウェビナーでは、ドキュメンタリーという手法に関心を持つサヘル・ローズ氏が、同作品がいかにして支持を獲得していったのか、その過程を監督に聞きます。また、国際共同制作に関わったプロデューサーも加わり、「国際共同制作」や「社会的インパクト」の観点から、さまざまな文化や価値観が共生する多文化共生時代のドキュメンタリーの可能性について考えます。
ウェビナーには、『Sunday Cinderella』(26分日本語字幕付き。DocCross Asiaウェブサイトに移動します)を事前にご視聴のうえご参加ください。
『Sunday Cinderella』あらすじ
19万人のフィリピン人家事労働者が働く香港。日曜日になると、街の広場は休日を楽しむ彼女たちの姿であふれ返る。毎年6月に開催される美人コンテストに向けて、踊りや発表の練習に集まっているのだ。平日の姿から一転、華やかなドレスに身を包む日曜日のシンデレラたち。彼女たちは何を思い、栄冠を目指すのか。フィリピンで大きな社会問題となっているOFW(Overseas Filipino Worker=国外で働くフィリピン人労働者)たちの、たくましくも切ない思いを色鮮やかな映像で描く。
イベント詳細
日時 | 2021年11月3日(水曜日・祝日)14時~16時 |
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登壇者 |
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開催形式 |
Zoomウェビナー(日英同時通訳付き) |
申込方法 | 登録フォームよりお申し込みください。 申込期間 10月18日(月曜日)10時~11月3日(水曜日・祝日)10時 |
主催 | 国際交流基金アジアセンター |
企画・運営 | 株式会社インプレオ(DocCross Asia事務局) |
公式ウェブサイト | DocCross Asia イベントのアーカイブ映像は、後日に上記ウェブサイトよりご視聴いただけます。 |
プログラム
第1部
講演「ドキュメンタリーと社会的インパクト―フィリピン映画の成功例から―」
時間:約40分(+質疑応答15分)
スピーカー:Baby Ruth Villarama
聞き手:サヘル・ローズ
内容:
フィリピンや香港、マレーシアなどで草の根的な上映会を重ね、異例のヒット作となったドキュメンタリー映画『Sunday Beauty Queen』。成功の裏には、これまで両立が難しいとされてきた「社会への働きかけ(Impact)」と「ビジネスとしての配給と興行(Distribution)」を同時に目指す「Impact Distribution(インパクト・ディストリビューション)」* という考え方がありました。Villarama監督はこの考え方を自作にどう生かし、そして作品を観た人々の認識はどのように変わり、どのような社会的インパクトがもたらされたのでしょうか。さまざまな文化や価値観が共生する時代におけるドキュメンタリーの持つ力について、Villarama監督にお話しいただきます。
休憩10分
第2部
トークセッション「新たな視点」から生まれる「多文化共生」―国際共同制作の現場から―
時間:約30分(+質疑応答15分)
スピーカー:Baby Ruth Villarama、牧哲雄、今村研一
聞き手:サヘル・ローズ
内容:
『Sunday Beauty Queen』は、日本との国際共同制作による作品『Sunday Cinderella』(現在DocCross Asia Selectionで配信中)が原型となっています。フィリピン人の監督の企画に経験豊かな日本人プロデューサーが加わることで、フィリピンと日本の視点はどのように交わり、作品にどう影響を与えたのか。アジア各国と日本の国際共同制作を数多く手掛けてきたプロデューサーも加わり、さまざまな視点が交差する国際的な創作活動の醍醐味と難しさを紹介しながら、多文化共生社会への理解を育む上での国際共同制作の役割を考えます。
* 「インパクト・ディストリビューション」とは
これまで両立が難しいとされてきた「興行的成功 (ディストリビューション、Distribution)」と「社会課題の解決 (インパクト、Impact)」を同時に目指す、映画やドキュメンタリー作品の展開戦略。作品を適切な人に適切な方法で届け、社会課題の解決を目指すと同時に商業的リターンを得る手法として、すでにアメリカ、オーストラリア、オランダ、ノルウェーなどで注目、実践されている。最近ではインパクト・ディストリビューションに特化したマーケティングや配給会社も登場し、次々と話題作を生み出している。人々の価値観が多様化する中、多文化共生などさまざまな課題を社会で共有するためのアプローチとして、日本でもこの手法が広がることが期待されている。
登壇者プロフィール
サヘル・ローズ(俳優、国際人権NGO親善大使)
1985年イラン生まれ。幼少時代より孤児院で生活し、7歳の時に養子縁組が成立、8歳の時に養母と共に来日。俳優として活躍する傍ら、国際的人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の親善大使を務め、子どもたちに家族を与えるための活動など、国内外の社会課題に積極的に取り組む。2020年には7年間にわたる密着取材をもとに制作されたドキュメンタリー番組「サヘルの旅~傷(いた)みと生きるということ~」(ETV特集)が話題に。今後はドキュメンタリーの制作にも挑戦したいと考えている。
Baby Ruth Villarama(『Sunday Cinderella』監督)
イギリスのバーミンガムシティ大学にて映画配給とマーケティングの修士号取得。フィリピンのテレビ局ABS-CBN、ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルやCNNフィリピンなどで活躍後、2007年に『Little Fame』で監督デビュー。2016年に香港で働くフィリピン人女性の境遇を描いた『Sunday Beauty Queen』がメトロマニラ映画祭で最優秀作品賞受賞。2018年、映画を通じて移民に関する国民的な議論を促し国の政策に影響を与えたとして英国グローバル・アルムナイ・ソーシャル・インパクト賞受賞。2021年8月よりNetflix Philippinesにて『Sunday Beauty Queen』配信開始。
牧哲雄(株式会社ドキュメンタリージャパン取締役、『Sunday Cinderella』共同プロデューサー)
1981年にテレビ制作会社「ドキュメンタリージャパン」を共同設立、数多くのドキュメンタリー番組を制作。1991年にはATP(全日本テレビ番組製作者連盟)グランプリ受賞。2002年より代表取締役を10年間務める。全日本テレビ番組製作社連盟の執行理事としてコンテンツの国際展開や国際共同制作の推進などに努める。2015年に共同プロデューサーとして『Sunday Cinderella』の制作に参加。
今村研一(株式会社NHKエンタープライズ国際部エグゼクティブ・プロデューサー、TokyoDocsアドバイザー)
1983年に日本放送協会(NHK)入局。主に報道系のディレクター、プロデューサーとしてニュース番組やドキュメンタリー制作に関わる。2009年からは『BS世界のドキュメンタリー』を担当しドキュメンタリーの国際共同制作を積極的に行う。現在は株式会社NHKエンタープライズのエグゼクティブ・プロデューサーとして、NHK WORLD-JAPANの番組を主に担当しアジアの監督とドキュメンタリー制作を手掛ける。また、国際共同制作を支援するイベントであるTokyo Docsのアドバイザーを務め、海外のドキュメンタリー祭にも多く参加。