トークイベントの抄録を公開しました。
「Bordering Practice」と「Imaginary Line」――交錯するアジアのエレクトロニックミュージックシーン
アジアにおけるエレクトロニックミュージックをめぐるプロジェクト、ついに完結。
国際協働制作によるオリジナル楽曲・MVの発表と、ライブコンサートを開催。
国際交流基金アジアセンターでは、2016年より、テクノロジーによる創造活動と、アジアにおけるアーティスト同士の協働が活性化しているエレクトロニックミュージックの分野に焦点を当て、クリエイティブ分野を担う次世代の交流を促すプロジェクトを展開してきました。
2019年8月、これまで培ってきたネットワークをさらに発展させた、プロジェクトの最後を飾るライブコンサート「Imaginary Line」を開催します。公演の翌日には、4年間に渡る本プロジェクトの活動を紹介するトークイベントも開催します。
本プロジェクトは、2016年、欧米・アジアにある市場・表現・文化の相互影響とネットワーク社会によって流動化するアジアの文化状況を捉えるべく、「Liquid Asian Pop Scene」をテーマに、トークやライブを開催しました。2017年からは、それぞれのコミュニティの特異性や共通性を確認・共有するために、アジアの同時代の文化状況に対して境界(Border)を意図的に引く「Bordering Practice」をテーマに、活動を展開しました。それぞれの地域やコミュニティの状況にあわせて編成した様々なプログラムにより段階的・継続的に展開してきた本プロジェクトには、これまtableでに7か国28組のアーティストやディレクターが参加し、東京、マニラ、ジャカルタ、ホーチミン、ハノイで公演等を実現しています。さらに、2018年には、本プロジェクトで培ったネットワークをさらに発展させ、マニラ、ジャカルタ、東京の音楽家による楽曲の国際協働制作をスタートしました。
プロジェクトの最終年となる2019年は、「Bordering Practice」で意識された境界(Border)を超え、アジアの次世代のアーティストやディレクターが自らネットワークを繋ぎ合わせ、地理を超えたグローバル/ローカルな今日的なシーンを見出すことを目指します。様々な都市の音楽家と映像作家、美術作家が参加し、国際協働制作による3作品のミュージックビデオをオンラインで発表、さらに東京にてプロジェクト最後となるライブ公演を開催します。
これまでの「交流」「共有」「協働」をさらに広げながら、実際に音楽・映像を「創造」し、発信することを通して、アジアにおける次世代のアーティスト同士の協働モデルを作り、本プロジェクトを締めくくります。
Imaginary Lineとは
インターネットの普及に伴い、急速に変化する音楽シーン。制作環境の刷新、視聴環境の変化、そしてSNSによるボトムアップなシーンの形成は、インターネットを通じた新たな音楽文化と、国や地域を越えた文化の相互影響を生み出しています。一方、制作や視聴の方法が多様化する反面、資本の流入とサービスの整備により表現の画一化も生まれています。こうした状況は、音楽だけに限らず、いま、様々な表現分野に立ち現われていると言えるかもしれません。本プロジェクトは、こうしたインターネットの普及以降にある表現と文化の状況に注目し、アジアの各都市にあるローカルなレーベルをつなぎあわせ、新たなシーン(表現が生まれる環境)を形成していく試みです。
映画のシーン撮影で用いられる用語「Imaginary Line(想定線)」をテーマにした今回のプログラムでは、個人同士の関係性、未来に向けた進行方向に対し線を引く、また、現在の文化状況に対して自らのシーンを創りだすための想定的・仮想的な線を引くという意図が込められています。
プログラム・ディレクター
tomad(オーガナイザー、DJ/Maltine Records主宰)[日本]
イベント詳細
ライブコンサート
日時 | 2019年8月24日(土曜日) 午後5時から午後11時 |
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会場 | |
チケット料金 | 税込 前売:一般3,000円、20歳以下:1,800円、当日:3,400円 (別途1ドリンク600円) |
チケット 購入方法 |
CIRCUS Tokyo公式webサイトよりお申し込みください。 |
出演者 |
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演出 | huez(空間演出ユニット、VJユニット)[日本] |
主催 | 国際交流基金アジアセンター |
問合せ | 国際交流基金アジアセンター 文化事業第1チーム(担当:鹿島、廣田) TEL:03-5369-6140 |
トークイベント
日時 | 2019年8月25日(日曜日) 午後5時から午後7時 |
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会場 | |
入場 | 無料 |
内容 | 2016年にスタートした本プロジェクトには、これまで7か国30組のアーティストやディレクターが参加し、東京、マニラ、ジャカルタ、ホーチミン、ハノイで公演等を実現してきました。本トークイベントでは、本プロジェクトのこれまでの活動と、国際協働制作による楽曲・映像作品を紹介します。アジアの様々な都市のアーティストを交え、エレクトロニックミュージックを巡る次世代のネットワークの状況と、今後の展望について語ります。 |
登壇者 |
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「Bordering Practice」発表作品(楽曲)
PARKGOLF
similarobjects
Mantra Vutura
「Imaginary Line」発表作品(映像)
PARKGOLF(ビートメイカー、音楽プロデューサー)[日本]×Reinhard Samuel Maychaelson Gunawan(映像作家)[インドネシア]
PARKGOLF「Leap (feat. Mantra Vutura & similarobjects)」
Tohji(ラッパー)[日本]×AntiAntiArt(映像制作グループ)[ベトナム]
Tohji「HI-CHEW」
similarobjects(サウンドアーティスト、DJ/BuwanBuwan Collective主宰)[フィリピン]×菅原玄奨(美術家、彫刻家)[日本]
similarobjects「Someone」
プログラム・ディレクタープロフィール
tomad(オーガナイザー、DJ/Maltine Records主宰)[日本]
2005年、当時15歳でインターネットレーベル「Maltine Records」を開始。これまでに170タイトルをリリース。国内外のメディアにて紹介され、ダンスポップミュージックの新しいシーンと、東京の同時代のイメージを象徴する存在として注目される。これまでにマニラや中国、ニューヨークでイベントを開催。海外アーティストの楽曲リリースも多数。15年には設立10周年を記念し、レーベルの活動をまとめた『Maltine Book』(スイッチパブリッシング)を刊行。
Maltine Records 公式Webサイト
出演アーティストプロフィール
Astronormous(音楽プロデューサー、DJ)[ベトナム]
ホーチミンを拠点に2015年に結成された兄弟デュオ。電子音響やデジタル技術を用いて幅広いジャンルの楽曲を生み出している。メンバーの映像制作の経験を生かした音響と映像を駆使した独自の発表スタイルは、ベトナムの音楽シーンで注目を集めている。特に、PHIMと提携して制作した「Yeu 1985」「LOVe」等のミュージックビデオが人気。音楽への情熱を共有する二人は、できるだけ多くの人々にその楽曲を届け、リスターに心地よい雰囲気をもたらすことを目指している。
Astronormous SoundCloudアカウント
Mantra Vutura(ミュージシャン)[インドネシア]
キーボードのTristanとパーカッションのZakiによる音楽ユニット。小学校の同級生でもある息の揃った二人の精力的な音楽活動は、インドネシアのエレクトロニックミュージックシーンに新たな表現をもたらしている。「Mantra」は、インドネシア語で呪文や魅惑を意味し、インドネシア古来の表現や伝統的な詠唱、打楽器による表現を示す。また、「Vutura」は未来という言葉から派生した語。これらを組み合わせたユニット名は、彼らの音楽表現にある2つ方向性を示している。同時に、彼らの独自の表現がエレクトロニックミュージックにもたらす未来への展望を表している。
Mantra Vutura 公式Webサイト
PARKGOLF(ビートメイカー、音楽プロデューサー)[日本]
北海道札幌市出身。2013年にネットレーベル「Maltine Records」からのリリースで注目を集める。15年にSeiho主宰のDay Tripper Recordsより1stアルバム『Par』をリリース。自身初となる配信曲「KissMe」はiTunesのエレクトロニックチャートで1位を獲得。以降、tofubeatsや藤井隆らのリミックスを手掛け、DAOKOのメジャーデビュー作ではプロデュースを務めるなど幅広い活動を展開。17年には2ndアルバム『REO』をリリース。18年には韓国のラッパー・Jvcki Waiとのコラボレーションシングル「xaradise」を発表。ゲスの極み乙女。、唾奇のリミックスやchelmico、あっこゴリラなど数多くのアーティストに楽曲提供も行う。
PARKGOLF SoundCloudアカウント
similarobjects(サウンドアーティスト、DJ/Buwan Buwan Collective主宰)[フィリピン]
マニラを拠点に、音楽制作の教育に携わり、プロデューサーとしても活動。古来から現在まで、そして忘却されつつある文化を見通す視点、さらには複数のジャンルや技法を使うポリスタイリズムやスピリチュアリティ、密教から独自の表現を追求する。さらにはビデオゲームとアートの交錯を聴覚的に表現しようと試行している。そのサウンドスケープは、現代の混沌と自然との間にある様々な変化をも表す。デラサール大学聖ベニルデ校の音楽制作プログラムの教員として教鞭をとる一方、電子音楽の学校「Cosmic Sonic Arts」を開設し、音楽を創造するための精神的なアプローチを次世代に伝えている。
similarobjects 公式Webサイト
Tohji(ラッパー)[日本]
ロンドンで生まれ、東京、横浜で育つ。ハードとメロウを併せもつ奔放な音楽性が、東京のユースを中心に熱狂的な支持を集める新鋭アーティスト。2018年末、主催するコレクティブ「Mall Boyz」としてEPを発表。収録楽曲がストリーミングプラットフォームの公式プレイリストに多数ピックアップされた。2019年にリリースしたシングル 「Rodeo」がSoundCloud Japan All genre music chartで1位を獲得。同年3月には渋谷WWWで「Platina Ade」を主催。550人のオーディエンスを動員し、動員記録を更新。直後にリリースした「on my own way」もSoundCloudチャートを席巻した。いま、同世代で最も注目を集める存在として、シーンを問わず次の動きが期待されている。
Tohji SoundCloudアカウント
Tomggg(トラックメイカー、音楽プロデューサー)[日本]
1988年生まれ、国立音楽大学大学院作曲専攻修了。劇的な展開とキラキラした音を駆使し、ものすごく楽しくなる楽曲を得意とする。SoundCloudと、Maltine Records等のネットレーベルで継続的に楽曲を発表し、2015年には「Butter Sugar Cream」を、16年には「Art Nature」をCDとオンラインで発表。 Ryan HemsworthやSlow Magic等の海外のアーティストとのコラボレーションも多数。歌手のプロデュース、アイドルの楽曲のリミックス、広告の楽曲制作なども手掛け、ジャンルや国を飛び越えた活動を行っている。
Tomggg 公式Webサイト
TORIENA(サウンドアーティスト、MADMILKY RECORDS主宰)[日本]
ゲームボーイ実機とDTM(Little Sound Dj)を駆使し、チップチューンというジャンルの音楽を製作するアーティスト。2012年から作曲とライブ活動を開始し、日本初のチップチューン専門レーベル「MADMILKY RECORDS」を主宰。サウンド(作詞・作曲・編曲)とアートイメージ(イラスト・デザイン)を全て自らで手がけるセルフプロデュースで活動し、ポップでハードなサウンドと、激しいパフォーマンススタイルが特徴。Square Sounds Melbourne 2015(オーストラリア)やLucca Comics & Games 2015(イタリア)にも出演し、2015年にはヨーロッパ4公演のツアーを行うなど、海外でも勢力的に活動。コナミ社、カプコン社の音楽ゲームにも楽曲提供などを行っている。
TORIENA 公式Webサイト
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