国際交流基金アジアセンターでは、2017年度より、アジアにおけるメディア文化を牽引する新たなプラットフォームの醸成を目指し、ASEAN諸国で実施されているフェスティバル等と協働し、展覧会や音楽イベントを展開するとともに、東京において国際シンポジウムや展覧会、人材育成事業を実施しています。昨年度のフィリピン・マニラ「WSK―The Festival of Recently Possible」との協働事業に続き、2018年8月にはインドネシア・ジョグジャカルタ「Indonesian Netaudio Festival 2018―Sharing Over Netizen Explosion」において国際交流基金アジアセンター主催の展覧会と音楽プログラムを開催します。
企画展「Internet of (No)Things―遍在するネットワークと芸術の介入」
会期 | 2018年8月18日(土曜日)から28日(火曜日)午前11時から午後8時 |
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会場 |
Jogja National Museum アクセス |
出展作家 | [日本]エキソニモ、須藤絢乃、長谷川愛、三原聡一郎+斉田一樹、Arief Budiman、[インドネシア]Abi Rama、Mira Rizki、Igor Tamerlan、Tromarama |
キュレーター | Riar Rizaldi |
主催 | 国際交流基金アジアセンター |
企画制作 | Indonesian Netaudio Festival |
公式Webサイト | Indonesia Netaudio Festival 3 (English) |
関連イベント
- ギャラリートーク:三原聡一郎+斉田一樹&Mira Rizki
日時:8月19日(日曜日)午前11時から
会場:Jogja National Museum - アーティストトーク:長谷川愛&Abi Rama
日時:8月20日(月曜日)午後4時から
会場:Kunci Cultural Studies Center - アーティストトーク:須藤絢乃&Tromarama
日時:8月20日(月曜日)午後7時から
会場:Ruang MES 56
本展によせて<抜粋>
Riar Rizaldi(本展キュレーター)
情報は、どこにでも、いつでも、場所と状況にふさわしいかたちで届くようになった。私たちは、ようやく情報技術のたくさんの恩恵を受けるようになった一方で、その身体は、技術の過剰な消費へと向かいつつある。携帯電話やインターネットなどのネットワーク技術は、情報交換のための世界最大の共有プラットフォームとなり、強力な情報科学はすでに私たちの生活を具現している。同時に、ネットワーク技術は、私たちがテキスト・言葉・視覚を通じてコミュニケーションをする方法に影響をもたらしていく。さらには、現在にある様々な仕組み――芸術、映画、バイオテクノロジー、電子政府、プラットフォーム資本主義――を再構築していく。人間の文化活動に常に関わるものとなったネットワーク技術とそのインフラストラクチャーに、いま、私たちはいかなる課題を生み出すことができるだろうか?
私たちはオンラインとオフラインの境界をあいまいにする転換点をいくつも過ぎてきた。プライバシーという概念も、いずれは過去のものだとみとめざるを得ないだろう。一方で、インターネット上の電子掲示板からやってくる情報の流入は、視覚言語の新しいかたちをつくっていく。また、Facebook上にはポスト・トゥルースを標榜する議論がはびこっていく。こうした状況のなかで、「Internet of (No)Things――遍在するネットワークと芸術の介入」展では、ネットワーク技術の遍在性を批判的に検証するための芸術実践と美学的な可能性を探求したい。
観客は、本展のアーティストによる作品や表現による介入を通じ、文化活動に関わるネットワーク技術がもたらす新たな機会や課題に出会うだろう。一方で、この展覧会は、「インターネット・オブ・シングス(IoT)」という専門用語を言い換え、批判的考察を提示する。
――インターネットの力はすでに私たちのどんな活動にも及んでいて、実際には意識されないものになっている。誰もそのメカニズムを気にすることはない。それはただ作動する。それはモノになり、空気になり、空間になる。インターネットにはもはや何も存在しない。
キュレータープロフィール
人間とテクノロジーの関係、メディアと家庭用電子機器の関係、イメージの流通とネットワークの介入の関係に関心をもつ。アーティストとしても活動し、作品を通じ、(無)時間の観念やイメージの政治、セオリー・フィクション、潜在性、メディア考古学、テクノロジーが人間の生活にもたらす思いがけない帰結などを問いなおす。また、フィールドレコーディングやプログラミングによる擬音制作を駆使して作曲、パフォーマンスも行う。2017年にはARKIPEL – Jakarta International Documentary and Experimental Film Festivaでキュレーションを務める。バンドゥンにあるアートコレクティブ、SALONの共同設立者。現在は香港城市大学クリエイティブメディア学部博士課程在籍。
出展作家プロフィール
千房けん輔と赤岩やえによるアートユニット。1996年にインターネット上で活動を開始し、以降、インターネットと現実空間、デジタルとアナログを自由に行き来しながら、ユーモアのある切り口と新しい視点を携えたプロジェクトを数多く手がけている。2006年「The Road Movie」がアルス・エレクトロニカでゴールデン・ニカ賞を受賞。2012年に組織したIDPWによるイベント「インターネットヤミ市」は、世界約20都市で開催されている。2015年、拠点をニューヨークに移し、NEW INCのメンバーなどを経て、現在活動の領域を拡大中。
被写体の性別を超えた変身願望や理想像を写真に納め、少女マンガのカラー原稿と写真の狭間にあるような平面作品を発表。2011年ミオ写真奨励賞2010にて森村泰昌賞受賞。国内外のフェアでも精力的に作品を発表し、同年10月に台湾、1839當代藝廊(台北市)で初個展。2014年、実在する行方不明の少女たちに自ら扮したシリーズ「幻影Gespenster」でキヤノン写真新世紀グランプリを受賞。アーティストとして国内外の展覧会、アートフェアで展示するほか、フォトグラファーとして各種雑誌等で活動中。2018年10月には東京都写真美術館のグループ展「愛について アジアン・コンテンポラリー」に出展。
アーティスト、デザイナー。バイオアートやスペキュラティブ・デザイン、デザイン・フィクション等の手法によって、テクノロジーと人がかかわる問題にコンセプトを置いた作品を発表。 岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]卒業後に渡英。2012年英国Royal College of ArtにてMA修士取得。2014年から2016年秋までMIT Media Labにて研究員、MS修士取得。2017年4月から東京大学特任研究員。「(不)可能な子供/ (im)possible baby」が第19回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞。森美術館、アルス・エレクトロニカ等、国内外で多数展示。
世界に対して開かれたシステムを「芸術」として提示し、音、泡、放射線、虹、微生物、苔、電子、気流、土などの物質や現象の「芸術」への読みかえを試みている。2011年より、テクノロジーと社会との関係性を考察する「 [blank] project」を国内外で展開。北極圏から熱帯雨林、軍事境界からバイオアートラボといった、アートの実践の場から極限環境に至る場で、これまでに計8カ国10箇所で滞在制作を実施。近年の主な個展に「空白に満ちた場所」(クンストラウム・クロイツベルク/ベタニエン、ドイツ、2013/京都芸術センター、2016)。主な受賞にアルス・エレクトロニカ、トランスメディアーレ、文化庁メディア芸術祭など。
電子楽器製作者、プログラマー。匿名組織木下研究所客員所長。東北大学工学部、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]スタジオ2修了。在学中より、三原聡一郎らとサウンドインスタレーション「moids」の制作をはじめる。現在はエンジニアとして楽器製作会社に勤務する傍ら、「ブレッドボードバンド」「車輪の再発明プロジェクト」などの自作電子楽器製作・演奏ユニットとしても活動。シンセサイザーや電子工作についての書籍の監訳も行なっている。
Arief Budiman
西ジャワ州の都市デポックで生まれ、現在はインドネシア芸術大学ジョグジャカルタ校に勤務しながら映画について学んでいる。作品の中心的存在として映像メディアを扱う。新しい映像のあり方を探求する一方、ライフスタイル、現代社会における人々の振る舞いにあるさまざまな課題、インターネットの力とその作品への応用にも関心をもつ。オーディオビジュアル作品の制作と映像技法の開発に取りくむコレクティブPiring Tirbingのメンバーでもある。
ジャカルタを拠点に活動するヴィジュアルアーティスト。漫画や絵画を描くだけでなく、デジタルテクノロジーの探求、電子音楽の制作、ソーシャルメディアやマルチメディアによるパフォーマンスを続けている。2017年にイギリス、ブライトンでBlast Theoryレジデンシープログラムに参加。テクノロジー、視覚文化、都市文化をめぐる実験や探求のためのスペースとアーティストイニシアティブKlub Karya Bulu Tangkisの設立者でもある。
音や音によるインタラクションを探求するメディアアーティスト。バンドゥン工科大学在学中に活動をはじめ、音響に対する感受性を頼りに、環境とのインタラクションを通じた音づくりの可能性を追求する。また、音づくりのプロセスを提示し、観客の参加をうながすサウンドインスタレーション作品や作曲作品を発表。人々に、多様な音のありかたにふれさせ、意識させることを目指し、日常生活で経験するインタラクションのひとつである「遊び」の要素を取りいれた作品も試みる。エクスペリメンタルバンドKonstipasiのメンバーでもある。
ミュージシャン、環境活動家、3Dビデオアーティスト。90年代に発表された楽曲「Bali Vanili」のほか、当時、音楽業界の不当な扱いに対して提起したミュージシャンとしても知られる。90年代後半にはTeknogong名義でも電子音楽を制作している。さらに、ほとんどの映像作品をYouTubeなどの動画プラットフォームを通じて発表。不気味なアニメーション作品は現在のインドネシアの社会、文化状況を痛烈に風刺し、同時にエコロジーや未来をめぐる力強い主張を訴える。2018年1月、ジョグジャカルタにて逝去。現在もなお明確なビジョンを語るアーティストとして語り継がれている。
Febie Babyrose、Herbert Hans、Ruddy Hatumenaが2006年に設立したインドネシアのアートコレクティブ。Tromaramaのプロジェクトは、「デジタル時代のハイパーリアリティ」という発想にもとづいて、視覚世界と物質世界の相互関係を探求する。ビデオ、インスタレーション、コンピュータプログラミング、観客の参加を組みあわせた作品は、周囲の環境に対する社会の認識に潜むデジタルメディアの影響を描きだす。
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