ASIA center | JAPAN FOUNDATION

国際交流基金アジアセンターは国の枠を超えて、
心と心がふれあう文化交流事業を行い、アジアの豊かな未来を創造します。

MENU

オンライン・アジアセンター寺子屋第1回――コロナの時代でも国境を越えて人は繋がる ~新しいかたちの国際文化接触の可能性~

Report / Asia Hundreds

アジア・ハンドレッズのロゴ
ASIA HUNDREDS(アジア・ハンドレッズ)」は、国際交流基金アジアセンターの文化事業に参画するアーティストなどのプロフェッショナルを、インタビューや講演会を通して紹介するシリーズです。 文化・芸術のキーパーソンたちのことばを日英両言語で発信し、アジアの「いま」をアーカイブすることで、アジア域内における文化交流の更なる活性化を目指しています。

人々の生活を一変させた新型コロナウイルス。未知の伝染病ということで、ただ恟々と感染の広がりを見つめながら自粛を続けていた初期段階は終わり、徐々にその特性、傾向などが明らかになってきた今日ではこの新しいコロナの時代をどのように暮らしていくのか、ウィズ・コロナの世界に適したニュー・ノーマルのあり方を積極的に模索する段階へと移行しつつある。
そこで、国や自治体が定めた新型コロナウイルス感染症対策を十分に踏まえた上での舞台上演が始まる一方で、多くのアーティストがコロナを機に着手したのがオンラインによる情報発信、作品発表だ。

国際交流基金アジアセンターでもオンラインでのセミナーシリーズを7月から開始。その第1回目となる本セミナーでは芸術、文化の、とりわけ国際交流のフィールドで日々成果をあげている4人の登壇者を迎え、世界に拡散するパンデミックにより国境が封鎖され、芸術、文化施設が活動を休止して、アーティストたちが発表の場を失う中での国際交流活動のあり方、新しい芸術活動の可能性についての意見交換を行った。

コロナ禍における国際交流の現場での変化について

文化政策に関する調査研究を行なっているニッセイ基礎研究所・研究理事の吉本光宏氏からは、自身が2012年より名を連ねているWorld Cities Culture Forum(WCCF)の現況報告から見解が述べられた。例年ならば、世界全域に広がる43の会員都市の持ち回りで年1回のフォーラムが実施され、そこで時代に即した都市における文化政策の重要性などについて話し合いが持たれてきたのだが、2020年度はコロナの影響から来年以降への延期が発表された。そんな状況下、Justine Simons理事長の「今だからこそ各都市の情報をシェアすることが必要」との呼びかけに応え、3月末から3週に1回ほどの頻度でのZoomミーティングが始まったと話す。コロナ事情による想定外のZoomミーティングだったが、吉本氏は「定期的にオンラインで会議をすることでWCCFのプラットフォームの機能が逆に強化され、より親密になったと感じた」と、意外な効能があったと振り返る。さらに、このオンライン交流の場にはバーチャルやオンライン、そしてその対極のリアルな対面との間に位置する新たな「オンラインリアル」というものがあるようだとして、今後これを発展させ便利に使いこなすことで、オンラインでの国を超えた会議、教育などが新たな通常形式として定着していくだろうと予想している。また、オンラインで大方の事が済んでしまうとなれば、必然的に今度は人が会して行うリアルな対面での国際交流にはどんな特別な意義があるのかが厳しく問われていくことになるであろう、とも話す。

一方、このようなコロナに伴う変化を文化・芸術の場、劇場や美術館にあてはめた場合、そこにはアーティストたちの創意工夫が必要になってくる、と吉本氏は言う。
「満席にしてはいけない劇場でどのような作品が生まれるのか。アーティストならではのアプローチ、オンラインリアルでなければ出来ないような表現形態、コロナ時代の価値観を転換するような作品が出てくることを期待しています」
オンライン交流が普及していく過程でその技術開発に拍車がかかるように、オンラインリアルでの芸術、演劇の質が向上していくのは明らか。事実、世界ではすでにそれを見据えた新しい芸術運動が始まっているようだ、と結んだ。

話をする吉本光宏氏の写真

世界各地で活動するブリティッシュ・カウンシルが始めた実際の取り組みとは

世界100か国以上に拠点を持ち、文化芸術、教育、英語を通して英国とその他の国との繋がりを図り、文化交流を行なっているブリティッシュ・カウンシル・アーツ部長の湯浅真奈美氏は、コロナ禍での様々なイベントの中止を受け、英国本部やアジア諸国の同僚と協議を重ねた結果、速やかにウィズ・コロナ対応へと移行、これまでの対面スタイルからオンラインで繋がるやり方へと順次切り替えを進めていると話す。その例として、自宅で英語学習が出来るオンライン教材の紹介、オンラインでの英国の最新音楽や文化の発信などを挙げた。また、以前は人が出向いて行っていたフォーラムやイベントをウェビナーで開催した結果、ロックダウン状態の地域からも参加が可能となり、3000人を超える参加者を集めたという例を紹介した。そんな試みの一つとして6月に行ったZoomでのオンライン討論会では21か国からの参加があり、場所や時間に縛られることない国を超えたネットワークを構築できる新しい可能性を感じている、と湯浅氏は話す。「討論会だけでなく、オンラインを使って英国と日本のアート関係者がコラボレーションをしたり、意見交換をしたり出来るようになればと検討を進めています」とオンラインの有効活用に意欲をみせている。

Zoom討論会のイメージ画像
話をする湯浅真奈美氏の写真