オムニバスを通しての国際交流の意義
石坂:オムニバスというのはバラバラに撮って単に繋げるという作り方もありますが、本作は三監督が打合せを重ねて、3本をどこかでリンクさせるという意識を持ちながらそれぞれの現場で別々に作られました。そのリンクの一つとして、ニコラス・サプットゥラさんが3作全てに出演しており、三監督が特別意識していたか分かりませんが、彼が一種の触媒になっているのが結果的に面白かったです。
エドウィン:彼の存在は、映画の色々な世界観や作り手の役割を象徴的に繋げていると思います。『海』の彼は、母娘の置かれている状況に対するコメンタリーという感じで、『碧朱』の中では疑問を呈すというか、混乱を呼ぶ“第三の変数”の役割をしています。ですから彼は感情をリンクする存在であると同時に、この文脈での彼の登場は、映画そのものがとても美しく有機的なものであることを象徴していると思います。
デグナー:私も、本作は結果的に有機的な作品になったと思います。私は脚本を最初に書き上げましたが、プロデューサーからこうしろ、これはできないという反応は全くなく、実際に他の監督に会ったときも、ミーティングという形で詳細を話し合うのではなく、お互いのことを理解し合うことが主でした。だからそれがとても有機的に起こったのだと思いますし、自分自身、期待した結果が得られました。意図していなくても、お互いがお互いの鏡になっているのです。
石坂:松永監督は、このような国際交流プロジェクトの意義をどう感じていますか?
松永:私は、両監督の物事に対する非常に真摯な見方についてまず共感しましたし、それぞれ国の映画産業や状況も異なるけれども、同じように一つの物事を真面目に見て、それぞれのアプローチで物を作ることに対して、すごくワクワクしました。同じアジアの中で生きていながら、一つのものを作るときにはいろんなアプローチがあることの意義というのがすごく大きかったですね。
観客とのQ&A
観客:私は映画監督を目指す高校生ですが、映画監督になるためには、人としてどのようなことが求められると思いますか?
デグナー:私自身はとても孤独で、一人で色々やるタイプなので、ほかの監督は分かりませんが、私にとって映画作りというのは、自分の深層心理を探求し、表現する手段です。もちろん他の人とコミュニケーションを取るとか、他の人を理解するということもありますが、やはり自分の一番奥深くにある感情を吐露し、投影するものなので、私にとってはそういう表現が監督として必要なことだと思います。
エドウィン:私自身も良い監督になるために、学び、努力している最中ですが、「なぜ映画を作るのか」「監督として必要なことは何か」と聞かれるたびに言えるのは一つ、「愛」です。映画に対する愛であると同時に、自分自身、家族や友人への愛です。やっぱり愛に関する映画というのは非常に複雑ですが、それは正直さ、真摯な気持ちによって実現するのではないかと思います。
【2018年10月27日、於:六本木アカデミーヒルズ タワーホール】
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