『サタンジャワ』 サイレント映画+立体音響コンサート/響きあうアジア2019

日本

Photo (C) Erik Wirasakti

2019年11月5日 佐々木敦氏による「響きあうアジア2019」の総評を公開しました。
佐々木敦――誠実な野心に支えられた祭典「響きあうアジア2019」

2019年9月19日 開催レポートを公開しました
「『サタンジャワ』 サイレント映画+立体音響コンサート/響きあうアジア2019」を開催しました

【チケット情報】

14時の回
7月2日公演当日は、当日券を若干枚販売します。13時15分より販売開始しますので、直接有楽町朝日ホールにご来場ください。

19時の回
チケットは全席完売です。当日券の販売はございません。

※本公演は全席自由席です。開場及び入場受付は開演30分前となります。
※会場の都合上、お待ちいただくスペースが限られます。
※他施設へのご迷惑ともなりますため、早い時間からのご来場はご遠慮ください。

インドネシア映画の巨匠ガリン・ヌグロホ監督とサウンドデザイナー森永泰弘氏による映像と3D音響の響宴

「響きあうアジア2019」プログラムの一つとして、国際交流基金アジアセンターと公益財団法人ユニジャパンの共催で、映画『サタンジャワ』の立体音響による一日限りのライブコンサート上映を行います。

『サタンジャワ』とは、ガリン・ヌグロホ監督による「エクスパンデッド・シネマ(拡張映画)」のコンセプトの元、生演奏付きで上映するために作られたサイレント映画です。2017年2月のオーストラリア・メルボルンでの海外初公演を皮切りに、シンガポール、アムステルダム、ベルリンといった世界各都市で、その地の楽団とのコラボレーションによる公演を成功させてきました。いよいよこの夏、この日本公演のために全編新しく制作された音楽・音響と融合させ、サウンドデザイナー・森永泰弘と、「水曜日のカンパネラ」として個性的かつ実験的な音楽活動を展開するコムアイとの共演により、立体音響コンサート版を初披露します。

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『サタンジャワ』サイレント映画+立体音響コンサートのチラシ

イベント詳細

日時 2019年7月2日(火曜日) 14時 開演/19時 開演 (2回公演、各回30分前開場)
※ポストパフォーマンストーク有
上映作品 『サタンジャワ』SETAN JAWA/2016年/70分/モノクロ/サイレント
映画監督 ガリン・ヌグロホ
音楽・音響
デザイン
森永泰弘
舞台出演 コムアイ(水曜日のカンパネラ)、日本・インドネシア特別編成音楽アンサンブルほか
会場

有楽町朝日ホール アクセス
〒100-0006 東京都千代田区有楽町2-5-1有楽町マリオン11F Googlemap

JR有楽町駅中央口/東京メトロ有楽町駅D7出口/東京メトロ銀座駅(丸ノ内線・銀座線・日比谷線)C4出口 徒歩2分

チケット発売日 4月13日(土曜日)10時発売
チケット取扱い

チケットぴあ(Pコード:148522)
http://t.pia.jp
TEL:0570-02-9999

e+(イープラス)
http://eplus.jp

Peatix(ピーティックス)
https://setanjawa.peatix.com

※未就学児のお子様の同伴、入場はご遠慮ください。
※やむを得ない事情により、プログラムや出演者が一部変更になる場合がございます。
※車イス等でお越しの方は事前にTel. 03-6804-7490(オカムラ&カンパニー)までご連絡ください。

料金 前売一般:3,000円 当日一般:3,500円 25歳以下:2,000円(当日要証明書)(税込)
主催 国際交流基金アジアセンター
共催 公益財団法人ユニジャパン
特別協賛 ガルーダ・インドネシア航空
後援 駐日インドネシア大使館
音楽・音響製作 concrete
制作 (株)オカムラ&カンパニー
問合せ オカムラ&カンパニー内 サタンジャワ事務局
TEL: 03-6804-7490 Email:contact@setanjawa.jp

映画『サタンジャワ』クレジット

映画製作 Garin Nugroho Workshop, Turning World
共同製作 AsiaTOPA - Arts Centre Melbourne, Melbourne Symphony Orchestra, Esplanade Theatres on the Bay, Singapore

プロフィール

【監督】ガリン・ヌグロホ Garin Nugroho

ガリン・ヌグロホ監督の写真
(C)佐藤基

1961年、インドネシア、ジョグジャカルタ生まれ。90年代インドネシア映画新世代のパイオニアとして その名が知られる。監督作はカンヌ、ヴェネチア、ベルリンをはじめとする数多くの映画祭で上映され、多数の映画賞に輝いた。映画評論家、ドキュメンタリー監督として映画業界に入りインドネシアの社会問題、文化、政治をテーマに選んできた。映画以外にも演劇や美術インスタレーションも手がけるほか、2005年にはジョグジャNETPACアジアン映画祭を創設した。最新作『Memories of My Body』 は2018年ヴェネチア映画祭でプレミア上映された。

ガリン・ヌグロホ――挑戦するシネアスト、飽くなきインスピレーションに導かれて

【音楽・音響デザイン】森永泰弘 Yasuhiro Morinaga

森永氏の写真
(C)Takashi Arai

東京藝術大学大学院を経て渡仏。帰国後は芸術・音楽人類学的な視座から世界各地をフィールドワークし、楽器や歌の初源、儀礼や祭祀のサウンドスケープ、都市や集落の環境音をフィールドレコーティングして音源や作品を発表している。また、映画・舞台芸術・展示作品等のサウンドデザインや音楽ディレクションを中心に、企業やアーティストとコラボレーションを行うconcreteを設立し、国内外で活動している。これまで世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭、ベルリン国際映画祭) で自身が関わった作品等が発表されている。

www.the-concrete.org

【舞台出演】コムアイ KOM_I

コムアイ KOM_I氏の写真

アーティスト。1992年生まれ、神奈川育ち。
ホームパーティで勧誘を受け歌い始める。
「水曜日のカンパネラ」のボーカルとして、国内だけでなく世界中のフェスに出演、ツアーを廻る。その土地や人々と呼応して創り上げるライブパフォーマンスは必見。好きな音楽は民族音楽とテクノ。好きな食べ物は南インド料理と果物味のガム。音楽活動の他にも、モデルや役者など様々なジャンルで活躍。2019年4月3日、屋久島とのコラボレーションをもとにプロデューサーにオオルタイチを迎えて制作した新EP「YAKUSHIMA TREASURE」をリリース。

www.wed-camp.com

メッセージ

『サタンジャワ』――ヌグロホ芸術の集大成にして新たなチャレンジ

石坂健治(日本映画大学教授/東京国際映画祭プログラミングディレクター)

映画監督のなかにはジャンルを横断・越境して創作するタイプのアーティストたちが存在する。アジアに限れば、アピチャッポン・ウィーラセタクン、キドラット・タヒミック、ツァイ・ミンリャンらは、映画と美術・演劇といった隣接分野を自在に往還して作品を生み出す。最近のアピチャッポンなら劇場空間と光を使った『フィーバー・ルーム』が印象に残る。
インドネシア映画界を牽引するガリン・ヌグロホもそうした系譜に連なる一人だ。1961年ジョグジャカルタ生まれのヌグロホは、東京国際映画祭に10回を超える入選を果たし、ストリート・チルドレンを描いた『枕の上の葉』(98)が劇場公開されるなど、日本との縁が深い作家である。スハルト独裁体制とその終焉後のインドネシア社会を見据える一方、早くからジャンル横断的な表現を得意としてきた。新婚夫婦の諍いと融和を綴ったデビュー作『一切れのパンの愛』(91)や、伝統舞踊の師匠と弟子の禁断の恋に踏み込んだ『そして月も踊る』(95)では、演劇的に様式化された演技やセリフ回し、詩の朗読や踊りが劇中に組み込まれたが、やがて全篇“ガムラン・オペラ”といった趣の大作『オペラジャワ』(06)へと発展し、近作『めくるめく愛の詩』(15)には1970年代の流行歌がダンスを伴って効果的に挿入され、清々しい歌謡映画となっている。
2016年の初演以来、豪州や欧州での公演に続いていよいよ日本上陸の『サタンジャワ』 は、軽やかにジャンルを越境するヌグロホ芸術の集大成にして新たなチャレンジともいえる注目作だ。ジャワ島の神話世界を描くモノクロ・サイレントの映像をベースに、上映=上演される国のクリエーターとタッグを組み、そのつど一期一会の劇伴を生演奏と音響設計で作りあげるという画期的なコンセプトの本作は、映像とサウンドが積算され、圧倒的な迫力で劇場全体を包み込むだろう。気鋭のサウンドデザイナー・森永泰弘が創りあげる音響空間にも期待が高まる。

魂の宿る映像へ

ガリン・ヌグロホ(映画監督)

『サタンジャワ』は、私にとって初めてのサイレント映画であり、2つの事柄から着想を得ています。1つは、インドネシアの伝統的な影絵芝居ワヤン・クリ。通常ガムラン演奏とともに上演されるもので、あたかも無声映画にガムラン・オーケストラの生演奏がついているようにも見えます。2つめは、ドイツ表現主義の巨匠F・W・ムルナウ監督の『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)です。サイレントは、想像が無限に広がるものであり、禅に通じるとも感じます。極めてシンプルなモノクロの世界は、私たちの想像力を働かせ、色を織り成していきます。また、私たちにとって音楽は魂です。音楽は物語であり、人々の感情を語り、想像力を与えてくれます。サイレントであり、モノクロであり、そして生演奏付きであること、これらは私が長年取り組んでいる「エクスパンデッド・シネマ(拡張映画)」において大切な意味をもつのです。

「繋がり」の音 ――儀式の音へ

森永泰弘(サウンドデザイナー・サウンドアーティスト)

『サタンジャワ』はジャワ島に根付く神秘主義を軸に男女、男とサタン、女とサタンの恋愛関係を描いた作品である。映画が音と映像、スクリーンとスピーカー、登場人物と観客を繋げていくように、モノクロームで撮られた本作は、人間、動物、オブジェクトが重層的に繋がりあっていく。これらの繋がりをまとめあげる唯一の時空間が、儀式だと僕は考えている。この唯一の時空間から生成されゆく音ー儀式の音ーが、本作『サタンジャワ』で試みるサウンドデザインのコンセプトにある。
ガリン・ヌグロホとは長年の友人関係であり、彼が長年耕したフィールドの地に僕は幾度も足を運び、現地の音楽家やアーティストとの交流を支えてくれたのもヌグロホであった。『サタンジャワ』のサウンド版の制作では、僕自身が見て聴いたインドネシアの音をそのまま再現するのではなく、これまでの記録・制作活動を通じて、群島国家の日本とインドネシアの異文化の繋がりを「現代」の視点から問い直すアプローチもできればと考えている。
ジャワ島に根付く音楽、神話、舞踊も、長い歴史の中で変化し、違う島に渡りながら新しい伝統として誕生してきた。本公演ではジャワに固有することなく、その周縁文化の音が映画を通じて繋がりあう瞬間を各々の視点で体験してもらいたい。

出演に寄せて

コムアイ(水曜日のカンパネラ)

1万7千もの島々が、星屑のように散らばるインドネシア。 一つの島を覗いてみても、たくさんの誇りを持った部族が暮らしているのがわかります。わたしが訪れたスラウェシ島には、死を祝うトラジャ族、黒装束のカジャン族、商いの得意なブギス族、といった具合で、この21世紀でも、それぞれに魅惑的な生活様式、儀礼、音楽、舞踊、装束を持ち、テレビ番組の「世界ふしぎ発見!」だったら、インドネシアで一年は持つとおもいます。 そして、今回の短い旅では興味のありそうなドアがたくさん見えてきて、それを開けることは全く追いつかず、宇宙に放り出されたような気持ちになりました。本の目次が見えてきて、わくわくしたところで帰ってきたような。土ぼこりの立つ田舎の村で異邦人として存在し、旅芸人として踊り、奏で、遊び、全身でその土地のリズムを身体に吸収してきました。もう忘れてしまったけれど。 このインドネシアという、蒸し暑い宇宙を一つにまとめられるガリン・ヌグロホ監督の作品はどれも素晴らしく、その中でもわたしのお気に入りとなった『サタンジャワ』、観客全員を宇宙船に乗せ、インドネシアの旅にお連れできるように、船長の森永さんと計画を練っていきたいとおもいます。

来日アーティストプロフィール

ルルク・アリ・プラセティオ Luluk Ari Prasetyo

歌唱・舞踊/映画:サタン役

ルルク・アリ・プラセティオ氏の写真
(C)RA_Faizal

1982年生まれ。ジャワ舞踊家、コンテンポラリーダンサー・振付家。インドネシア国立芸術大学スラカルタでジャワ宮廷舞踊を研究。エコ・スプリヤント、サルドノ・W・クスモ、シェン・ヘー・ハー、ファジャール・サトリヤディ、北村明子、スー・ウェンチー、デディー・ルーサン等の振付家、パパ・タラフマラ作品、ヌグロホ監督の映画「オペラジャワ」等出演多数。

ヘル・プルワント Heru Purwanto

歌唱・舞踊/映画:主人公(男) 役

ヘル・プルワント氏の写真

5歳より芸術の世界に身をおき、インドネシア芸術専門高等学校(SMKI Yogyakarta)、インドネシア国立芸術大学スラカルタで舞踊を研究。国外プロジェクトにも多く参加し、国内外の多くの振付家の作品に参加。国際フェスティバルやコンペティションの受賞歴多数。また、俳優としても広く知られ、スリウェダリのワヤン・オラン劇(舞踊劇)に出演している。

ドロテア・クイン Dorothea Quin

歌唱・舞踊/映画:主人公(女)の母親役

ドロテア・クイン氏の写真

幼少期より舞踊をはじめ、インドネシア国立芸術大学スラカルタにて研鑽を積み、サルドノ・W・クスモ、レトノ・マルティ、エコ・スプリヤントの他、ガリン・ヌグロホなどより指導を受ける。 レヘイン・エイブラハムズなど国際的なアーティストたちの作品にも多く参加しており、現在は自身が立ち上げたグループを率いてジャワ舞踊の振り付けなどスラカルタのスタジオにて活動している。

グナワン・マルヤント Gunawan Maryanto

詩朗読・マントラ/舞台・映画俳優・吟遊詩人

グナワン・マルヤント氏の写真
(C)Erwin Octavianto

1976年生まれ。ジョグジャカルタ出身。演出家、俳優、作家。1994年からジョグジャカルタを拠点とする劇団テアトル・ガラシに参加、俳優として主要作品に出演するほか、劇作も手がける。小説・詩集などの執筆作品では受賞暦多数。2010年よりインドネシア・ドラマティックリーディング・フェスティバルを主催。2017年、 ヨセップ・アンギ・ノエン監督”Solo, Solitude”で主演。同作品で、インドネシア映画の父といわれるウスマル・イスマイル監督の賞、Usmar Ismail Award 2017で最優秀男優賞を受賞。

テグー・プルマナ&アクバル・ネンディ Teguh Permana & Akbar Nendi

弦楽器タラワンサ&ジュントレン

テグー・プルマナ&アクバル・ネンディの写真
(C)vrprtms

インドネシアジャワ島西部の民族、スンダ人のデュオ。インドネシアの宗教的儀式や伝統の流れを組む音楽をコンセプトに発信。メロディーを奏でるタラワンサ、連なるジュントレン、2つの弦楽器によるアンサンブルが瞑想空間を形成し、導いていく。 テグー・プルマナは、エレクトロ・エクスペリメンタルミュージックシーンで注目を集めるタラワンサ・デュオ「Tarawangsawelas」(タラワンサウェラス)のメンバーとしても活躍。アクバル・ネンディはジュントレン伝統奏者の新星として幅広く活動中。

ハイディ・ビン・スラメッ & アンドリ Haidi Bing Slamet & Andori

ケンダン&アンクルン

>ハイディ氏の写真アンドリ氏の写真

ハイディ・スラメッは、15歳より伝統芸術の舞台に立ち、州、国、国外へとその活動の場を広げる。サロン・ド・ツーリズム パリ(2010年)出演、インドネシア・ダンス・コンペティション(ジャカルタ 2009年、2013年)優勝など国際的にも活躍。地域の教育普及事業にも従事する傍ら、自作のバイオリン制作にも取り組み、国内外のアーティストに提供するなど音楽活動の幅は多岐に渡る。

「響きあうアジア2019」とは

国際交流基金アジアセンターは、日本と東南アジアの文化交流事業を幅広く紹介する祭典として「響きあうアジア2019」を開催いたします。国を超え共に創り上げた舞台芸術、映画から、東南アジア選手による混成サッカーチーム「ASIAN ELEVEN」と日本チームとの国際親善試合、“日本語パートナーズ”のシンポジウムまで、お互いの文化が刺激しあって生まれた珠玉のイベントの数々を楽しめる機会です。この祭典は、国際交流基金アジアセンターがこれまで5年にわたり行ってきた相互交流の成果を振り返るとともに、日本と東南アジアとの関係をさらに深めるための起点となることでしょう。
「響きあうアジア2019」は、東南アジアでも展開予定です。

本事業はbeyond2020の認証事業です。