人と人の繋がりを見つめ直すきっかけに ――『スナップ』 K・ジャトゥランラッサミー監督インタビュー

Interview / 第28回東京国際映画祭

離れ離れになってしまった友人や大切な人について考えるきっかけに

――映画『スナップ』で最も気に入っている点はどこですか?

ジャトゥランラッサミー:自分の作品で一つに絞るのはとても難しいです。作品には自分が思い描いているものを全て詰め込んでいるので、その全てが好きだと言いたいです。おそらく気に入らなかった部分を聞いてくれた方が簡単かもしれません。自分がこういう風に見せたいという明確なビジョンがある一方で、それが必ずしも自分が思い描いたようにいかない所もありますが、それも含めてこの映画の全部を気に入っています。

  ジャトゥランラッサミー監督の写真1

(c)2015 TIFF

――この作品で観客に一番伝えたいメッセージは何ですか?

ジャトゥランラッサミー:この作品を観た人が、人と人の繋がりについて見つめ直すきっかけになれば嬉しいです。主人公のフエンは、隣に友人がいるときにも、スマートフォンで自己表現をして満足するような、バーチャルの世界に生きています。本作では、このことに注目しました。また、かつては輝かしかった友情も、政情や政治に対する意見や主張が異なることで壊れてしまうということも描きました。私自身は、友情はこのように左右されるべきではないと思うし、もっと人間関係の大切さを考えてほしいと思うのです。この作品を観た人にとって、この映画が、かつて時間を一緒に過ごしたけど、いまは離れ離れになってしまった友人や大切な人について考えるきっかけになれば、本当に嬉しいです。その時、なぜ彼らはいなくなってしまったか、ふと考えることもあるかもしれません。実際、年月を経れば、それまでとは異なる顔ぶれと会うようになるのはごく自然なことですよね。袂を分かちあう選択をすることもあるでしょう。政治的な意見の相違に限ったことではありませんが、何かしら道を選ぶということは、別離という選択にもなるのです。とにかくこの作品を観た人がそんなことを考える機会になってほしいと考えています。

――本作を作るうえで最も困難だったことは何ですか?

ジャトゥランラッサミー:そうですね、今回製作予算がとても限られており、その中で物語をいかに伝えることができるかということに頭を悩ませました。撮影を通して皆はもう疲労困憊でしたが、そのおかげで、最後には良いものが完成することができました。

――最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。

ジャトゥランラッサミー:まず、今回東京国際映画祭で本作は3回上映されましたが、 その全ての回でチケットがほぼ完売になったことに感謝申し上げます。特に、初回はとても大きなスクリーンで行われましたが、数席しか空席がなく、本当に予想以上の盛況でした。また、皆さんがQ&Aセッションに残ってくれていて、いかにこの映画に関心を寄せていただいているか伝わってきました。一年前、本作のためにくぐり抜けた苦労や疲労が一気に報われ、最高の贈り物となりました。

ジャトゥランラッサミー監督の写真2

【2015年11月2日】

作品情報

作品名 『スナップ』
原題 SA-NAP (英題:Snap)
監督 コンデート・ジャトゥランラッサミー
製作年 2015年
製作国 タイ
詳細 http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=29
コピーライト (c)TrueVisions Group Co., Ltd.