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令和3年度日本語パートナーズ派遣事業 埼玉県における多文化共生事業に関する集い 詳細報告

2022年01月31日

1.全体会

全体会では、国際交流基金アジアセンターが実施する日本語パートナーズ派遣事業の説明、埼玉県の多文化共生施策の説明、埼玉県内の多文化共生に関連のある団体の紹介が行われました。

その後、日本語パートナーズ(NP)経験者の代表から、派遣中の現地での活動紹介と帰国後について発表がありました。

「自分が外国で生活したことによって、日本在住の外国人がどのように手を差し伸べてほしいかが見えてきた。相手が育ってきた環境を理解し、そのうえで日本のルールや状況を話し、理解を求めることが大切と感じた」と、NPとしての経験が現在の活動に活かされていることを具体的に話されました。

2.意見交換

全体会に続いて、参加団体とNP経験者による意見交換を行いました。意見交換は「日本語教育」「外国人支援、交流」の2つテーマで行われましたが、関連する様々な話題についても意見が交わされ、参加団体の活動に対するNP経験者の関心の高さがうかがえました。具体的に出された提案や意見をいくつか紹介します(詳細は別資料の「意見交換内容」をご覧ください)。

(1)身近な日本人住民との交流の意義

「生活や行政手続きなどをサポートしてくれる日本人が身近にいることは外国人住民にとって心強い存在になる」「自分もタイに派遣中、現地の方に声をかけてもらったことがきっかけとなり交流が始まった」のようにNP経験を踏まえての意見が出されました。

NP派遣中に身近に相談できる現地の人がいたことが生活面で大きな支えとなったという経験談もあり、身近にいる日本人住民との交流が外国人住人の支えになりえるとの意見が出ました。

(2)「やさしい日本語」でのコミュニケーション

意見交換の随所で「やさしい日本語」という言葉が出てきました。NP経験者が現地で外国人として活動した際、多くの人が共通して感じたこととして、現地の人が「やさしい現地語」で話をしてくれたことだそうです。

「自分が外国人として生活してみて一番助かったことは『やさしいインドネシア語』で現地の人が話してくれることだった。お互いが理解できる程度のレベルでコミュニケーションができればいいと思う。また、それができる日本人住民を増やしていくことがすぐにできる多文化共生の一歩かと思う」というお話がありました。

(3)生活支援、行政との連携

身近に多数の外国人が居住する地域においては、自治会が中心となり外部の学生ボランティアの協力を得ながら多文化共生の交流を進めていることや、増加する外国人住民の状況に鑑み、地域が一体となって多文化共生の取り組みに注力し始めたことなど、実態に即した団体の活動が紹介されました。

例えば、ふじみの国際交流センターは、その活動内容が日本語支援から生活相談まで多岐に渡っています。最近では外国人住民が抱える、教育、医療、仕事の相談が多く寄せられるという現状も。日本語支援の活動を行う埼玉日本語ネットワークからは「支援スタッフからは、年金の手続きがわからない外国人住民には、諸手続きに必要な用語から教えてあげたほうが良いのではないかとの意見も出ている」など、現場の具体的な課題が話題にあがりました。

現在、日本語教師として教壇に立つNP経験者からは「日本語を教えるだけでなく新型コロナウイルスワクチン接種のことやアルバイトのことなど生活全般に関わる相談を受けることがある。しかしながらすべてをサポートしきれない。地域にサポートしてくれる団体があれば、学生にそういった団体を紹介してあげたい」という意見が寄せられました。

3.まとめ

参加したNP経験者からは「NGO団体から情報やアイデアを得ることができた」「多文化共生事業への関心が高まった」という多数の感想がありました。

また、参加団体からは「NP経験者という人材がいることに驚いた」「NP経験者の話をもっと詳しく聞きたい」「NPとしての経験は、外国人住民の背景を理解し、支援を受ける外国人の気持ちに寄り添う上で有益だと感じた」とのコメントが寄せられました。

意見交換により、NP経験者のアジアでの活動経験が貴重な財産となり、帰国後も多くの方が熱意をもって活動していることが分かりました。

また、「知る機会を増やす」重要性に気づかされました。団体の活動をNP経験者が知る、行政の取り組みを外国人住民が知ることをサポートする、日本に暮らす外国人が抱える課題や悩みを知る。多くの方が多方面にアンテナを張って「知る」ことが多文化共生社会の実現に向けての一歩であるとの認識を新たにしました。

限られた時間の中ではありましたが、文化の違いや言語の壁を乗り越えて現地の人に受け入れてもらった経験がNP経験者の強みであるということを参加団体へ知っていただくとともに、参加団体の活動をNP経験者が知る機会となり、また、参加団体同士も各地域の支援の現状と課題を共有することができた集いとなりました。

【資料】