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インドネシア人の自然な優しさに触れて・・

子供の頃から困っている人には親切にしなさい、そんな道徳観を教えられてきたが、それらの道徳観を改めて考えさせられた。そんなお話。

平日、学校帰りのアンコット内での出来事だった。アンコットとは街中を走り回っているミニバンで、庶民の足になっている乗り物。しかし、このアンコット、ステップが高く幅も狭いので足腰が弱った人間には乗るだけでもかなりの苦難を強いられる。その日、年配の女性がアンコットに乗り込もうとしていた。体を支えにくいのでその女性は乗り込むのに四苦八苦していた。その時私はほとんど反射的に手を差し出し女性の手をとり、中に引き上げていた。反対側に座っていた女性も同様に手助けをしていた。その女性がアンコットを降りる際には隣に座っていた男性が突風のように動き、外に出て女性の手をとりゆっくりと道へと下ろして颯爽とアンコットに戻ってきた。まさに、親切の連鎖!!ちょっと、意外だったのが、それら一連の行為に対し女性が特にお礼の言葉を発したようには見えなかった事。男性も手助けした女性もそれをさして気に留めるでなく何事もなかったように座っていた。日本であれば親切を受けて何の返礼もしないなんて、失礼な態度に取られかねないが、そのアンコットの中ではそれは当たり前の事で自然な行為だった。その時ふっと、ああ、なんて美しいのだろうとやたらと感動してしまった。空気を吸うように人に親切にできる。道徳とか倫理とか、矜持とかそんな大げさなものを掲げるでなく体が自然に動く。私が現在住んでいるバンドンはそんな人達で出来ているのかと思うと本当に心がほっこりと温かくなり、嬉しくなった。この出来事があって、私は日本へインドネシア人のように自然に手助けできる温かい手を持ち帰りたいと心底思ったのだった。

アンコット参考記事:地元民の足、アンコット

 

アンコットの写真
Writer
インドネシア 西ジャワ州
松下 佳代さん

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