11月中旬、インドネシア・バリ州ウダヤナ大学で日本文化祭が開かれ、高校生によるスピーチコンテスト・昔話の部に、私が赴任しているデンパサール第8国立高校・日本クラブのティヤさん(理科系3年)とワッユ君(同2年)が出場しました。バリ州全土から選ばれた高校生50人の中で、2人は『桃太郎』を披露し、ワッユ君は優勝しました。
私が赴任した11月初旬、練習はかなり進んでいましたが、私は、桃太郎と家来の会話は歌にした方がいいと勧めました。2人は私の歌をスマホに録音して覚えました。
本番前日、私は「優勝できたらいいね」とか「優勝を目指そう」というようなことを言いました。するとティヤさんが「優勝するかしないかは私には関係ありません。私は日本語をもっと勉強したいと思います」と笑顔で言いました。ワッユ君も、僕も同じだと言いました。
当日は早朝、日本クラブのメンバーが学校に集まり、サラスワティという教育の神様にお祈りをして出発しました。私も同行し、各地から集まった高校生の熱演とワッユ君の優勝を見届けました。うれしいと同時に、彼らがなぜ日本語を勉強するのか、ぜひ聞いてみたいと思いました。
その翌週から学校は期末テスト期間に入り、終わると2週間のスポーツ大会期間になりました。12月初旬、スポーツ大会の歓声が聞こえる図書室で、CPのプトラ先生に通訳をお願いして2人に質問しました。「なぜ日本語を勉強したいのですか?」
答えは切実で具体的でした。
ワッユ君は、日本語を読めるようになって日本の大学でテクノロジーを勉強し、バリの乗物を高度にしたいそうです。「インドネシアはもっと日本語教育を進めてほしい。日本語を勉強すれば僕のように思う人がたくさん出てくると思います」
ティヤさんは、インドネシアの大学で日本語を勉強し、卒業したら日本の大学で学び、5年くらい働いたらバリに帰り、語学学校をつくって日本語を教えたいそうです。「日本人はすごいなあと思います。時間を守るのが本当にいいなあ。今バリと日本の関係は良い。これからは日本の良さをバリに教えてください。テクノロジーとか時間を守るとか、私も教えたい。そういうバリにしたいです」