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赴任地を深く理解するために

日本語パートナーズ事業の活動の柱の一つに「タイへの関心の拡大、理解の促進」があります。赴任前にこの活動にいかに取り組むかを考えました。そこで私自身多くの転居を経験し、いろいろな町や地域で生活してきたなかで身につけた術をこのタイでも実践することにしました。それは地域を舞台とした文学作品を読むこと。そして地域の絵を描くことです。小説は人々の気質や気風など内面的な目に見えぬ地域性に触れることができます。絵は外見的な風土や人々の営みを観察し理解することができます。

文学作品についてはタイ人作家の作品十数冊を読んだ中でもっとも感銘を受けた作品があります。人気作家の一人で赴任地サラブリー県出身、しかも赴任校であるゲンコーイ校にも在籍していたウティット・ヘーマームーンが書いた小説「ラップ・レー、ゲンコーイ」です。タイ語ではまだ読めないので、バンコクの本屋で英訳版(タイトル“The Brotherhood of Kaeng Khoi”)を手に入れました。赴任地ゲンコーイの町とその周辺の地域が舞台になっています。近代化へと進む20世紀の大きな変化の中で生きる少年ラップ・レーとその家族の姿を描いたものです。地域の絆、信仰、迷信などを含めた地域性を理解するにはこの上ない作品でした。

絵は日本では風景を描くことが多かったのですが、ここタイでは風景より、ごく普通の人々の日常の営みが新鮮で魅力的です。市場の活気、お坊さんの托鉢の姿、生徒の通学の光景、行きつけの食堂からの眺めなど日本と異なる光景は絵を描く材料には事欠きません。赴任した時から「毎週1枚」を自分に課し、今のところ順調に枚数を重ねています。日本に比べてゆったりとした時間の流れの中で、読書と絵を描く一時は私にとって至福の時となっています。絵を描きながら気づくことも多く、これからもゲンコーイの町の魅力を見つけ、記録・記憶に残していきたいと思います。

前田さんの描いた絵1
町の風景

前田さんの描いた絵2
市場

前田さんの描いた絵3
生徒の登校

前田さんの描いた絵4
行きつけの食堂からの眺め

Writer
タイ サラブリー
前田 裕司さん

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