バンコクの北、パトゥムターニー県にあるサイパンヤーランシット校の柘植要介です。
私が昨年の5月にこの学校へ着任してから今日までの約8か月間、15回ほどになるでしょうか、高校3年生のある女子生徒が私に食事の差し入れを続けてくれています。初めの頃はなぜなのかよく理解できませんでしたが、回数を重ねるうちに先生からこれはタンブンだと教えられました。
タンブンとは徳を積み重ねる行為の事。タイは人口の95%もの人が仏教徒と言われる仏教国、タイではタンブンをすればするほど来世では幸せな生まれ変わりが出来ると信じられています。
タンブンは早朝の僧侶への托鉢やお寺への寄付といった、いわゆるお布施に始まり、戒律を守る、出家する、小鳥や魚を逃がしてあげるなど日常生活そのものがタンブンと密接に関わっています。私への差し入れはまさに彼女にとってはお布施であり、タンブンそのものだったのです。しかし、それが1回に終わらず8か月間ずっと続いていることに驚いています。
学校でもお布施の文化は息づいています。我が校の土地約6万平米は地元の方からの寄付であり、2,300人ほどの全校生徒を収容するホールも全額、保護者からの寄付金で賄われています。
また、学校の大事な行事には大勢の僧侶が来校、お祈りが捧げられた後で、先生、生徒達が思い思いの品物を托鉢します。
お布施では物の寄進以外に、好ましい眼差しを差し向けること、笑顔を見せること、柔らかい言葉遣いをすることなどと云った態度に付いても説いており、お布施文化はタイが微笑みの国と言われる由縁かと思います。
彼女には本当にお礼の言葉も有りません。帰国後は彼女には何某かのタンブンをお返ししたいと思っています。