私が日本語パートナーズに応募したとき、任地先はジャカルタになることを期待していた。なぜならジャカルタで2年間日本語教師をした経験があり、「また戻ってくる」と約束した生徒たちや友人がたくさんいたからだ。
ところが決まったのは名前も聞いたことがない東ジャワのマラン。飛行機でジャカルタまで1時間半もかかる辺境の地?… 一挙に私は不安と失望の渦中へ。正直、「やる気満々」には程遠い気分で任地に赴いた私だった。
だが行ってみるとマランはジャカルタと違って涼しくて空気のきれいな高原の町。学校が多くて若い世代がたくさんいる町。そして何より私が新鮮に感じたのは日本人が少ないということ。アンコット(小さな乗り合いバス)に乗っても、通りを歩いてもジャカルタの時とは全然違う人の視線。派遣校へ向かうアンコットに乗るとき、いつ頃からだろうか、乗客に阿吽の呼吸で「パギ(おはよう)!」と言うようになった。今まで怖い表情で私を見ていた人たちの顔が一瞬で笑顔に変わる。心の中で小さくガッツポーズ。小さな小さな国際交流を実感する瞬間だ。人も温かい。派遣校の先生方・職員は勿論、街角で出会う人みんながフレンドリーだ。自然もいい。車の交通量が多い道でも、一歩裏路地に入ると、川があり、つり橋がかかっていたりする。ふと見上げた夕空の美しさに息をのむ。そんな発見がこの上もなく楽しい。ジャカルタに居たときとは違う楽しさが町のあちらこちらに点在する。
そして何より私のマラン生活を豊かにしてくれているのは、マランに派遣された他の日本語パートナーズ7人のメンバーに負うところが大きい。私は最年長で、孫みたいな大学生5人と、娘とほとんど変わらない歳の社会人2人の若さと個性に引っ張られ、後押しされてやって来られた気がする。遊びに行く計画も月一の食事会も彼らたちが全て段取りしてくれた。今だったら嘘偽りなく言える。「マラン派遣にしてくれてありがとう!マラン最高!」
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裏路地の川
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つり橋
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ふと見上げた夕空
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愛すべきマランの日本語パートナーズ7人