先日、帰宅途中のバスで、「もしかして、日本の方ですか。」と丁寧な語り口調で話しかけられた。聞けば、彼女は建築学を勉強中の大学生で、独学で日本語の習得を目指しているとのこと。あまりの熱心さに私もつられて話し込み、気が付くとバスは自宅最寄りのバス停を通過してしまっていた。
このような出来事は決して珍しいことではなく、ホーチミン市に赴任してからというもの「日本人」であるというだけで喜んでもらえる。こうした瞬間に出くわす度に、自分が有名人にでもなった気になりニヤニヤが止まらない。

さて、私が派遣されているレホンフォン高校で学ぶ彼女もまた、自力で日本語の学習に励んできた一人だ。今年度から同校で日本語教育が開始され、彼女も第二外国語として初級日本語を選択している。
今回、ホーチミン市内にある高校のそれぞれで日本語コンテストが行われ、「安全」というテーマでのポスター制作と「将来の私へ」という作文の課題が与えられた。ポスター制作には、多くの生徒たちが熱心に取り組んだ。
しかし、800字規定の作文は、第一外国語の生徒ですら諦めてしまう生徒がほとんどだった。そんな中、彼女は旧正月を祝うテト休暇中も作文に頭を悩ませ、推敲を重ねた。第二外国語の生徒の提出は、ただ一人。本人の納得のいく結果とはならなかったが、その努力と向上心には頭が下がる思いがした。

もう一校の派遣校、チュンヴオン高校で優秀賞を受賞した彼女は、読書家だ。夫婦共働きが一般的なベトナム社会。彼女も母として、そして夢である編集者として作家と共にベトナム人初のノーベル文学賞受賞を目指す未来を描いている。
「小さいことから始めようと思っています。怠けてはいけないし、家事を習います。毎週、目標を紙に書いて頑張ります。そして、普段の考え方を良いものに変えます。自分を信じます。頑張りぬけば何でも成功できると思います。」最後は、そう力強く締め括られている。
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
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各校最優秀作品は3月20日より約1週間、ホーチミンの高島屋さんにて展示予定。
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