憧れの人である紀政(きせい、ジーヂオン)さんに会えました。
紀政さんは1968年夏季オリンピックメキシコシティー大会の陸上女子810mハードルの銅メダリストで、台湾の女性として初のメダリストでもあります。
多忙な紀政さんに会えるまでにはCP(カウンターパート)の曾先生の粘り強い尽力がありました。
紀政さんの秘書の方が車で私の担当校まで曾先生と私を迎えにきて、紀政さんの自宅まで案内してくれました。
紀政さんは親しい友人が訪ねて来たかのように私達を迎えてくれました。紀政さんにスーツの上着とネクタイをとるように促された私は、上着は脱ぎましたがネクタイは外せませんでした。紀政さんに、「紀政さんに対する礼儀です、お許しください。」と言うと紀政さんはにっこりしました。
1時間余り紀政さんの細やかなもてなしを受けながら話をすることができました。紀政さんの人柄を表す話を二つ紹介します。
一つは、居間の壁に掛けられた写真のような絵です。居間にはこの絵を除いて紀政さんの競技者時代を物語るものは何一つありません。
この絵は台湾のある陸上競技会での紀政さんの姿をもとに描かれたもので、この大会の活躍で紀政さんは才能を認められてアメリカの大学に国費留学をすることができ、そこで有能なコーチの指導を受けて才能を開花させていきました。「思い出の競技会であり感謝の気持ちを忘れないようにしています。」と紀政さんは言いました。
もう一つは、オリンピックの話です。メダルを獲ったレース以上に100mの決勝レースに出場できたことが嬉しかったそうです。 「体力的に数段優れるアメリカやヨーロッパの選手たちと競い合うことができて幸せでした。」と紀政さんは言いました。
その後、淡水河のほとりの遊歩道を歩いて地元のレストランに行き、夕食をご馳走になりました。紀政さんの友人たちも合流して楽しい食事会でした。紀政さんは淡水河を渡る風のようにやさしく爽やかな方でした。