「りおさん、消しごむはんこを作ったことはありますか? 授業でやりませんか?」
「作ったことはありませんが……やりましょう!」
こんなやりとりから今回の授業はスタートしました。
せっかくの先生からのリクエストです。それに実は私も日本にいる時からいつか作ってみたいと思っていました。まさかインドネシアで実現するとは……しかも教える側です。
授業では、作る前に日本の印鑑文化を紹介しました。
生徒たちにとって、日本ではサインの代わりに印鑑を使うというのが不思議だったようで「同じ名前の人はどうしますか?」「どうして赤い色ですか?」と質問がありました。文化紹介は普段考えない観点から質問が来るので、「なぜ」「どうして」を改めて考えるきっかけになります。
デザインは名前にしました。ガヤガヤと騒がしい生徒も作り始めると集中モード。真剣に取り組んでいてさながら職人のようでした。インドネシアの生徒は本当に手先が器用で感心します。
みんな真剣です。
「せんせい!」と笑顔で紙を持ってくる生徒。そこには彼女の名前が写っていたので読んであげると、今まで聞いたことない明るい声で喜びました。出来上がったはんこをペタペタとたくさん押している生徒もいれば、全員分のはんこが押された紙を持って読み方と人を確認している生徒も。
自分の名前が外国語だとこうなる、という感動は大きいです。
私も生徒からジャワ語(中部ジャワ州で主に使われている地方語。インドネシア語と発音や文字がまるで違います。)で名前をどのように書くか教えてもらいましたが、とても不思議な気持ちでした。そしてそれと同時にジャワ語への親近感が強まりました。
語学学習をする上で、文字は一つの壁となりがちですが、今回作った消しごむはんこで自分の名前の文字から日本語の文字への親しみを持ってくれると良いな、と思いながら先生も私もすっかりハマってしまい自分用の判子が増える毎日です。