タイには サーイシン(聖糸)という儀式があります。わたしは、二回この儀式に出会いました。二回ともとても心に残る出来事でした。
最初の体験は、10月の休暇にあった職員旅行中でした。参加メンバーは普段接している外国語科の先生ではなく他教科の先生方が主で挨拶程度しか面識のない先生方です。会話はもちろんタイ語なのでほとんどタイ語が話せない私は最初躊躇しましたが、イサーン地方の文化には興味があったので参加しました。
夕ご飯は音楽科の先生のご家族がイサーンの家庭料理を作ってくれました。床に車座になって大皿から取り分けて食べるのもイサーン風です。食事のあと、今年退職された先生を囲んで、サーイシンが始まりました。今回の旅行は退職された先生への感謝の会でもあったのです。他の先生方と一緒に私も白い糸を結びました。「いつまでもお元気でいてください」と英語と日本語で願いながら結びました。次には、なんと私がサーイシンを結んでいただくことになりました。遠い日本から来てくれたからだそうです。両手に次々と結ばれていく白い糸と先生方からの優しい言葉が私の胸を熱くしていきました。
2度目は2月16日、卒業式の場で体験しました。式の中で、先生方の前に卒業生が座ります。先生方が一人ずつに言葉をかけながら白い糸を結んでいます。私も次々にやってくる生徒達に 「卒業おめでとう」、「幸せになりますように」 「健康で過ごせますように」と言葉をかけながら糸を結んでいきました。日本語科の生徒よりも今まで教えたことのない生徒達の方が圧倒的に多かったのですが、生徒達は結んでもらうとにっこり笑ってワイ(合掌)をしていきました。私は先生と生徒を結び付けるこの儀式に感動しました。そして、10ヶ月間の日本語パートナーズの活動で知ったタイの方々の優しさを私は生涯忘れません。ありがとうございました。