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箸の筆で書き描いた漢字絵

タイの中高生が、日本語の漢字を、もっと興味を持って学ぶことができないものかというのが、授業で漢字の書き順を指導していて感じていたことだった。

そこで、漢字の中の象形文字に絞って、例えば「山」ならば、
自然の写真→中国の古い文字(金文)→現代の日本の漢字 
というように示してみた。生徒たちは、写真が字に変わると、そのたびに「あぁ→↑」とか、「ウコッ」みたいな感嘆の言葉を発してくれるので、感心したり納得したりしているんだということがわかる。「木」では、二つ集まると「林」、では「木」が三つ集まると何になりますか、という問いにみごとに答えてくれた。

中学生にはやさしい象形文字を5つ以上使って絵をかいてみようという課題に取り組んでもらった。
高校生には画数の多い動物の漢字を、例えば「亀」ならば、
亀のイラスト→中国の古い文字(金文)→現代の日本の漢字
というように示し、金文と現代の漢字を対比させる形で、イラストも交えながら書いてもらった。身近な動物の体の特徴を表す漢字は、墨の持つ神秘性と相まって印象深く映ったようだ。

「墨汁が注がれたら、墨の匂いを嗅いでみてください」

さっそく、鼻に近づけては、顔をしかめる子、うんうんとうなずく子がいて、反応は様々だ。
箸の先端を縦1mm 横5mm程度に家で削ってきてもらったお箸の「筆」の持ち方と運筆は一人一人実際に見せたり、確認して進めた。人差し指をかけ、横5mmが自分の体と並行になるように紙におろし、そのまま下にひいていけば、太い線が書ける。軸を回転させず、そのまま右にひけば、細い線が書ける、この「筆」の特徴を活かして書いてもらうことにした。この動きが理解できれば、毛筆での活動につなげていくことができるだろうと考えた。

墨を含ませた箸の筆を紙におろす瞬間にぶるぶるっと指先を震わせている子がいたので、うなずきながら、思わず日本の子たちと同じだ、がんばれと心の中で声援を送った。

Writer
タイ バンコク
金田 敦子さん

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