みなさんは「日本語キャンプ」という言葉を聞いて、どんな風景を思い浮かべますか?
タイに来るまでの私は「皆で山へ行って、日本語を話しながらカレーを作って、キャンプファイヤーを眺めながら日本語の歌を唄って……」と考えていましたが、実際は言語を使ったワークショップであることを知りました。語学キャンプは、タイ国内では一般的なイベントだそうで、今回はメーサリアン”ボリパット”学校の言語キャンプについて書きたいと思います。
まず、私の派遣先校では「三か国語キャンプ」(英語、日本語、中国語)という直球な名のもと、外国語学科の先生と生徒が主体となり、日程や参加人数、アクティビティの内容を決めることから始まりました。今回、日本語専攻では、ビンゴ、伝言ゲーム、たこ焼き作り、習字、折り紙の5つのワークショップを行いました。当日は派遣先校の他にも、近隣の学校からも参加があり約300名の中学・高校生が集いました。学年・性別混合で1グループ30名程度に分けられて、各ブースでの頑張りに応じてグループで点数を獲得し、最後に合計得点を競います。
運営を頑張った外国学科の高校2・3年生
参加した生徒の大半は日本語を勉強したことがないため、ビンゴと伝言ゲームでは日本語の簡単な単語や「いただきます」「おかえりなさい」等の表現がローマ字・タイ文字で書かれており、アクティビティを通して言葉が覚えられる工夫がされています。シンプルなゲームであることと、進行を担当した先生と生徒が盛り上げ上手だったこともあり、笑い声に溢れるブースになっていました。ちなみに、タイ語では「ビンゴ」を「ビンゴー」と伸ばして発音するため、アクティビティの名前も「ビンゴー」です。
上:たこ焼き作り、下:伝言ゲームのメンバー
習字では初めて筆を使う生徒も多く、カタカナの形と筆の使い方に苦戦しながらも自分の名前や好きな日本語の言葉を書いて、記念撮影をしていました。中には慣れた手つきで漢字を書いている生徒もおり、聞いてみると中国語専攻だそうで、漢字に親しみがある利点が伺えました。折り紙はカエルのような簡易なものから、ハサミを使って作る着物まで、4、5種類の折り方を教えていました。日本語専攻で日頃からたこ焼きを作っている生徒がおり、慣れた手つきで他の生徒に作り方を教えていました。屋台顔負けの手際の良さに脱帽です。折り紙や習字など、日本人にとっては何の変哲もない日常を経験することが、海外では立派な文化活動となることは目から鱗でした。
左:習字を教える生徒、右:日本語の授業で静かな生徒も折り紙を持つと饒舌に
また、開会式では沖縄の盆踊りであるエイサーを演舞し、2か月の練習の成果を披露しました。着任して間もない頃に、同僚の先生から「ガンさん(私のニックネーム)は、日本の活動で何か教えられますか?何を教えたいですか?」と唐突に尋ねられ、私と所縁のある宜野湾市長田青年会とそこで踊られるエイサーについて紹介したことがきっかけとなりました。練習当初は太鼓もなかったので、辞書とプラスチックの棒を太鼓とバチに見立てて練習をしながら、太鼓や衣装の確保に急ぎました。エイサーという言葉を聞いたことも、見たこともない生徒たちは、毎日放課後になると熱い教室の中で熱心に練習に励み、無事に本番を迎えることができました。今回の演舞にあたり、宜野湾市長田子ども育成会からパーランクー(小太鼓)を借用させていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。