みなさん、オム スワスティアストゥ(バリ語でこんにちは)。インドネシアのバリ州ギャニャール県に派遣され約5か月が過ぎた村田健吾です。
インドネシア国民の9割近くはイスラム教徒ですが、バリ島ではヒンドゥー教徒が9割を占めており、他の地域とは違った風景や生活があります。インドネシアの国章であり、国営航空会社の名前にも由来するガルーダはバリ・ヒンドゥー教の神話に登場する巨大な鷲で、ヴィシュヌ神(宇宙の秩序を司る神)を背中に乗せた天の象徴です。バリ・ヒンドゥー教を一言で表せば「いろいろな調和」ではないかと私は思います。すべての物事は善と悪、生と死、男と女、神と人間といった形で2極、2面性があり、それらの調和・バランスが維持されることで世界が成り立っている、とバリ・ヒンドゥー教では考えられているそうです。そのため、東西南北の要となる高い山や海・湖や崖、川・滝等に寺院(プラ)があり、災い等が起こらないように調和を保つ役目を果たしています。派遣先校では毎回授業の後やいろいろなスピーチ等の最後に、必ず「オム シャンティ シャンティ シャンティ オム」(世界の平和、家族や身近な人の平和、自分の内面・心の平和という意味の言葉)を唱えます。
また、バリ・ヒンドゥー教の特徴として、ウパチャラ(儀式)とチャナン(お供え物)があります。寺院にお参りに行く際には必ず沐浴を済ませ正装をして、チャナンとドゥパ(線香)を持って行きます。調和を重んじるバリの人たちの間では、チャナンやドゥパを神様(上)だけにあげると悪魔(下)が怒ってバランスが壊れると考えられており、必ず地面にもチャナンをお供えします。私の住むコス(下宿)は昔ながらのバリ・ヒンドゥー教の住居で、いくつかの特徴があります。まず、入り口の門(アンクル・アンクル)は狭くて人ひとりがやっと通れるくらいです。入ると訪問者を阻むような石でできた「つい立」があり、外から悪霊が入ってこないためのものです。敷地はそれぞれいくつかの独立した家屋があります。その中でも一番大切な場所は「家寺(サンガ)」です。聖地のアグン山のある方向に配置されています。私が住んでいるコスには、独立した7つの建物と1つのサンガがあり、配置や、方角等それぞれ意味があり、とても興味深いです。
私の住んでいるコスのバリ・ヒンドゥー様式の入口
入り口の地面にお供えされているヤシの葉を編んで作ったチャナン
典型的なバリ・ヒンドゥー教のコスの様子。奥に立派なサンガが配置されている
また、バリ島の人たちは何軒かの家からなる「バンジャール」と呼ばれるコミュニティが中心となって行事や儀式を行ないます。日本の「組内」のような助け合いのコミュニティです。バンジャールは人々の結びつきが強く、結婚式や葬式等の儀式がある時は、メンバー総出で食事やお供え物を作って手伝います。この前も同じバンジャール内で葬式と結婚式がありました。同じバンジャールの人たちがお供え物を持って行ったり、料理や飾りつけの手伝いをしたりしていました。私はバリに派遣されて、最初は多少戸惑うこともありましたが、5か月経った今は、コスの家族や近所の人々の温かさをいつも感じながら、毎朝チャナンとドゥパが家々の前にお供えされたクムヌー村で楽しい生活を送っています。