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フィリピンでつながる小噺

こんにちは。フィリピン11期、タギッグ市に派遣されている玉置です。

皆さんは小噺を知っていますか。小噺は落語の前座にする短い笑い話で、話の最後に意外なオチがあり観客をクスッと笑顔にします。

私はここフィリピンで、大勢の前で小噺のパフォーマンスをすることになるとは思ってもみませんでした。
小噺との出会いは、派遣先校のフィリピン人の日本語の先生がJFM(マニラ日本文化センター)で開催される「おしゃべりサロン」に誘ってくれたことがきっかけです。まだフィリピンに来て数週間が経ったばかりの頃でした。

「おしゃべりサロン」では、フィリピンの日本語学習者とともに、小噺について学び、伝統的な小噺を実際にパフォーマンスする機会がありました。もちろん初めての経験だったので台詞を覚えることに必死で、参加者が順番に披露する場面での私の小噺はたどたどしく、ただ覚えた台詞をしゃべっただけでした。

「おしゃべりサロン」で小噺と出会いました

その後、JFMの先生方にオンライン小噺ワークショップのお誘いをいただき参加したところ、小噺は世界中で愛され嗜まれているということを知りました。ヨーロッパの国々やアジアの国々で日本語学習の活動のひとつとして取り入れられているとのことでした。しかしフィリピンでまだ小噺はほとんど知られていませんでした。
私も派遣されているフィリピンの高校でぜひやってみたいと思い、授業で生徒に小噺を紹介し、実際にひとりひとり日本語でパフォーマンスをしてもらう機会を作りました。フィリピンの生徒は賑やかで楽しいことが大好きで、多くの生徒が文化祭等で人前でもダンスや歌を堂々と披露してくれます。笑いが生まれる小噺とこのフィリピンの陽気な気質が見事にマッチして、生徒の小噺はどれも見事でした。

小噺をすることで、日本語や日本文化を学ぶことだけではなく、一緒に温泉に入ったような連帯感が生まれたり、普段は目立たない生徒が小噺で大きな笑いをとることができたりする等、生徒間の仲がさらに深まったという効果もありました。

生徒たちも楽しみながら小噺に挑戦してくれました

この時期にちょうど、JFMの一大イベント「にほんごフィエスタ」がマニラで行われ、そこで小噺コンテストも開催されることを聞きました。これに伴い、パフォーマーを募集する案内が送られてきたことを生徒に伝えると、たくさんの生徒が自らのパフォーマンス動画を提出し、応募してくれました。私も背中を押され、タガログ語でのパフォーマンスにチャレンジし、応募しました。
応募にあたり、日本語の台詞をタガログ語に翻訳してもらったり、発音の練習に付き合ってもらったり等、たくさんのフィリピンの方々にお世話になりました。タガログ語の小噺を生徒にも聞いてもらったり、職員室の先生方にも発音の指導をしてもらったりしているうちに、日本人である私がタガログ語で練習をしていることをとても喜んでもらえて、興味を持って練習を手伝ってくれたり、小噺がきっかけで親睦が深まりました。

そして、「にほんごフィエスタ」へ出場する16名の小噺パフォーマーに、私と、私の派遣先校からひとりの生徒が選ばれました。私たちはコンテストに向けて一緒に練習をしました。私は彼女の日本語を指導し、彼女は私のタガログ語を指導してくれました。先生と生徒の垣根を超えて、お互いを高め合えるとても素晴らしい機会でした。

コンテスト当日、私は朝からとても緊張していましたが、ご来賓の小噺の権威である大学教授やプロの落語家に直接ご指導いただく機会にも恵まれ、的確なアドバイスをいただくことができました。リハーサル後、発表までの数時間を控え室で練習をしながら待ちました。

いよいよコンテストの時間がやってきました。台詞を確認するためにスマホの待ち受け画像にしていた台詞を何度も読み直しました。出囃子が流れ、私の出番がやってきました。映画館を貸し切った会場に設置された高座に上がり、満席の観客席を前に小噺を始めました。高座に上がるまでは緊張していましたが、話し始めるとだんだんと楽しくなってきました。日本人がタガログ語で演じる意外さと、伝統的な小噺の不動のオチにフィリピン人の観客も日本人の観客もたくさん笑ってくれました。
終わった後、一緒に小噺をした仲間や見に来てくれた生徒たちだけではなく、観客の方々も楽しかったと話しかけてくれ、一緒に写真を撮りました。小噺を通じて、たくさんの出会いと喜びをもらうことができました。

小噺の物語はここで終わりません。私の派遣先校では、来たる創立記念日のイベントで演目に小噺が取り入れられることになりました。小噺は短い時間で練習や準備ができ、同時に正しい発音や伝統文化を学ぶこともできるため、敷居が低く効果的な日本語教育のひとつであると思います。これからも小噺の魅力を伝え、自分の言葉で誰かを楽しませる喜びを世界中に広げていきたいと思います。

小噺は楽しい!という気持ちが高座で溢れ出てしまいました

指導してくださった畑佐教授と落語家の柳亭左龍師匠と

マニラで開催された初めての小噺コンテストでした
Writer
フィリピン マニラ
玉置 桜さん

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