日本語パートナーズ派遣事業(短期派遣プログラム)は、派遣先ごとに異なるニーズに対応するため、地域・対象者等を限定したうえで募集を行っています。
今回の東ティモール短期(2025年度)では、過去に日本語パートナーズ(以下、NP)として長期で派遣された経験を持つ方々の中から選考を行い、7名1グループとして派遣し、首都ディリ市内および近郊の中等教育機関や日本語教育機関等で、日本に関心を持つ生徒や、日本語を学ぶ学生等との交流を深めました。
東ティモール短期(2025年度)活動スケジュール
日本語パートナーズ 東ティモール短期(2025年度)
井本 亜希、落合 知奈、上妻 詩萌里、後藤 紀子、
野村 有希恵、松藤 江⺒吏、屋富祖 七海
皆さん、ボタルディ!(テトゥン語で、こんにちは!)
私たち東ティモール短期(2025年度)メンバー7名は、2025年10月11日~19日までの7泊9日間、ディリ市内およびその近郊にある中等教育機関、大学、専門学校にて活動を行いました。
派遣先校での活動の様子・内容
今回訪問した7校は日本語学習については未習、もしくは初級の学校でした。各学校のリクエストも踏まえつつ一緒に楽しめる活動を考え、日本の観光や生活、祭り、ソーラン節、歌等に関するクイズのほか、浴衣、書道、昔遊び等の体験ブースを各校用にアレンジして実施しました。
どの学校の参加者も活動内容だけでなく、実際に言葉を交わしたり、一緒に踊ったり、歌ったりする事をとても楽しんでくれました。特に「みんなで一緒に歌えそうな曲」として事前にNPで選んで準備した、「秦基博の『ひまわりの約束』(作詞・作曲:秦基博)」 を最後の訪問校で生徒達と一緒に歌ったことは、私達の印象に大きく残っています。
東ティモールの言語の多くがもともと口承言語であったからか、みんな耳が良く、日本語を聞いたままの音で同じように発音することが出来ていました。外国語学習経験者なら、それがいかに凄い事なのか想像出来るのではないでしょうか。東ティモールでの日本語教育では、耳からのアプローチを最大限活用出来れば上達が加速するのではないかと感じました。
活動で工夫をしたこと、苦労したこと
今回訪問した7校は、参加する学生が10名ほどの小規模校から100名規模の大規模校までさまざまで、日本語の習熟度も、基本的な会話ができる学生からまったく話せない学生まで幅広くいました。そのため、それぞれの学校の特性に合わせた文化紹介が求められました。
NP同士で知恵を出し合い、大規模校ではソーラン節と歌をメインに会場全体を盛り上げ、小規模校ではブースに分かれて日本の遊び・浴衣・書道等をローテーションで体験してもらうスタイルにしました。また、日本語学習者が多い学校では、日本から持参した日本語⇔テトゥン語の会話サポート用冊子を使い、NPとの自由会話を楽しんでもらう等、工夫を重ねながら活動内容を組み立てていきました。
さらに、「せっかくの日本人との交流の機会だから、形に残るもの・心に残るものをプレゼントしたい」という思いがNP全員で一致し、折り紙で作ったお守りに学生の名前を日本語で書いて渡したり、日本語とテトゥン語の歌詞カードを見ながら、みんなで「秦基博の『ひまわりの約束』(作詞・作曲:秦基博)」 を歌ったりもしました。
活動中は、NP一人が複数の学生を同時に対応したり、急遽活動先が高校から中学校に変更になったりと、ドタバタする場面も少なくありませんでした。それでも学生たちの笑顔や優しさに触れるたび、「この活動をしてよかった」「私たちの思いがちゃんと届いている」と胸がいっぱいになりました。
ちなみに、活動期間中は毎晩NP全員で部屋に集まり、その日の振り返りと翌日の準備をしていました。そのおかげで文化紹介のクオリティは日ごとに上がり、水風船作りの達人が何人も現れる等、「さすがNPやな」とお互いに感心する場面もありました(笑)。大変だったことも含めて全て、一生の思い出になる時間でした。
気付きがあったこと、印象に残ったこと
東ティモールは、アクセスのしにくさで考えると、日本から最も遠いアジアの国なのかもしれませんが、日本との共通点がいくつかあるということに実際行ってみて気づきました。
まず、地理的な特徴についてです。東ティモールに到着し、空港からホテルへ向かうまでの間に車から眺める景色を見て、私たち一同が口を揃えて言ったことが、「え!日本じゃん!」です。その景色は、山々が広がり、まさに日本各地の都市部から少し外れた場所でよく見る景色でした。東ティモールは国土の約6割が山であり、その点が日本と共通していると実感した瞬間でした。実際に首都ディリから少し離れた郊外の学校を訪問した時には、くねくねした山道を車で通り、日本の山道でも経験する車酔いをしてしまったメンバーもいました。
食べ物については、辛いものは少なく、しょっぱいものが多いと感じました。そのため、日本人の口に合い、どのメンバーも毎回活動後はもりもり食べて次の活動に備えていました。
国民性としては、島国であり、また、訪れる外国人観光客も多くないことから、外国人に対してシャイな方々が多いように感じました。その点も日本と似ている部分かもしれません。特に今回の滞在中ずっとお世話になったバンのドライバーさんがとてもシャイな方でした。最初は無口な印象でしたが、最後には私たちを東ティモールの歴史的な場所へ連れて行って熱心に説明をしてくれました。そんな瞬間が私たちにはとても印象に残り、今回の滞在の思い出の1つとなりました。
この活動を今後どのように活かしていきたいか
帰国後は、それぞれが職場や所属団体、大学等で報告会を実施し、現地のコーヒーを味わってもらいながら、東ティモールのリアルな姿を共有しています。「初めて聞いた国」という声も多く聞かれる一方、ASEAN加盟の時期と重なったこともあり、日本における東ティモールへの関心が高まり、多くの人が耳を傾けてくださっています。
また、映像や書籍で理解を深めたり、SNSで発信を続けたりする等、現地で得た経験を学びや情報発信につなげているメンバーも多くいます。
今回の経験を活かし、周囲の人に東ティモールをより身近に感じてもらう機会を広げるとともに、東ティモールに限らず身近に暮らす外国人の方々とも文化を語り合い、日本での生活を支えられる存在でありたいという思いを、参加者全員が強く持っています。
東ティモールの醍醐味、面白さ等
短い派遣期間中、多くの現地の方と交流できた中で興味深い発見をしました。
日本の平均年齢は48歳なのに比べ、東ティモールの平均年齢はおよそ20歳で、数字から見ても非常に若い国だということです。ディリ市内を見渡しても若い人や子どもが非常に多いと感じ、今後の国の発展が非常に楽しみだと感じました。
現在は若年層の失業率が非常に高いという社会課題も抱えていますが、家族に囲まれのんびりと暮らしている人が多く、日本とまた違う幸せを実現しているのだと感じました。
日本語教育はまだ国内で浸透はしていないものの、東ティモール人の言語学習能力は非常に長けており、複数言語を話す人が大半で、その多くはSNSのコンテンツで学習しています。
若者も日本文化に関心のある人が非常に多く、この国で日本語教育が発展した際には、日本と深いつながりができることが期待されると思いました。












