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経験者に聞く

参加者の声(ラオス)-日本語パートナーズ、現地の日本語教師・生徒

ラオス8期 アンナさんへのインタビュー

NPに応募したきっかけ

私がNPに応募したきっかけは、海外の日本語教育に興味があったからです。
私はNP応募以前の2022年夏に日本語教師の資格を取得しました。資格取得後、今後の日本語教師のキャリアを考えていく中で、海外の日本語教育について知りたい・知る必要があると強く考えました。日本語の教授経験がない私でも海外の日本語教育に携われる機会はないかと国際交流基金のウェブサイトを見ていた際にNPの募集を見つけ応募しました。

派遣先校での一番の思い出

派遣先校での一番の思い出は、ラオスで10月に行われる「教師の日」です。

ラオスでは教師の日があり、当日は教師を労わるために学校はお休みになります。しかし、銀行やスーパー等、教師以外の職業の人たちにとってはただの平日なので通常通り営業します。これだけでも日本の祝日とは違っていて面白いところですが、私が一番の思い出として取り上げる理由は別にあります。

私が派遣されていた学校では教師の日に合わせて、放課後に先生たちのスポーツ大会や1日授業を休んでセレモニーが開催されていました。教師の日関連の行事が行われる10月上旬は私がまだ派遣先校で正式に活動を始めて1か月も経っていませんでした。それにも関わらず、多くの生徒が私の顔を見て駆け寄って挨拶したり、お礼を伝えてくれました。生徒だけでなく、セレモニー後の先生たちの食事会では、ダンスに誘ってくれたり、飲み物や食べ物を勧めてくれる等日本語の先生以外のたくさんの先生が私に声をかけてくれました。私はまだ派遣されて間もないのに、自分はこの学校の先生にも生徒にもまだ何もできていないのに、彼らはまるでずっと前から私がこの学校の一員だったかのように振舞ってくれました。お客様扱いするのではなく、仲間の一人として自然と溶け込めてしまうことに感激しました。
そのため、私の派遣先校での活動は、自発的に何かを成し遂げたというより、そんな風に自然と受け入れ、何も届けられていない私に感謝を示してくれた派遣先校の先生・生徒全員に恩返しするような、期待に応えたいともがくような、そんな気持ちで活動していました。そんな私の派遣期間の心構えを与えてくれた「教師の日」が私にとっての一番の思い出です。

教師の日の様子は、アンナさんが派遣中に寄稿された「パートナーズの声」にも掲載されています。
パートナーズの声「教師の日

セレモニー中に生徒からお花のブーケをもらう様子
CPと「教師の日」を祝う掲示板の前での集合写真

NPの経験を通して学んだこと

私がNPの活動を通して学んだことは、「人を大切にする」ことです。ラオスでの派遣を通して、人間の根本的なことを多く学んだように思います。

派遣中のある日の出来事です。私は派遣先校から帰ろうと一人で歩いていました。生徒の下校時間と重なったため校門の周りには生徒がたくさんおり、私の顔を見てさまざまな言語で挨拶をしてくれる生徒たち。その校門を抜け一人で歩いていると、黒い大きな犬が道をふさいでいました。私の同期は4人中2人はすでに犬に嚙まれている、しかも私は日本でも大の犬嫌い。怖くて校門に引き返してしまいました。するとさっき挨拶してくれた1年生(日本の小学6年生)が「先生何してるの?帰らないの?」とラオス語で話しかけてくれました。「犬嫌い。犬いる。」そんな簡単なラオス語しか言えない私の状況を察した彼女は私の手を握って「パイ ナムカン(一緒に行こう)」と手を引いて歩き出してくれました。「犬かわいいじゃん!先生弱虫!」きっとラオス語でそんな風にいじられていたんだろうと思います。でもその時の彼女の小さな手といじわるそうに笑う笑顔を私は忘れることはないでしょう。

そのほかにも、日常的に生徒や先生が「どこに行くの?」「ご飯食べた?」とラオス語で声をかけてくれました。食堂で昼食が買えずに一人で彷徨っていると「代わりに買おうか?」と声をかけてくれる生徒。生徒も先生も関係なく、国籍や言語も関係なく「一緒にご飯を食べよう」と誘ってくれることもたくさんありました。校外でも、私が飲食店に行き、たどたどしいラオス語で注文していても嫌な顔せず一生懸命に理解してくれようとする店員さん。

ラオス人の心の温かさに触れる度、「私は日本で、彼らのように自然な優しさで他者と接したことがあるだろうか?」と自問自答せずにはいられませんでした。困っている人に気付いて手を差し伸べる、一人で不安そうな人に簡単な会話で相手を思いやる、そんなラオス人のあり方から私は「人を大切にする」ことを学びました。

帰国後、現在の職業・活動に活かされていること

私は現在、国際交流基金のEPA(経済連携協定)日本語予備教育事業の講師として、フィリピンのマニラで勤務しています。
NPとしてラオスに派遣されたことで、「日本語教師」と言ってもさまざまな選択肢があることを知り、今の仕事につながっています。
何より、NPとしてラオスで活動する中で、「日本語教育に携わる楽しさ」を学び、現在の仕事の選択へと繋がりました。
そして、今後も日本語教師としてキャリアを積んでいこうと考えていく中で、「NPとしてラオスに派遣されたこと」は私の日本語教師キャリアの原点であり、最初のステップです。ラオスで海外の日本語教育を知ることができたこと、そして日本語教師という専門的な視点ではなく一人の日本語母語話者として日本語教育に携わったこの経験は、今後日本語教師として働いていく中で必ず活きてくると確信しています。

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