津島さんの派遣先校のCPへのインタビュー
NPを受け入れて良かったこと
NPが私のパートナーとなってくれて良かったことは大きく二つあり、一つ目は教材作成の補助をしてくれたこと、二つ目は授業中のアシスタントを担ってくれたことです。
教材作成に関しては、カタカナカードや文字カード、絵カード等さまざまな種類のカード教材作りや、日本文化紹介用のパワーポイント資料作りを手伝ってくれました。カード作り一つをとっても、印刷したカードを細かく切ってラミネートし、生徒の人数ごとに枚数分けをして、と細かな作業が多く発生しますし、パワーポイント作り等、NPが得意な分野で資料作りをしてくれたことは、大きな助けになりました。
授業中には、私が言った例文や漢字をNPにホワイトボードに書いてもらっていました。生徒たちは、私が言ったことを耳で聞き、NPが書いた文字を目で見ることで、常に複数の感覚を刺激しながら学ぶことができました。読みの練習や会話練習のロールプレイの際に、日本人の発音を聞くことができたのも、生徒たちにとって貴重な経験になったと思います。最初はお互いにしたいことが分からなくても、授業を重ねるごとにNPとのチームワークも良くなっていき、派遣期間の後半にはNPに直接お願いをしなくても、授業中のアイコンタクトで言いたいことが伝わるようになっていきました。NPが日本に帰ってしまった今、一人で授業をするのが大変だと感じています。
NP受け入れ後の生徒の変化
一番大きな変化は、日本語の勉強に対する生徒の意欲が高まったことです。
以前は、授業中の問いかけに挙手を募っても誰も答えたがらないため、私から指名していましたが、NPが来てからは「先生、先生!」と手を挙げるようになりました。答えに自信がなくて手が挙げられなかった生徒も、恥ずかしがっていた生徒も、皆授業へ積極的に参加するようになりました。NPが正解した生徒にシールを渡す等、活動への参加を促すアイデアを出してくれたのも要因の一つですが、何より本物の日本人と話したいから頑張りたい、という思いが生徒たちにはあったと思います。
ある日の授業中、友達の誕生日を尋ねる課題を出したところ、NPの誕生日を知りたい生徒たちは、自発的にNPに日本語で話しかけていました。NPと話したいので、自分で授業後に調べたことを翌日NPに聞いたりする生徒もいました。小さなことでも、たとえ一文だったとしても、自分で実際に日本語で言うことができるのは、嬉しくて楽しいものです。勇気を出して日本語で問いかけて、NPがそれを理解して答えてくれたという経験は、生徒たちにとって大きな喜びになったようです。日本語教師として、生徒が自分から日本語で話そうとする姿を見ることができたのは、何よりも嬉しいことでした。
NPとの一番の思い出
私たちの学校では、「外国語週間」というさまざまな国の言語や文化にまつわる学習や経験を促すイベントを毎年開催していますが、その際にNPと一緒に日本の文化紹介に関する活動をしたことが一番の良い思い出です。
以前は実施したい文化紹介があっても、一人では難しく諦めざるを得ないこともありましたが、NPが協力してくれたことで、相談しながら準備を進めることができました。その結果、流しそうめんや書道、浴衣やコスプレ衣装を着用してのお茶会等、たくさんの活動を実現させることができました。
特に、流しそうめんは以前から実施したいと思っていたことの一つだったので、大仕事でしたがNPと一緒に竹を切って、流しそうめん台を作り上げました。当日は、日本語クラスの生徒だけでなく、他の選択科目の生徒たちも流しそうめん体験を楽しんでおり、学内全体へ日本文化に触れる機会を提供することができました。
NPに期待すること
大前提として、NPは熟練の教師や専門家ではなく、あくまでも「普通の人」ということをいつも念頭に置いています。私はこれまでに2名のNPを受け入れる機会に恵まれましたが、年齢も性別も、もちろん性格や得意なことも違いました。最初からすぐにベストパートナーになるのは難しくても、個性にあわせて活動を共にしていくことを心掛け、時間をかけて調整していけば、どんな人でも良いパートナーになれるという自信があります。
その上で、あえて挙げるとすれば、NPが「きれいな人」であることを期待します。それは見た目が美しいということではなく、心が「きれい」だということです。生徒たちはまだ人生経験が浅く、さまざまなことを学んでいる過程にあるので、限界を決めつけず、彼らの力をどう伸ばしていけるか私と一緒に考えてくれる人だと良いですね。
NPが生徒たちの好きなことや流行を考えたり、調べたりして、興味を引き出す活動や遊びを取り入れることも重要だと思います。結果に囚われ過ぎず、学ぶ過程を大切に、時には練習に付きあったり、休み時間に一緒に遊んだりと、生徒が楽しく学習できる工夫や仕組みをNPが考えて活動してくれれば、きっと生徒たちのためになることでしょう。
それから、マレーシアと日本は、言語だけでなく生活習慣や食文化も異なります。派遣前に、マレーシアはこんな国という事前知識を身に付けることも大切だと思いますが、マレーシアに来てから新しく知ることや初めて体験する文化もたくさんあると思います。そんな時のために、NPの皆さんも広い心で対応するための心の準備ができていると良いと思います。
NP派遣事業は双方向の素晴らしいプログラムなので、今後も広くマレーシアの学校で継続していくことを期待しています。
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