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経験者に聞く

参加者の声(タイ)-日本語パートナーズ、現地の日本語教師・生徒

タイ11期 安達 智子さんへのインタビュー

NPに応募したきっかけ

コロナ禍で世界中のあらゆることがストップし、私自身の今までとこれからのキャリアについて考えていたとき、偶然「日本語教師養成講座」のパンフレットを目にしました。
国際交流や異文化に興味を持っていたことと、以前カナダに住んでいた頃に日本語学習者の方たちにうまく日本語の説明ができなかった経験を思い出し、日本語教師養成講座を受講することにしました。

コロナ禍では養成講座もオンラインでしたが、たまに校舎に行かなければならない時があり、たまたま行った校舎で偶然「日本語パートナーズ」のチラシに出会いました(しかも最後の1枚)。そこには私が経験したいこと、やりたいこと、目指していることがぎゅぎゅっと詰め込まれていました。「これだ!」と思い、国際交流基金のウェブサイトでNPのことを調べ、応募することにしました。一般企業で仕事をしながらの養成講座はハードでしたが、「NPになる」という目標ができたので、「何が何でも終了させる」という今思うと変な使命感がありました。こんな偶然が重なり、NPに応募しました。

派遣先校での一番の思い出

思い出は数多くあり、どれが一番かを決めるのはとても難しいです。
初めての授業で緊張したこと、仏教キャンプ、七夕、日本語キャンプ、運動会、クリスマスといった学校行事、職員室でのソムタム(パパイヤのサラダ)作り、車で連れて行ってもらったランチ、生徒とのおしゃべり等……思い出は尽きません。

強いて一つ挙げるなら、日本文化体験で行なった「巻き寿司作り」です。
私は普段の授業でも生徒自身が考え、発言することに重点を置いて授業に臨んでいました。日本文化体験もCPやNPが内容を決定するのではなく、生徒に作りたいものをアンケートし巻き寿司に決めました。

巻き寿司を作るにあたり、生徒たちをグループに分け、それぞれ何をどう巻いたらきれいで美味しくなるのか、何を用意するのかを話し合って決めてもらいました。
話し合いでも学年ごとの特色がよく出ていて、M6(日本の高校3年生)は冷静に淡々と話し合い、グループワークが得意なM5(日本の高校2年生)は効率よく担当を決め、M4(日本の高校1年生)は何を巻くかに夢中で時間内に決まらず放課後居残り……。

体験授業当日も個性がよく出ていました。一番驚いたのはM6の生徒たち。
M6は高校生活のほとんどがコロナ禍でオンライン中心の授業でした。そのせいかはわかりませんが、どこか冷めた感じにも見え、自分から発言することも苦手な生徒が多いように感じていました。
そんな彼らが準備万端で授業に臨み、涙を流すほど大声で笑って楽しそうに巻き寿司を作っていました。
私のために納豆巻を作ってくれたり、日本食レストランでアルバイトをしている生徒はアルバイト先で練習までしてきていました。そして、今までで一番楽しい授業だったと言ってくれました。

M5は予想通りにチームワークを活かし、上手に作って時間が余るほど。M4は驚きと笑いの連続でした。お寿司をたくさん食べたいからとご飯を炊飯器ごと持って来た生徒、肉巻きを作ると朝早くからお皿一杯にお肉を調理してきた生徒、そしてほとんどの生徒が具の入れすぎで巻けずに爆発してしまいました。本当に楽しい時間でした!

NPはCPとのチームティーチング(NPはCPのアシスタントとして授業をサポート)だけでなく、日本文化紹介も行います。机上の学習プラス五感に触れる日本文化の体験で、生徒の興味をさらに引き出し、学びにつなげることができると気付きました。

楽しみながら巻き寿司をつくるM6の生徒たち

NPの経験を通して学んだこと

とりあえず行動してみること、固定観念にとらわれ過ぎないこと、たまには諦めてみること、人目を気にし過ぎないこと等、NPの経験を通して学んだことはたくさんあります。

NPに応募した時も勇気がいりました。でも思い切って行動したことでNPへの道が開けました。
派遣先で思い悩む時もありました。私は一人で抱え込んでしまいがちな性格で、辛い時も辛いと言えず平気な顔をしてしまいます。でも思い切って助けを求めると、いろいろなところから助けの手がのびてきて、まずは行動してみることの大切さを知りました。

私の趣味は海外旅行で、日本の常識に当てはまらないその国の習慣に触れることが大好きです。
しかし、長期で生活するとなると習慣・慣習の違う国の人間同士がお互いに理解し合うのはとても難しいことだと感じました。
「なぜ?どうして?」「わからない、わかってもらえない」と考え過ぎて、それまでうまくいっていた人間関係に溝ができそうになったこともあります。そんな時に無理に相手を理解しようとしたり、自分のことを理解してもらおうとせず肩の力を抜いてみると、気持ちが楽になり、不思議と人間関係もうまくいくようになりました。
いつの間にか頭が凝り固まっていたようで、たまには頑張らなくても良いと、考え方が柔軟になりました。

帰国後、現在の職業・活動に活かされていること

派遣中に日本の高校生とオンライン交流会を行いました。その時に日本にいる外国にルーツを持つ子どもたちへのサポートの必要性を知り、多文化共生、日本語教育への関心がますます高まりました。
現在は前職に復職し、その傍ら日本語学校で非常勤講師をしています。授業準備は大変ですが、いろいろな夢を持って日本にやって来た多国籍の生徒たちとの授業は、刺激と楽しさでとても大切な時間です。新しい一歩を踏み出せたのも、NPの経験があったからだと思っています。
タイの派遣先校の生徒たちの中には、日本留学の夢を持っている生徒もいました。いつか彼らが日本に留学し、また私の生徒になってくれたら……そんなことを考えつつ、自分ができることを見つけていきたいと思っています。

帰国前、CPといっしょに
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