西舘さん、浜桐さんの派遣先校のCPへのインタビュー
日本語教師になるきっかけ
私が学生の頃、ベトナムでは日本語学習の人気が高まりつつある状況で、英語以外の言語を学んだほうが将来役に立つのではないかと思い、日本語を学ぶことにしました。
大学4年生のときに交換留学プログラムに参加し、日本の大学に1年間留学する機会がありました。日本への留学を通して感じたのは、日本人の日本語教師が日本語を教えてくれるのと、自国でベトナム人日本語教師が日本語を教えてくれるのはやっぱり違うなということでした。
それからベトナムに帰国し、大学を卒業した後に日本語を使う会社に就職しました。生徒に日本語を教えることに興味があったので日本語教師になりたいと思っていましたが、当初はその機会には恵まれませんでした。
そんなとき、知り合いから依頼があり、昼間は会社で働きながら、夜に家庭教師として日本語を教えることになりました。最初は純粋な興味から教え始めましたが、教えているうちに生徒たちが日本語の学びの中から得られる喜びや興奮等を肌で感じ、学ぶことの楽しさを伝えるという教育の醍醐味を感じるようになりました。そこから仕事を辞めて、日本語教師のキャリアを本気で目指すことを決心しました。
これまで活動を共にしてきたNPについて
ベトナム9期の西舘さん、ベトナム10期の浜桐さんを含め、合計5人のNPと活動を共にしてきました。
西舘さんは私よりも年上でしたが、学校のあらゆる活動にとても熱心で、フレンドリーな方でした。私だけでなく、学校の生徒たちからもとても人気がありました。
浜桐さんはフエの人と蓮が好きだという共通点がありました。浜桐さんは芸術に情熱を持っていて、フエの文化・芸術について学びたいという強い意欲がある方でした。
NPを受け入れて良かったこと
まず一つ目に、どんな外国語を学習するにも、その外国語を使う国の人や文化に直に接する機会があれば、早く学ぶことができ上達すると思っています。ですから、国際交流基金がNPを派遣することは、生徒・教師はもちろん学校にとっても貴重な機会ですし、よりよい日本語教育が実施できていると感じています。NP派遣事業のおかげで、生徒たちが日本へ行かなくても日本人と会え、直接気軽に話せるのはとても良いことですね。
二つ目は、何気ない会話のときでも生徒たちの発音や言葉遣いをNPに直してもらえることです。そのため、NPを受け入れている私たちの学校の生徒は、日本語で簡単な会話ができます。NPと話すときに、正しい発音や言葉遣いに直してもらえて日々学びになることは本当に良いことだと思っています。
NPが来たとき、最初は生徒たちが恥ずかしがってあまり話せなかったのですが、本当はNPに興味を持っていて、心の中では話したがっているようでした。NPに自分の考えを伝えられるように、自発的に日本語を勉強して、何とか日本語でNPと上手く話せるように工夫している様子が見えました。簡単な言葉しか覚えていなくても、とてもためになる実践的な練習方法で、NPを受け入れているからこそ、授業とは違った状況が自然と生まれて会話練習になっているのだと思います。
NP受け入れ後の生徒の変化
私が初めてNPを受け入れたとき、生徒が40人いましたが教師が私一人だったためか、NPはとても不安そうに見えました。授業中に生徒がNPに質問したり反応したりすることが全くなかったこともそう感じさせたのだと思います。NPが心配して「生徒たちは私の話している内容を理解できるのかな?」、「日本について、私自身や私が言ったことに興味があるのだろうか?」と私に聞いてくるほどでした。
そこで私は生徒たちに「NPのことをどう思う?」「何でNPがいる授業で何も聞かないの?」と尋ねました。すると生徒たちは「私たちもNPと話したいですが、日本語が上手ではないので言い間違ったらNPが困ってしまうかと思い、上手く話しかけられないのです」と戸惑っていることが分かりました。
NPは生徒たちと話すことを諦めず、生徒たちが答えられるように簡単な言葉を選んで、熱心に生徒たちに話しかけていました。例えば、朝、生徒に会ったときに、NPが「朝ご飯食べた?」「昨日はどうだった?」とよく声をかけていました。生徒たちは教科書で習っていない単語でも、インターネットからその写真を見つけてNPに見せたりして何とかコミュニケーションをとろうと頑張り、NPも耳を傾け丁寧に受け答えをしていました。それから時間が経つにつれて、生徒たちはどうやってコミュニケーションをとればいいか、何を話題にして話せばいいか分からなかった状態から、「昨日、スーパーで見かけたんだよ」等と自然と話しかけられるように変化しました。生徒たちが積極的にNPに話しかける姿を見ると、私はとても幸せな気持ちを感じるようになりました。
NPとの一番の思い出
私の願いは、NPが生徒たちに日本語や日本文化を教えるだけでなく、生徒からもNPにベトナム文化を紹介できるようになることです。NPが生徒たちに浴衣の着付けや演劇等の日本文化をたくさん紹介してくれたので、私も生徒たちも今度はベトナムの文化をNPに紹介したいと思っています。
ベトナム9期 西舘 真弓さんとの思い出
西舘さんの熱意と的確な仕事ぶりには、とても感銘を受けました。西舘さんは私に授業のアイデア等たくさんのことを提案してくれました。
例えば、私が「水引飾り」の文化紹介を考えていたのですが、実施するのはかなり難しいと思い、少し諦めかけていました。そのことを西舘さんに相談してみたところ、西舘さんは私の思いを叶えようと尽力してくれました。そのおかげで、生徒たちも張り切って一生懸命準備をしてくれました。
西舘さんのアイデアで、クラス内でグループに分かれ、手先の器用な生徒が困っている生徒に教え、互いに助け合って作業をするように進めました。
西舘さんと生徒たちの熱心な気持ちがあったからこそ、無事に生徒たちへ「水引飾り」の文化紹介をすることができました。

また、学年末のとある授業では、12年生(日本の高校3年生)のために授業の中で日本語学習の修了証書授与を行い、生徒たち一人ひとりに修了証書を手渡しました。生徒たちは日本語学習していたときのことを思い出し、西舘さんのこともとても懐かしがっていました。

また、西舘さんと私は、仕事だけでなく私生活等さまざまなことについてよくおしゃべりしました。私が結婚することになったと西舘さんにお知らせしたところ、「私も結婚式に出席したい」と言ってくれてとても感動しました。西舘さんは私と親友のように接してくれて嬉しかったです。
ベトナム10期 浜桐 陽子さんとの思い出
ある日、生徒が浜桐さんに「Cà phê muối(以下、塩コーヒー)を飲んだことがありますか?」と尋ねました。浜桐さんが飲んだことがないと答えたので、浜桐さんに塩コーヒーの作り方を紹介しようということになりました。
生徒は浜桐さんと一緒に塩コーヒーを作るための材料を準備して、浜桐さんに説明するために塩コーヒーに関する日本語の単語を一生懸命調べていました。これはとてもいい双方向の交流を兼ねた学習だと思いました。
このようにNPがベトナムのことについてより深く理解し、生徒たちも日本語を勉強し、双方向の交流を実現できたことが私にとってNPとの一番の思い出です。

また、浜桐さんはフエをはじめとするベトナム文化にとても興味がある方で、フエの伝統芸術についてよく私に質問してくれました。タイミング良く、私の知り合いがフエの街を紹介する文化と芸術に関連したテレビ番組を企画していたので、浜桐さんを紹介しました。浜桐さんも最初はテレビ番組に出演することを躊躇していましたが、番組でのインタビューに参加しながらフエの名所を訪れることができるので、文化を学ぶ良い機会になると熱心に勧めたところ、快く了承してくれました。学校でも撮影を行い、観光スポットを巡りながらフエでの魅力あふれる浜桐さんの経験を共有してくれました。
テレビ番組の内容は、以下のYouTubeからご覧いただけます。
フエ地方TV局TRT (Thua Thien Hue Radio and Television) 制作「浜桐さんの特別な街フエ」
NPに期待すること
これまで私たちの学校に派遣されたNPは皆とても優秀でアイデアあふれる方々でした。日本語教育の質を向上させるために、今後も継続的にNPを派遣して欲しいです。NPにはそれぞれ独自の性格、ユニークな長所、経験があり、それぞれのNPの活動や授業での接し方は同じではなく、皆さん違ったアイデアを持って協力をしてくれます。それこそが、NPがベトナムに来て活動する上でのユニークで良い点だと思います。
今後は、NPが日本文化を生徒に紹介するだけでなく、生徒がベトナム文化を日本語でNPに紹介する活動もできたらいいなと思っています。