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国際交流基金アジアセンターは国の枠を超えて、
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「Bordering Practice」と「Imaginary Line」――交錯するアジアのエレクトロニックミュージックシーン

Review / Asia Hundreds

次の可能性を探るために

Jun Yokoyama:これまで4年間のプロジェクトを振り返り、そして仕上がったミュージックビデオを見てきたわけですが、この一連のプロジェクトでの経験を通じ、今後、自分のレーベルやコミュニティでの教育、そして自身のアーティスト活動で生かせそうなことがあれば教えてください。

similarobjects:何より大きかった経験は、異なる文化的背景をもつ人と互いに理解し合う、ということでした。今は、自信をもって「分かり合える」って言うことができます。そのことが、非常に自分の実になったし、僕自身の基本的な考え方にもなりました。同時に、場所によって慣習が異なることも十分に理解できたように思います。こうして得た学びは、自身の文化に対する意識の幅を大きく広げてくれたようにも感じていて、そのことはマニラでの教育活動にも生かせると思っています。このプロジェクトで出会った人との関係は、今後も続けていきたいし、一緒に過ごしたアーティストと再び音楽をつくること、その可能性を常に探っていきたいと思います。

tomad:このプロジェクトでは、アジアのアーティストをあまり知らないなかでひとつひとつ調査をして、アポイントをとり、実際に出会って、そこから次につなげていく、そのための方法を常に考え続けてきました。イベントをやり、作品を実際につくるというプロセスと、その発展はとても興味深かったです。ここにいるメンバーとこれからも色んなものをつくっていきたいなと思っています。
また、都市ごとに多様なやり方で文化的な活動をしている同世代、そして僕よりも若い10代から20代の人たちと出会って、彼らの手法や文脈を実際の制作を通して知ることができました。それにより、僕自身も東京という一つの枠にとらわれずに相対的な視点を持てるようになりました。自分のレーベルやその他の活動についても、より柔軟に考えられるようになったことはこのプロジェクトを経て生まれた大きな収穫だと思います。

Imaginary Lineの写真1
ライブイベント「Imaginary Line」でのコラボレーションセットの様子
撮影:Jun Yokoyama

Jun Yokoyama:AstronormousやMantra Vuturaは、今回のライブに参加してみてどうでしたか。

Astronormous:まさか日本に来てライブをする機会が自分たちに訪れるなんて思ってもみなかったです。インターネットを通じて知っていた憧れのアーティストと会えて、共演もできました。僕たちにとって昨日のライブは、ベトナムの外でライブセットを披露する初めての機会でもありました。tomadさんに「東京に来て、ライブセットでパフォーマンスをしてほしい」と言われたとき、完成している楽曲もあまり手元になかったので、それからは本当に一生懸命にオリジナルの楽曲制作に取り組みました。そういうプロセスも含めて、人生を変える経験になりましたね。

Mantra Vutura:昨晩のライブでは、オーディエンスが想像以上に盛り上がってくれてうれしかったです。このプロジェクトを通じた関係性を今後も生かしつつ、これからどんなことができるか可能性を探っていきたいと思っています。技術レベルを上げるための探求ももちろんありますが、この関係性を生かすための探求もしたいと考えています。TohjiさんやAstronormousさんともコラボレーションしてみたいですね。

Imaginary Lineの写真2
Imaginary Lineの写真3
ライブイベント「Imaginary Line」でのAstronormous(上)とMantra Vutura(下)のパフォーマンスの様子
撮影:Jun Yokoyama

Jun Yokoyama:僕自身も、もっと色んなアーティストがアジアのなかで一緒に何かやっていったらいいなと思うんですが、みなさんにこれからの展望はありますか。

tomad:せっかくこうして作り上げた関係なので、これからも各レーベルやアーティスト同士がつながってイベントや制作などができたらいいなと思います。ジャカルタやマニラの音楽シーンは、アーティストもオーディエンスも若い人が多いので、これからどんどん盛り上がっていくと思います。そこに日本のアーティストの音楽も紹介したいと思っています。

Rezky Prathama Nugraha(以下、Rezky):昨夜のライブですが、similarobjectsとPARKGOLF、Mantra Vuturaのコラボレーションのセットがとても良い仕上がりでした。これまでのすべての経験が凝縮したようなパフォーマンスでした。だからこそ、このプロジェクトで関係した各都市でもツアーをしたいです。それと、楽曲の制作においても、またコラボレーションしたいですね。Double Deerにはシンガーもたくさんいるので、Buwan Buwan Collectiveでビートをつくり、歌をつけて、Maltine Recordsで楽曲にしていくようなことができるんじゃないかと。こうした協働制作は、いまならインターネット経由でできちゃいますしね。

similarobjects:僕もこのプロジェクトをベースにして、これからもいろんな交流を続けていきたいと思っています。もちろん音楽制作やレーベルとして、というのもありますが、友達としてもずっとつきあっていきたいです。みなさんの活動に対して僕にできることがあれば、ぜひ声をかけてください。マニラにあるコミュニティやオーディエンス、会場など、音楽のプラットフォームを提供できると思います。

Jun Yokoyama:じゃあ、次はみんなでどんなことに挑戦しましょうか。

tomad:島を借り切って、みんなで1週間くらい泊まって、音楽をつくって、大きなフェスをやりたいですね。

Rezky:インドネシアだから、いい島は確保できるよ(笑)。

similarobjects:フィリピンにだっていい島はたくさんあるよ(笑)。

集合写真
ジャカルタでのライブイベント「Bordering Practice」の出演者・関係者ら
撮影:Jun Yokoyama

【2019年8月25日、FabCafe MTRLにて】


トークイベント撮影:稲垣謙一
編集:廣田ふみ、鹿島萌子(国際交流基金アジアセンター)