2学期が本格的に始動するやいなや、日本語に関する大きなイベントがあった。私の派遣先校であるチュラポン・チョンブリはスーパーサイエンス校に指定されており、今まで日本語スピーチコンテストに参加したことがなかったのだが、急きょ初出場を決定。私も日本語スピーチ大会での審査員を頼まれた。
スピーチには、高校2年生の女子2人と、中学3年生の男子生徒が出場希望を出した。出場決定から本番までの準備期間、なんと実質1週間。残念ながら高校生のほうは、原稿推敲(すいこう)の段階で、内容・長さともにスピーチ原稿にできるほどのものを作れなかった。中学3年生の男子は、着任早々から不思議な異彩を放つ生徒だと思っていた。日本のアニメからの知識で、かなりの潜在的日本語力を持っていた。その場ですらすらと書いた原稿(テーマ:私の親友)に、私は思わず涙した。親友を失う話だった。その内容を最大限尊重して、タイ人の日本語の先生と猛特訓をした。本番出場の朝、彼は学校の中にある仏陀(ぶっだ)に祈っていった。結果は、ノーミスで最高の出来栄えだったが、僅差で、難しい日本語を滑らかに話した他校の生徒が選ばれた。がっかりしながらも、「次、頑張る」という彼の言葉に励まされた。ちなみにこの生徒の語った「親友」は、スピーチ前日に女子であることを知って驚いたのだが、どうやら彼には異性ではないらしい。タイでは、このようなことが日常的にある。