今回は、少し前の話ですが、タイプーサム(Thaipusam)についてご紹介します。「タイプーサム」は、タミルの人々により執り行われるヒンドゥー教の神聖な宗教儀礼で、ヒンドゥー教徒が多く住むマレーシアでは、毎年200万人以上の信者が1月下旬から2月上旬にバトゥ洞窟で行われるタイプーサムに参加するそうです。 バトゥ洞窟は、私の学校の近くにあるので、行ってみたところ、人、人、人、そして、暑さで盛り上がっていました。
この巨大な洞窟は272段もの階段の上にあり、マレーシア随一のヒンドゥー教の聖地とされており、洞窟内ではヒンドゥー神話に基づく展示や壁画が見られました。
バトゥ洞窟の入口に建つ巨大なスカンダ像は高さ42.7m。2006年に建設
当日は、夜明け前から身体を清めた信者達が善行と感謝の気持ち、信仰心を示すために様々な様式や苦行を行うそうです。昏睡状態の信者が身体にいくつもの針を刺して飾りつけ、行列をつくって洞窟へ向かいます。見るからに痛々しい姿です。1ヶ月前から信者達は菜食、禁酒、禁欲をして精進を始め、物質的欲求から開放され、身体が肉体的快楽を欲さなくなったときに始めて、痛みを感じることなく神聖な苦行をできるそうで、神が身体に宿るので痛みはないと言います。 信じる者のみぞ体験する術ですね。
タイプーサムの苦行は、非常に危険なため、他国では禁じられていて、マレーシアとシンガポールでのみ盛大に行われているそうです。また、驚いたことに、病人や怪我人の応急処置に当たっていたボランティアの青年たちに、ムスリムや中国人の姿を見かけました。
こんな危険を伴う大規模なヒンドゥー教の祭りをイスラームを国教とする国で許すマレーシアという国の寛容さとスケールの大きさに感服します。と同時に祖先の地を離れてもヒンドゥー教という精神文化を堅持するヒンドゥー教徒のパワーとエネルギーにも圧倒されました。