かつて中国の唐代の詩人陶潜は「桃花源記」という文章で、俗世間から隔絶した架空の理想郷に暮らす人々を描きました。その様子を、「鶏犬相聞こゆ(けいけんあいきこゆ)」と述べています。ニワトリや犬の声がのんびりと聞こえる、平和な様子です。タイの田舎も鶏と犬がとても多く、そこらじゅうが、まるで桃源郷です。
私の赴任先の全寮制の学校も、田舎町のさらに郊外にあり、周囲には原野や沼地が広がっています。とはいえ21世紀の現代ですから、珍しい動植物に出会うことは稀ですが、それでも多くの生き物に囲まれた生活を送っています。そんな日常で出会う動物を紹介します。
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どちらも臆病で人の姿を見るとすぐに逃げますが、昼夜を問わずよく鳴きます。チンチョに夜中に枕元で鳴かれて目覚めたことが何度かあります。
牛と水牛も大変に多いです。
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
鳥も多いです。学校の周辺の家々はもちろん、校内に住む先生方の家でも鶏を飼っていて、毎朝一番鶏の鳴き声で目覚めます。雀、鳩、カラスも大変に多い中で、日本では見かけない「インドハッカ」という鳥の多さも目立ちます。鳩と雀の中間の大きさで、甲高い声でけたたましく鳴きます。
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
そして、かくも多くの鳥たちが生きてゆけるためには、餌となる虫も非常に多いということです。食堂や市場の蠅は、追い払いきれないほどだし、蚊に至っては刺されない日はありません。衣服の上からでも刺してくるので始末におえません。そこで我が家ではハエ蚊対策のため、壁や天井はあえて蜘蛛の巣だらけにしてある、蜘蛛の楽園です。たぶん大小百匹以上の蜘蛛と同居中です。また、自宅でも職員室でも、食べ物を放置しておくと、数分~数時間のうちに蟻だらけで真っ黒になります。
でもタイの人たちは蠅も蟻も決して殺そうとはしません。さすが仏教の国です。