2017年3月のベトナム短期派遣(1期)の成功を受けて、再び長崎県で募集し選出された大学生グループが、ベトナム短期2期としてフエとダナンの中学校5校、高校6校を訪れ、長崎の「和・華・蘭」文化や学生生活について紹介しながら現地の文化に触れました。
日本語パートナーズ短期派遣事業では、派遣先ごとに異なる短期派遣へのニーズに対応するため、地域等を限定したうえで公募を行っており、ベトナムについては、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けてベトナムのホストタウンとなっている地域のご協力を得て運営しています。
日本語パートナーズベトナム短期(2期)
森まどか、青野舞、小川淑子、福永楓、堀川みき、山下茉莉花
こんにちは! グループ代表の森です。私たちは、9月17日から30日まで、ベトナム中部のフエ・ダナンで活動しました。ここではテーマごとに、準備から帰国までを振り返りたいと思います。
チームワーク
リーダーを引き受けて少し不安でしたが、いつもメンバーが隣で支え、協力してくれたことで、スムーズに活動できました。個性豊かな女子6人チームで、時には意見をぶつけ合いましたが、夜遅くまで準備したりしながら、チームワークを強められたと思います。
苦労したこと、工夫したこと
自分たちらしい活動のためどうすれば良いか、応募前から色々考えていました。
派遣前研修までは、メンバーの特技を生かした活動を考え、ダンスや俳句を紹介しようとしていましたが、研修で予行練習したとき、俳句はテーマが深く、限られた時間で学んで楽しんでもらうのは難しそう、ベトナムの生徒たち全員が、きちんと参加できるだろうか、などと考えて、見直すことにしました。
1回ずつの訪問でも、現地の皆さんの記憶に残る、私たちにしかできない活動をと思った末、結果としては1期の先輩の活動の良いところも取り入れ、所々で私たちの個性を出すことにしました。
長崎に関連する単語(角煮まんじゅう、長崎くんちなど)を使った伝言ゲームで、皆さんと距離を縮めたあとは、クイズを出題し、日本との時差や長崎の港の様子などについて紹介しました。
また、私は長崎の「和華蘭文化」 ――和(日本)、華(中国)、蘭(オランダやポルトガルの西洋)の3つの文化が交わって出来た独特の文化――と、その歴史について紹介しました。
歴史の話は少し難しいかと思いましたが、みんな真剣に興味を持って話を聞いてくれました。特に、1期の先輩も紹介していましたが、江戸時代から続く「長崎くんち」では、16世紀の朱印船貿易や、ベトナムから来たお姫様「アニオーさん」の行列が、いまも親しまれているということを伝えたことで、「アニオーさん」の故郷ホイアンもあるベトナム中部地域で、長崎をより身近に感じてもらえたと思います。
また、大学生の1日を紹介する動画も、もっと日本語の勉強を頑張って、日本へ留学したいと思ってもらえたらと考えて、大学の環境や放課後の様子をチーム全員で撮影・編集しました。
たこ焼きを作っている場面では、ベトナムのみんなも、たこ焼きを良く知っている様子だったのですが、ベトナムにはない、写真プリントシール機の映像を見てもらったあと、私たちの写ったシールを見せたときは、本物と写真とのギャップに驚かれたりもしました。
最後には、(皆さん日本語で話したい気持ちも強いと聞いていたので、)フリートークの時間もしっかりとって、やさしい日本語で話したり、ベトナムの歌のプレゼントをもらったりと、素敵な時間を過ごすことが出来ました。
現地でもらったアドバイス
到着後のリハーサルから帰国まで、ベトナムで多くの方のサポートがありました。
フエやダナンで日本語教育の専門家として働いている先生方には、各学校の日本語の勉強の進み具合や、伝わりやすい話し方などアドバイスをいただきました。
また、長期派遣されている日本語パートナーズの方々や、ボランティアで通訳をしてくれたベトナムの大学生ほか、多くの方に助けてもらえて、良い活動ができたと思います。
ベトナムの生徒さんたちを飽きさせない、アクティブな交流活動を考えるきっかけをいただけて、積極的に日本語で発声する場面を作るとか、体を動かすとか、クイズの正解者に賞をあげるなど、工夫を加えていきました。
それぞれの街
フエは古き良きベトナムという雰囲気で、ハノイやダナンよりのどかな町でした。
私たちが最初に活動した街で、緊張しながら最初のクラスに臨んだのを覚えています。
「ベトナムの子供達は元気だよ!」と聞いていたのですが、フエでは比較的シャイな性格の子たちが多くみえて、最初は楽しんでもらえたか不安でしたが、長期パートナーズの方や先生から「すごく楽しんでいた」と聞いて、良かったと、とても安心しました。
日本語を専門的に学ぶ高校や日本語教育に熱心な学校があり日本語レベルが高い一方で、生徒さんが照れてしまったせいか、会話をつづけることが難しかった場面もありました。
しかし、ダンスや歌を通して、ノンバーバルの交流も楽しむことができました。旧市街の王宮にボランティアの大学生と一緒に行くこともでき、フエの人と街を知ることができました。
ダナンは、近年リゾートとして人気が高まっています。その影響か、日本や中国、韓国などからの旅行者も沢山みかけました。フエより都会ですが、きれいな浜辺もあり穏やかな時間が流れていました。社交的な生徒さんが多く、一緒にご飯を食べたりなど、学校外でも交流できました。
ホイアンに近いこともあってか、「アニオーさん」の話を知っている子もちらほらいて、「アニオーさん」の由来が「アイン・オーイ(お兄さん!)」だとズバリ正解を言い当てる子もいて驚きました。
ふりかえり
出発前は、「ベトナムの子ども達に何か伝えないと!」と思い、与える側の責任を感じていました。しかし、振り返れば、私たち自身が受け取るものが多かったように感じます。
今回、日本や長崎を紹介して、私たち自身が日本や長崎の魅力を再発見できました。特に、ベトナムと長崎がこれだけ長い歴史を持っていることは、長崎出身の私にとっても新しい学びでした。古くから世界と日本をつなぐ窓口だった長崎だからこそ、これからも海外との交流が進めばいいなと思います。そして、私たちの活動をきっかけに、ベトナムの皆さんがもっと日本や長崎に興味を持ってくれて、もっと日本語を学びたい気持ちを高めてくれればと思います。
今回、未知だったベトナムを知る機会を得ることができ、準備や活動は大変でしたが、何より、ベトナムの子どもたちの笑顔は、頑張って良かったと感じさせてくれるものでした。この経験は皆にとって本当に貴重なもので、学んだことを、それぞれ夢や目標に生かしていきたいと思います。
日本語パートナーズベトナム短期派遣メンバーでは、1期生のうち2名が、活動経験を生かし、帰国後すぐ長崎大学に国際交流サークルを新設しました。2期生となった学生も2名がこのサークルに加わり、日本語パートナーズ経験のない学生も誘って活動を盛り立てています。
こうしたなか、2期帰国後の11月、ダナンでのAPEC開催にあわせて、長崎県からベトナムのクァンナム省へ、「長崎くんち」の御朱印船が寄贈されることとなりました。
日本語パートナーズベトナム短期1期・2期OBOGでサークルの始動に関わった4名、そしてパートナーズ経験のない学生も加わって、御朱印船を活用した日越交流事業(*)への協力依頼を受けて再び、日本とベトナムの交流活動を支えることになりました。
(*)アジア・市民交流助成プログラム 採択事業
後日談:短期2期 堀川さんからひとこと
小川さんと私は、大学に国際交流サークルを作った先輩に協力したことで、今回、長崎の本石灰町(アニオーさんの朱印船を「長崎くんち」で7年に1回披露している町)の皆さんと一緒に、ベトナムのクァンナム省で「おくんち」と朱印船を披露する交流活動に参加することとなりました。私達は船に乗って楽器を演奏する役目を担って、とても緊張しましたが、直前まで練習したおかげで、大成功してとても貴重な経験となりました。
日本語パートナーズの活動で紹介した「長崎くんち」を、ベトナムを再訪して披露でき、長崎の文化をより印象的に伝えることができて本当に良かったです。
これからも、長崎とベトナムの関係をつなげる活動に積極的に参加していきたいと思います。