台湾には様々な神様をお祀りしている廟と呼ばれる建物が各地にあり、地元の方々の篤い信仰を集め、多くの観光客が訪れている。しかし、これらの廟の屋根や壁を彩る華麗な装飾については意外と知られていないようである。今回はこれらに関わる「交趾焼(こうちやき)」と「剪黏(ジェンネン)」という伝統工芸を満喫できる場所、嘉義縣新港鄉板頭村にある「板陶窯 交趾剪黏工藝園區」に一人旅をした様子をご紹介しようと思う。
まず、「交趾焼」と「剪黏」について。「交趾焼」は19世紀の末に中国広東より台湾にもたらされたそうだ。生地に釉薬をかけた後、低温で焼成される。廟の壁面装飾に使われ、様々な歴史上の人物や故事にまつわる文物が立体的に表現されている。一方、「剪黏」は文字通り、陶片を切り貼り細工のように加工する技法で、廟の屋根の装飾に多用されている。私は台湾に来た当初から、これらの美しい装飾にすっかり魅せられてしまった。
台北から新幹線で嘉義へ。嘉義駅からはタクシーで15分ほど。『KANO 1931海の向こうの甲子園』の映画のような美しい田園地帯の真ん中に、この陶芸村はあった。
ここは、工場と観光を融合させたミニテーマパークのような場所で、敷地内には美術館もあり、「交趾焼」、「剪黏」の歴史や技法が分かり易く解説されている。作品の展示もあり、動物、理容師や、のどかな農村生活を精巧に描いた美しい作品が目をひいた。
他にも、DIYスペースや、お土産ショップ、レストランも併設されている。敷地内では、子供や鳥、車を牽くモザイク牛やパンダ等、様々な生き物が歓迎してくれる。いずれも芸術性が高い。遠くまで来た甲斐があった。
どちらも楽しそう!
この台湾が誇るべき陶磁器の一人前の職人になるには長い年月を要するそうで、職人の数も減少しているらしい。台湾の廟に欠かせないこのすばらしい芸術が末永く継承されることを願ってやまない。