世界一周の経験を何らかの形で返していきたいと考えた時に、日本語パートナーズのあり方はしっくりきました。
―世界一周と日本語教師の経験をお持ちの鶴谷さんにとって、海外へ飛びだす方法はいろいろあったと思いますが、その中から日本語パートナーズを選んだ理由を教えてください。
鶴谷:日本語パートナーズ第一期の募集があった頃、私は世界一周をしている最中で。日本語教師養成コースで知り合った友達が第一期生として旅立っていたので、その報告をFacebookで読んでいました。楽しそうだなとは思いつつ、当時は旅に夢中で応募までは考えなかったのですが、帰国後、今度は旅行ではなく海外で生活してみたいと考えたときに日本語パートナーズのことを思い出したんです。私は日本語教師として教えた経験はないし、大学や養成講座で学んだ程度ですが、日本語教育の経験値を求めていない日本語パートナーズであればできるかなと。
―情報の一つだった日本語パートナーズのことが、今度は現実的な選択肢として浮かび上がってきたんですね。
鶴谷:1年間の世界一周の経験を何らかの形で返していきたいと思った時に、ただの国際交流ではなくて、日本語や日本文化を教えたり広めたりする日本語パートナーズのあり方は、とてもしっくりきましたね。しかも、ちょうど募集していた国が、私が初めて一人旅で訪れた最初の国、マレーシアだったんです。
―鶴谷さんが次の目標を探し始めたタイミングでマレーシアの募集をしていたというのも、運命みたいなものですね。なぜ最初の一人旅でマレーシアを選んでいたのでしょう?
鶴谷:東南アジアを2か月くらいかけて巡ろうと思ってたんですけど、手に入った航空券がクアラルンプール行きしかなかったんです(笑)。マレーシアで印象的だったのは、こんなにもいろんな人種がいるんだということ。特にイスラムの文化に触れる機会はほとんど経験していなかったので、モスクに行ってみたりだとか、一つひとつの体験がとても新鮮でした。派遣前研修でマレーシアやイスラム文化のことを学んでいると、あの旅行ではちょっと失礼な振る舞いをしていたかもしれないと思い返し、青くなっています。
―無知ゆえの怖さ、ですね。
鶴谷:だから私は、日本語パートナーズとしての活動で、マレーシアという多民族国家やイスラム文化のことについて、できるだけ理解を深めて帰ってきたいと思います。私がイスラム文化のことを全然理解できていなかったように、日本でどれだけの人がちゃんと文化を理解をして、イスラムの人に接することができているか。なかなか難しい現状ですよね。
世界中の人たちが日本語や日本文化を体験できる場所を作って、「また日本に帰ってきたい」と思えるようにしたい。
―これからの時代、異文化や違う宗教を理解する必要性は増していくばかりなので、きっと鶴谷さんの経験が生きるはず。日本語パートナーズを終えた後のことは、何か考えていますか?
鶴谷:私にとって、これからも「旅」と「言葉」は外せないキーワードです。これはまだ構想段階ですが、旅人が気軽にふらっと立ち寄れて、日本語を学べるコミュニティーみたいな場所を日本に作ることができたらいいなと思っています。ゲストハウスがその役目を果たしている部分もありますけど、やっぱり宿泊が第一目的の場所なので、もっと日本語や日本文化体験が中心の場を作りたいんです。
―そんな場を求めている旅行者もたくさんいそうですね。
鶴谷:今の時代、観光情報だったらインターネットを使っていくらでも得ることができるんですよ。そうではなくて、もうちょっと深いところで現地の人と交流したいと思っている方がいるはずで。私自身も、世界一周などの旅を通して思い出に残っていることのほとんどが、現地の人との交流体験なんです。そこで友達ができることによって、またその国が好きになり、戻りたいとも思えますから。だから、いつか日本のどこかに日本語のアクティビティーなどを通して世界中の人たちが日本文化を体験できる場所を作って、「また日本に帰ってきたい」と思えるようにしたいです。それが世界一周や日本語パートナーズの先にある夢であり、目標ですかね。