日中の気温が30度を越える毎日で、あまり実感の湧かないミャンマーの年の瀬、12月27日にヤンゴン外国語大学で行われた「日本語劇コンテスト」を訪れた。
「日本語劇コンテスト」は、日ミャンマー外交樹立60周年記念事業を締めくくるイベントで、ヤンゴン日本人会とヤンゴン日本人商工会議所の協賛のもと、日本大使館とヤンゴン外国語大学との共催で行われた。
ミャンマー全土の日本語学校の中から書類選考を勝ち抜いたのは、ヤンゴン外国語大学の日本語専攻、マンダレー外国語大学の日本語専攻、サクラウィン日本語学校、スカイホーム日本語学校、ひかりアカデミーとピー日本語学校の計6校。 上位3校と最優秀男優、女優に豪華商品が贈呈される。特に最優秀賞受賞学校には日本へ派遣されるJenesys2.0プログラムへの参加資格が与えられる。
日本からは、ミャンマー語専攻の学生もヘルプに!
今回、東京外国語大学のビルマ語専攻の2年生8名が日本から派遣され、ヤンゴンにある各教室の手伝いを行った。その中から代表の的場彩織さん(左)と島﨑千秋さん(右)にインタビューをした。
それぞれにミャンマー語を専攻するきっかけを伺うと・・・
「最初からミャンマー語を専攻しようと思っていたわけではなく、とにかく外語大にしかない言語を学ぼうと思っていました。その中で出会ったミャンマー語が面白そうだったので選びました」(的場さん)
「もともと東南アジアに興味を持っていました。その時、ちょうどミャンマーが民主化するということでとても面白そうだと思いました」(島﨑さん)
お二人ともすでに3回目、4回目の訪問になるミャンマー。今回驚いたことについて尋ねてみた。
「前回は、バガンにいたので、ヤンゴンとの違いに驚いています。バガンではまだ高床式の家に住んでいる人が多いのに、ヤンゴンでは みんな近代的な家でスマホを持っています。あとは完全な仏教国だと思っていたのに、クリスマスイルミネーションが多くて驚きました。」(島﨑さん)
「今回の劇コンテストで優勝すると日本に行けるかもしれないのですが、みんなに日本でどこに行きたいか聞くと、北海道や京都のお寺 などとても具体的な地名が出てきたことに驚きました。それだけ日本への興味があることがよくわかりました」(的場さん)
日本語学校の生徒の印象を尋ねると「日本語学校の生徒さんはすごく真面目です。皆さん日本への興味が強く、印象深かったのは『着物』を着たがること。」 同じ年頃であるため、双方で刺激を受けながら交流している様子が目に浮かんだ。
注目校2校を直撃!
さて、出場校の中で今回注目したのは2校。1校目は、今年ミャンマー初の世界遺産に認定された「ピュー王国の世界遺産」があるピィの「ピー日本語学校」。もう1校は今年で2周年を迎える新進気鋭の「ひかりアカデミー」である。
・世界遺産の街にあるピー日本語学校
「基本的に動機は不純なんです。ミャンマー語が話せないから日本語学校を作って、ご飯食べるところがないからレストランを始めたんです」そう語るのは、ピー日本語学校の唯一の先生である植村さんだ。飄々と語る植村先生は現在70歳。ピーに移住して8年。2年前からはピーで唯一の日本食レストランも経営を始めている。ピー日本語学校は、なんと学費が無料である。しかし、先生が一人しかいないので希望者全員を受け入れることは出来ず、基本的に紹介を元に入学ができるシステムを取っている。初級から上級まで合わせて現在30名ほどの生徒がいるそうだ。
今回の劇の中心人物である2人にも話を聞いてみた。
王子役のミチュパインさん(左)と王女役のズートトッテさん(右)の2人の女性だ。2人とも日本語学習歴は1年ほど。配役はみんなで相談して決めて、先生と話し合いながらセリフを決めたそうだ。それぞれ日本語を学ぶようになったきっかけを聞いた。 「今、私のお兄さんが日本で働いていて、その兄に勧められました。言葉を覚えるのは難しいけど楽しいです」(ミチュパインさん)
「日本の会社や通訳として働きたいので、勉強しています」(ズートトッテさん)
最後に優勝の自信を聞いたところ、笑顔で頷いていた。
・新進気鋭の注目校ひかりアカデミー
続いて話を伺ったのは、ひかりアカデミー。熱血教師・久野先生に話を伺ってみた。
ミャンマー人の生徒さんたちの印象を尋ねると、「とても素直な子たちです。それにとても先生を尊敬してくれます。その一方ちょっと恥ずかしがり屋な面もあって、授業でロールプレイをする時はあまり手を上げないこともあります」 今回のライバル校としては、外語大をあげ「強敵だと思います!」最後に「やれることはやりました。楽しんでいるところが伝わればいいですね!」と一言。
いざ、日本語劇コンテストがスタート!
各校の準備が整ったところで、日本語劇コンテストが開始。
ミャンマーの文化を紹介する劇や、歴史を伝える劇、コメディー劇、日本の昔話をアレンジした劇まで、それぞれ趣向を凝らしたユニークな劇が披露された。
すべての劇が終了し、審査時間中には、日本から来た東京外国語大学のメンバーによるミャンマーの昔話『山姥』が上演された。
ちなみに審査では、構成力や演劇力、チームワーク、日本文化理解度など複数の項目から評価され、上位3校と最優秀男優賞、女優賞が選ばれる。
最優秀男優賞は注目ひかりアカデミーのサンミアウンさん
最優秀男優賞にはなんとインタビューをしたひかりアカデミーのサンミアウンさんが選ばれた。最優秀女優賞は、マンダレー日本語学校のサッス ウェイポーキッボさんが選ばれた。この2人には、賞状と豪華景品が手渡された。
劇の総合1位はヤンゴン外国語大学。演目は『ロボットと悩み』日本のメーカーが作った男女両性ロボットが様々な家庭に送られて、そこで起こるドタバタを描いたコメディー劇。
1位に選ばれたヤンゴン外国語大学の出演メンバーは、日本政府による青少年交流プログラムJENESYS2.0により、日本へ招へいされる。
今回の取り組みを通して、若い世代のミャンマー人が訪日し、今後さらなる文化交流が深まり、更に今回日本からサポートに駆け付けた東京外語大学ミャンマー語専攻の学生も日本とミャンマーの架け橋を担っていく中心人物になっていくだろう。共に文化交流をリードする若者として今後の活躍に期待したい!
TRIPPING!ミャンマーレポーター 山崎郁馬
企画名称 | 日ミャンマー外交関係樹立60周年記念事業 日本語劇コンテスト |
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日程 | 2014年12月27日(日) |
会場 | ヤンゴン外国語大学 |
主催 | 在ミャンマー日本国大使館、ヤンゴン外国語大学 |
協賛 | ヤンゴン日本人会、ヤンゴン日本人商工会議所 |
出場校 | サクラウィン日本語学校、スカイホーム日本語学校、ひかりアカデミー、ピー日本語学校、マンダレー外国語大学、ヤンゴン外国語大学 |
サイト | http://www.mm.emb-japan.go.jp/profile/japanese/what-news/2014/what-new27.html |
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この記事は、TRIPPING!と国際交流基金アジアセンターの協力により、作成されています。
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