「ありがとう」「こんにちは」を現地の言葉で言ってみよう!
旅先でのコミュニケーションのほとんどは英語になると思いますが、ほんの少しでも現地語を知っていると、お互いの距離が縮まるきっかけになるかもしれません。感謝の気持ちを伝える「ありがとう」、コミュニケーションのきっかけとなる「こんにちは」です。現地の言葉ではどのように言うのでしょうか。
フィリピン
徳永聡さん (派遣先:フィリピン ルソン島)
フィリピンの公用語の一つ、フィリピノ語では、「ありがとう」は「Salamat(サラマット)」、「こんにちは」は「Magandan hapon(マガンダンハーポン)」と言います。しかし、私の派遣先パンガシナンではフィリピノ語の他に、イロカノ語とパンガシナン語が話されていて全く違う言い方をします。
イロカノ語では「ありがとう」は「Agyamanak(アギャマナック)」、「こんにちは」は「Naimbag nga malem(ナイムバグナガマレン)」と言います。また、パンガシナン語では「ありがとう」はフィリピノ語と同じく「サラマット」、「こんにちは」は「Kabwasan ed sikayo(カブワサンアドシカヨ)」などと言います。公共交通機関を利用した際や、買い物をした際に、現地の言葉でありがとうと伝えると、無愛想に見えるドライバーや店員もニコッと笑顔を返してくれたりします。そこから会話が弾んで仲良くなることもしばしばあります。
インドネシア
筑广祥子さん (派遣先:インドネシア 南ジャカルタ)
インドネシア語で「ありがとう」は「Terima Kasih(トゥリマカスィ)」。「こんにちは」は時間帯によって使い分けがあり、10時から15時くらいまでは「Selamat Siang(スラマッスィアン)」、15時から18時くらいまでは「Selamat Sore(スラマッソレ)」です。それに加え、インドネシアではアラビア語の「アッサラームアライクム」を使うムスリム(イスラム教徒)の方が大勢います。
私がインドネシアへ来て驚いたのは、生徒たちが先生によってあいさつを使い分けることです。例えばインドネシア語の先生には「Selamat Siang(スラマッスィアン)」、宗教の先生には「アッサラームアライクム」、英語の先生には「グッドモーニング」、そして日本人である私には「こんにちは」。私も生徒たちにならい、先生によってあいさつを使い分けるようにしています。最近では、他の先生方も日本語であいさつしてくれるようになり、職員室はいつもいろんな国の言葉が飛び交っています!
……余談ですが、先生たちのお気に入りの日本語は「はい!」で、私と現地の日本語の先生との会話に「はい」が出てくると必ず誰かが元気にまねしてくれます。
タイ
小林亞古さん (派遣先:タイ ピサヌローク県)
タイ語で「こんにちは」は「サワディーカー(女性)/クラップ(男性)」、「ありがとう」は「コップンカー(女性)/クラップ(男性)」です。私が住んでいる中北部のピサヌロークにはそこまで強い方言はありませんが、北部では北タイ語、南部では南タイ語、東北ではイサーン語といった方言があります。
例えば、イサーン語で「こんにちは」は「サバイディー」、北タイ語では「サワディーヂャーオ」で、これはピサヌロークでも時々使われます。あいさつにちなんで言うと、毎朝学校の食堂のおばさんが「ワッディカーアジャーン」と言ってくれます。これは「おはようございます、先生」という意味。学生以外の人に「アジャーン(先生)」と呼ばれるとちょっと照れくさいですが、うれしいです。
村上眞理子さん (派遣先:タイ チェンライ県)
タイ語で「こんにちは」は、女性は「サワディーカー」、男性は「サワディ-カップ」。「ありがとう」は女性「コープンカー」と男性「コープンカップ」というのは皆さんよくご存じだと思います。
<笑い話その1> ここチェンライでは「サワディヂャーオ」、「コープンヂャーオ」というのをよく耳にします。特に市場に行くとこの言葉が盛んに叫ばれています。タイ北部の方言だそうです。
ある日の学校の朝礼で、お坊さんが説教の最後に「コープンヂャーオ」と言われたのが聞き取れました。私はタイ人の先生に「お坊さんも方言を使うんですね」と尋ねたら、爆笑されてしまいました。「マリコ先生、お坊さんのタイ語がよく聞き取れましたね。確かにお坊さんは『ヂャーオ』と同じ発音しましたけど、これは方言の『ヂャーオ』ではなく、お坊さんの特別の言葉です。それに方言の『ヂャーオ』は女性しか使いませんよ」そういえば、市場で「ヂャーオ、ヂャーオ」と叫んでいるのはおばさんばかりでした!
<笑い話その2> 小さなレストランで遅い昼食をとった時のことです。食事が終わってお金を払い店を出ようとすると、店の主人が丁寧に頭を下げて、「おはようございまーす」と大きな声で叫びました。「ええ!」びっくりして振り返ってしばらく沈黙。主人が照れくさそうに、「ありがとうございまーす」と言い直しました。日本人の私に何か日本語を言いたいというその気持ちがとてもうれしかったです。
日野友香さん (派遣先:タイ プレー県)
タイではこんにちはだけでは収まらず「おはよう、こんばんは、さようなら、おつかれ~」あいさつまるっと「サワディーカー」なのです。
私の赴任地は北タイなので、方言が入り「サワディーヂャーオ!」元気に言うと近所のおじいちゃんたちが大喜びします。
ありがとうは「コップンカー」ですが これも北タイの方言では「コップンヂャーオ!」です。 たぶん日本で欧米人がズーズー弁を話しているようなものなんでしょうね!
今回はフィリピン、インドネシア、タイで活動している日本語パートナーズのあいさつにまつわるエピソードの紹介でした。日本では、標準語の浸透につれて「こんにちは」や「ありがとう」の方言を意識することが少なくなってきましたが、アジアではまだまだ土地や民族特有の生きた言葉が根付いていることを実感させてくれます。 タイ語は女性と男性で使う言葉の語尾が変わるので、そこは気を付けたいですね! 間違えて使ってしまうと、いらぬ誤解を生んでしまうかもしれません(笑)。