現地の言葉にまつわる話
東南アジアで活躍している日本語パートナーズですが、現地語を使ってコミュニケーションをとる中で、思いがけないことを経験することも……。今回は、赴任したばかりの日本語パートナーズに聞いてみました。
マレーシア
藤枝 泰子さん (派遣先:マレーシア ジョホール州)
マレーシア語はカタカナ読みしてもある程度問題なく通じます。私にとって、発音で一番難しいのは語末の「n」です。これを無意識に「ng」(いわゆる鼻音)にしてしまいます。例えば、「makan(食べる)」が「makang」となってしまうのです。この言い方は、マレーシア北部クランタンの方言で、初めの頃は「クランタンから来たの?」とよく尋ねられました。でも、意味は通じるから大丈夫だと言ってもらえたので特に気にしていませんでした。
ところが、先生方に自己紹介をしていた時のことです。ある先生のお名前を繰り返し発音してみたところ、私がアシスタントをしている日本語の先生が吹き出してしまいました。その先生のお名前は「Suffyan」、通称「Yan」先生。私の発音だと「Yang」先生となり、これは「sayang」の省略形で「愛する人への呼びかけ」つまり、「ダーリン」という意味になります。初対面の妻子持ちの先生に対して、「ダーリン」先生と言ってしまいました。今思い出しても赤面してしまいますが、その後は「スフィアン」先生と呼んでいます。
大爆笑してくれた先生のおかげで、他の先生方との距離も縮められたので、マレーシア語の理解と交友関係とを深められて一石二鳥でした。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」だけではなく、「言うは一時の恥!?」も頭の片隅に置いて、マレーシア生活を楽しんでいます。
インドネシア
片野 聡子さん (派遣先:インドネシア 西ジャワ)
写真は職員室です。500以上の言語があると言われるインドネシア、学校の職員室もその縮図です。インドネシア語をメインに、スンダ語、ジャワ語、バリ語、英語、そして日本語……隣の席のヤニ先生は4月に日本を旅行するので、「豚はダメ」「これが好き」など私から日本語を聞き出して勉強しています。
学校にはインドネシア語の先生もいます。ノニ先生は空いている時間にインドネシア語を教えてくれます。口の動きを見せて発音が違うこと、会話の表現など、とてもわかりやすいのです。おかげで私は職員室の会話が少し聞き取れるようになってきました。
インドネシアへ来て感じるのは、「相手の言語で話すことが大切」ということです。誰でも私に知りうる限りの日本語で話しかけてくれます。私が下手なインドネシア語で話すと、非常に喜んでくれます。そして、「上手ですね!」と褒めてくれます。インドネシア人はみな褒め上手です。多言語社会で育まれた優しさかもしれません。一つでも多く言葉を覚えると、インドネシアでの生活がより楽しくなること請け合いです。
インドネシア語を教えているノニ先生
林 あづささん (派遣先:インドネシア 北ジャカルタ)
<現地語にまつわるエピソード> 初めての授業。自己紹介が終わり生徒からの質問の時。 「つ」の発音はインドネシア人にとって難しいらしい。インドネシア人の発音する「つ」は、日本人には聞き取りにくい。 ある生徒が「『すなみ』はどうですか? 」と聞いてきたのを現地語の「『suami(夫)』はどうですか?」と聞き間違えて、延々と夫のことを喋(しゃべ)っていた。 場の空気が、何かしら変な感じに……。 そこで日本語の先生が出てきて「『スアミ』じゃない『ツナミ、ツナミ』」と連呼してやっと聞き間違えに気づいた。質問した生徒には、深くお辞儀をして「ごめんね」と日本語とインドネシア語で謝った。
その後は、「ツナミ」の説明をし、津波の際にはインドネシア政府からも、たくさんの支援をいただいたことのお礼も述べた。
<これから来る日本語パートナーズはこれを勉強しておくとよい:その1> ……こちらに来てから失敗は山ほどある。 一番困ったのは、アパートの前で、私がアシスタントをしている日本語の先生を待っていた時のこと。 なかなか時間通りには来てくれない。 すると、アパートの警備員が声を掛けてきた。さっぱりわからず「Iam waiting for my teacher」と答えた。すると「わかった」というような表情をした。 しばらくするとタクシーが来た。私が「No, No , No ! 」と言ったらタクシーの運転手まで出てきて、何やら警備員と話していた。「ごめんなさい」を表情と拙いインドネシア語で伝え、一件落着かと思ったその数分後、またしても別のタクシーがやって来た。 前のタクシーは好きじゃなかったと思ったのかな? 同じことを2回繰り返した。 結論、「私は、友達を待っている」とインドネシア語で言えたほうがいい。
<これから来る日本語パートナーズはこれを勉強しておくとよい:その2> お金の種類とその言い方、つまり「counting money」です。 私はもともと数字に超弱く、「0」がたくさんつくとすぐに数えることができない。 こちらでは、とにかく「0」がたくさんつく。 幸いなことに、間違って安いのに大金を出した時には、いつも親切な人(タクシーの運転手以外)が助けてくれ「ギリギリセーフ」だった。
一人でブロックM*に初めて行った時のこと。 ジュースを買っていくらか聞くと「du~」と店員が言う。「duaだから 2,000Rp」だと思って2,000Rpを出すと店員が変な顔をする。深く考えもせず「違うのか、0が足りなかったのか」と今度は20,000Rpを出してみる。ますます店員が変な顔をして電卓を持って来て数字を見せる。 「な~んだ、8,000Rpだったのか? 全然違うじゃないか」 「delapan ribu(8,000)」と「dua ribu(2,000)」 どちらも「du」の発音から始まるからややこしい!
日本の高校生の生活についても紹介しています!
独特なイントネーションや発音に、みなさんかなり苦戦されているようですね。うれしい経験、恥ずかしい経験、大変な経験……さまざまです。でも、何人かの方がおっしゃっているように、大切なのは何でもいいから現地の言葉を使ってみること。この気概はきっとどこの国に行っても同じなのだと思います。せっかく縁があって訪れた国。「郷に入れば郷に従え」の精神で、深いところまで触れてみたいですよね。