自分から近寄っていくことを心がけるうちに生徒との距離が縮まってきた
――日本語教師3人の中で、小成さんが授業でチームを組むことが最も多いのはワン先生です。中学3年生の時に日本映画を見て日本に興味を持ち、高校で日本語を履修したワン先生は、通訳者を目指して大学で日本語を専攻したといいます。
「最初は通訳者になるつもりでしたが、大学4年の時に日本語の教授法を学んで高校に教育実習に行ったのを機に日本語教育に目覚め、教師の道に進むことにしたんです。この学校に来て今年で3年目になります」
――ポーティサーンピッタヤーゴン学校には、これまで1、2、4期の日本語パートナーズが派遣されています。ワン先生は2期と4期の日本語パートナーズとチームティーチングの経験があるとのことですが、小成さんのことはどう見ているのでしょう。
「この学校は進学校なので、生徒の日本語レベルをもっと上げたいと考えています。小成さんは字の読み書き、発音とアクセントに厳しいですが、それでいいんじゃないでしょうか。そのほうが生徒もしっかり覚えるし、実際、全体的にレベルが上がってきたと思います。日本語パートナーズがいてくれると、私も日本語を学ぶことができて助かります」
―― 一方、生徒たちからはこんな声が聞かれました。
「日本語は文法も漢字も難しい。でも、授業は面白いです」
「小成先生は教え方が上手だと思います」
「日本人の先生がいると、深い内容を学ぶことができます」
――実は小成さん、自分の教え方はタイの生徒には馴染まないのではないかと気にしていたそうなのです。
「私の指導の仕方は厳しすぎて、生徒に敬遠されているかもしれないなと思っていました。でも、授業では生徒一人ひとりに挨拶し、質問を投げかけたり机間巡視をしたりして自分から近寄っていくことを心がけているうちに、生徒との距離が縮まってきた気がします。最近、廊下ですれ違う時に声をかけてくれた生徒がいて、ちょっと嬉しかったです」
――生徒たちからは「小成先生に教わって初めて七夕のことを知った」「しりとりゲームが楽しかった」「抹茶を体験させてもらった」といった声も。日本文化の紹介も生徒に好評のようです。
「3年生は毎時間、2年生と1年生は週に一度、授業中に文化紹介の時間をもらっています。たとえば、月の初めはクイズなどで日本の文化や行事を伝えるんですが、どうしても表面的な紹介で終わってしまうことが多くて。体験を伴う文化紹介のほうが生徒の反応はいいですね。
調理実習室で体験してもらったどら焼き作りなどは好評で、ある生徒は『セブンイレブンのどら焼きは食べたことがあるけど、自分で作ったのは初めて』と言っていました。この時に、茶道の紹介を兼ねて抹茶を点てたんです。何人かの生徒は、顔をしかめながら『こんなに苦いとは思わなかった』って(笑)。
前任者から折紙をよく使ったと聞いていたので日本から用意してきましたが、どちらかというと関心が薄いみたいで。生徒たちは日本の食べ物にとても興味を持っているようです」
――タイでは日系のコンビニがすっかり浸透しています。もしかすると、高校生の日本の食べ物に対する興味と無関係ではないかもしれません。
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